冤罪法廷 [book] [ジョン・グリシャム]
テスタメント [book] [ジョン・グリシャム]
全米290万部を突破したスーパー・メガ・ヒット
ストーリーはいたって簡単。アメリカ屈伸の大富豪の遺産にむらがる親族・顧問弁護士たちと、真の遺産相続人に指名された謎の女性、それを探し出す役のアル中弁護士。
大老富豪の資産は総額百十億ドル。前妻とその子どもたちは贅沢好きの破産寸前の状況。財産が遺産として自分たちに転がり込んでくる機会を虎視眈々とうかがっている。
ついにある日、相続人たちを呼び集め、驚愕のプレゼント―みずからのドラマティックな死と遺言状―を彼らに送る。
その遺言状とは、わが子どもたちのそれぞれが負っている本日づけで負っている負債を完済するのに必要な額の金は遺贈する。本日以降に発生した負債については、わたしの遺産で返済されるものではない。わが妻たちに譲渡するものはない。この三人には離婚にあたって適切な補償がすでにされている。上記以外のわが財産にすべては、わが娘であるレイチェル・レインにすべて遺贈する。
レイチェルは世界先住民宣教教会の一員として、パンタナール大湿原と呼ばれる地域のブラジルとボリビアの国境地域におり、奥地に住むインディオの部族への宣教活動を進めている。わたしにはレイチェルを見つけることができなかった。この二十年間、レイチェルと連絡をとったことはいちどもないと書き添えられている。
ここからアル中弁護士・ネイトによる壮大な冒険小説が始める。
本書のアイデアはまず冒険小説ありきではないのか?
前半はいつものジェットコースター・ノベルになっているが、冒険小説部分がゆっくり流れすぎジェットコースターの勢いを止めてしまったように思う。
「ジョン・グリシャム初の冒険小説!」というように解釈すれば、これもまた良しかな・・・
裏稼業 [book] [ジョン・グリシャム]
米国一の人気作家による話題作。ニューヨークタイムス・ベストセラー連続九週第一位。
わたしの大好きな作家ですが、今回は少々御気に召しません!なぜかと言えば、翻訳者、出版社が変わったことです。いままでの装丁、翻訳に慣れていたものにとってはいただけません。シドニー・シェルダンじゃあるまいし・・・
刑務所生活を余儀なくされた元判事の三人組。そのキャリアを生かしておいしい裏稼業に精を出す。その裏稼業の元ねたは、「二十代の独身男性。四十代か五十代の、秘密を守れるアメリカ紳士をペンパルに求めます」。
一方、CIA長官は自身の野望を達成するため、ある条件を満たす下院議員を探し当て、ウラワザを使って大統領選挙へ殴りこみをかける。あれをあれをと言う間に、ウラワザが効をそうして本当に大統領になってしまう!
裏稼業対CIA、吹けば飛ぶような三人組+α対国家権力。「われわれの大統領がナニだなんて、世界中にしれたら、米国の権威はどうなる!」
コメディータッチのジェットコースター・ノベル。次作は新潮社から刊行してほしいものだ。
「グレート・ギャツビー」を追え {book] [ジョン・グリシャム]
初のスパイ小説!?
プリンストン大学図書館からF・スコット・フィッツジェラルドの直筆原稿が盗まれた。5編の長編小説、「グレート・ギャツビー」を含む、の保険金総額は2500万ドル・・・
強盗団は5人組、2人はすぐに逮捕されたが、直筆原稿の行方はわからない。
そうこうするうち、フロリダで独立系書店を営む名物店主、ブルース・ケーブンが捜査線上に浮かぶ。真相を探るべく送り込まれたのはただいまスランプ中の新進作家のマーサー・マン。
ブルースに近づくための諸条件を完璧に備えた素人スパイ!?が暗躍?するジョン・グリシャムらしさの全くないスパイ小説?エンタメ小説?
危険な弁護士 {book] [ジョン・グリシャム]
汚染訴訟 [book] [ジョン・グリシャム]
ジョン・グリシャム/新潮社/お薦め度 ★★★★
グリシャム流「わたし探しの旅」!?
リーマン・ショックの余波は世界最大の法律事務所をも襲う。エリート女性弁護士サマンサもその例外ではなく事務所から一年間の一時的解雇を言い渡される。無給の臨時インターンをやれば保険は今まで通りだと・・・
サマンサの選んだインターン先はアパラチア山脈の片田舎にある「山地法律扶助協会」、低所得者層に向け無料の法律サービスを行っている。ニューヨークで不動産部門の書類仕事しかしてこなかったサマンサは戸惑いを隠せない。
その地でサマンサが出会ったのは、石炭会社の不正を暴くことに燃える弁護士ドノヴァン。いくつもの大きな訴訟を手掛け、石炭会社からつけ狙われている人物。
ドノヴァンの危険な仕事ぶり、ドンヴァンの叔母、同協会の会長のマッティらの仕事ぶりに少しづつ影響を受け始めるサマンサ。その矢先、ドンヴァンが飛行機事故で亡くなる。石炭会社の陰謀か!?
ドノヴァンの危険な仕事を手伝っていた弟のジェフからドンヴァンの仕事を引継いで欲しいと依頼されるサマンサ、そこには簡単に「イエス」と言えない葛藤が・・・
サマンサの自分探しの結論に爽快感を覚えるが、石炭会社もガツンと言わせてほしかった。グリシャムの初期の作品を髣髴させる一気読みの一冊。
司法取引 [book] [ジョン・グリシャム]
ジョン・グリシャム/新潮社/お薦め度 ★★★★
コンゲーム(confidence game)
マネーロンダリングと知らず犯罪に巻き込まれた田舎弁護士バニスター、司法取引なら2年の刑で収まるところ、それを断ったおかげで10年食らうことに・・・
連邦判事と愛人秘書が殺された事件、全く進展を見ないなか、バニスターが犯人を知っていると声を上げた。その見返りは保釈と証人保護プログラム、それと懸賞金。
FBIにとってなんら不利益はなく、取引はあっけなく成立する。犯人の麻薬密売人をFBIは逮捕、当初は犯行を否認、やがて自供を始める。
証人保護プログラム下で整形手術を施し、新しい名前を手に入れたバニスターだったが、麻薬密売人一家はバニスターのいどころを知っていた。
突然姿を消すバニスター・・・ここから「オーシャンズ」的なコンゲームが始まる。
十八番のリーガルサスペンスじゃなくエンターテインメントの一冊。結構愉しめますよ!
巨大訴訟 [book] [ジョン・グリシャム]
ジョン・グリシャム/新潮社/お薦め度 ★★★★☆
奇跡の復活!?
1999年刊(邦訳は2001年)「テスタメント」で筆を置くべきだったと言い続けてきました。裏切られても裏切られても、ついつい手にしてしまうジョン・グリシャム、今回も裏切り覚悟で・・・
超巨大法律事務所にほとほと愛想が尽き、衝動的に事務所から逃亡、バーへ駆け込み昼間から酒を浴びるデイヴィッド。バスの車体で見つけた<フィンリー&フィッグ事務所>に駆け込み、自分を雇ってほしい、と・・・いつもの書き出しと違った軟弱なスタート!?
その事務所は弁護士2人の「ブティック事務所」、名前はカッコいいが?交通事故の代理人をもっぱら務めているしょぼいところ。
ジュニア・パートナー、ウォリーは一獲千金を狙い、大規模不正行為訴訟専門の大物弁護士と組んで、巨大薬害訴訟に足を突っ込もうとしていた。
マネーゲームに踊る原告弁護人、被害者・・・そうこうするうちに風向きが変わる、大物弁護士が訴訟を取り下げ、シニア・パートナーのオスカー、ウォリー、デイヴィッドの3人で戦うはめになってしまう。初めての連邦裁判所での審理、どうするドリームチーム弁護団(3馬鹿トリオ)!?
リーガルサスペンスではないが、十数年ぶりにページをめくる手が止まらなかった。
自白 [book] [ジョン・グリシャム]
ジョン・グリシャム/新潮社/お薦め度 ★★★★
冤罪事件
脳腫瘍で余命いくばくもない男が牧師のもとを訪れる。自分は9年前に強姦殺人を犯し、身代わりとして若者が囚われている、と。牧師が調べてみると死刑執行まで4日しかないことがわかる。
冤罪を晴らさんがため奔走する弁護士、見知らぬ男を車に乗せ、弁護士のもとへ旅立つ牧師。
タイムリミット・サスペンスかと思いきや、物語は急展開。
冤罪と死刑の問題を真正面から捉えてはいるが、グリシャムの「ある思想」が勝ち過ぎて物語としては平凡なものになってしまった。「思想」をリーガル・サスペンスにたくすべきじゃなかった!?
アソシエイト [book] [ジョン・グリシャム]
ジョン・グリシャム/新潮社/お薦め度 ★★★★
リーガル・サスペンス!?
裏切られても、裏切られても手にする作家
久しぶりにノリのいい出足、往年のグリシャムを彷彿させるのですが、捻りのない結末はいけません。映画化では脚本家の腕の見せ所ですね。
新人弁護士・カイル、学生時代の一件落着の事件を持ち出され、大規模法律事務所に就職、軍需産業訴訟の情報を持ち出すことを強要される。
大規模法律事務所におけるカイルをはじめとする新人アソシエイトの激務、謎の男たちによる尾行、盗聴、公私ともにヘトヘトになりながら問題解決に奔走するカイル。
そんな折、封印したはずの事件で大学時代の友人が殺される。
この辺まではいいですね。
リーガル・サスペンス不毛時代に一石を投じてほしかった一冊!?