陽炎の市 [book] [ドン・ウィンズロウ]
業火の市 [book] [ドン・ウィンズロウ]
壊れた世界の者たちよ [book] [ドン・ウィンズロウ]
6作品収録の中編集
表題作「壊れた世界の者たちよ」は、「ダ・フォース」の流れをくむ作品。麻薬組織に弟をなぶり殺しにされた麻薬取締班の兄、復讐の鬼と化し、壊れた世界の者たちへと化し、犯人を追いつめて行く。最近のウィンズロウらしい作品。
対極にある作品が「犯罪心得一の一」、宝石泥棒と強盗課刑事の逃走と追跡、ローレンス・ブロックの泥棒バーニイ・シリーズほど軽妙ではないが、ウィンズロウにしては軽いノリ。
本書で白眉なのが「サンディエゴ動物園」、拳銃を持ったチンパンジーが動物園から脱走、補獲を命じられた制服警官、ものの見事に捕獲に失敗、世間に「モンキー野郎」として恥をさらす。それにもめげず、拳銃の出所を調べ始めるが・・・愉しい作品!?
ウィンズロウの多彩さがひかる中編集。
ザ・ボーダー [book] [ドン・ウィンズロウ]
ダ・フォース [book] [ドン・ウィンズロウ]
警察小説!?
ネズミとはマフィアとつるんでいながら、警察にも情報を流す汚いお巡りのこと。
NY市警38,000人の頂点に立つ刑事の王、マンハンタン・ノース特捜部、通称「ダ・フォース」、のデニー・マローン。その彼が些細なことから一線を超え、悪徳刑事になり下がり、50キロのヘロインと250万ドルの現金を着服、おまけに大物麻薬リーダーを射殺する。
マローンらが密かに働いていた不正がFBIと連邦検察局により暴かれる。その代償はネズミになること。家族を守るため苦渋の選択をするマローン。判事、検事、弁護士・・・次々に告るが警官は告らないと決めていたが・・・
収監されたマローンの生き残る手段を用意する政治屋たち、最後に刑事たらんとするマローンのとった行動とは・・・
スティーヴン・キングがうまいこと言っています「ゴッドファーザーのような警察小説」、と。ドン・ウィンズロウしか書けない見事な警察小説!
ザ・カルテル [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★☆
「犬の力」の続編
麻薬王アダン・バレーラが脱獄した。バレーラの首に鈴をつけたのは、DEA(麻薬取締局)の捜査官アート・ケラーだった。なぜひと思いに引き金をひかなかったのか!?
バレーラはケラーの首に法外な賞金をかける一方、抗争を続けるカルテルの統合に動き始める。自身が再度王座に返り咲くために・・・
この世でバレーラを一番知っているケラーは、今度こそ引き金をひくため「生餌」としてメキシコに乗り込む。
ここから血なまぐさい一般市民をも巻き込んだ抗争が始まる。血で血を洗う戦いはバレーラ、ケラーとかかわりを持つ人間も例外ではなかった。
抗争の収拾案はただひとつ、バレーラと拮抗するカルテルを壊滅させることだった。そのためにケラーはバレーラに魂を売る。
メキシコの麻薬戦争、その市場はアメリカ。麻薬戦争終結のためメキシコに武器弾薬等を提供するアメリカ、そこには何とも皮肉な構造、アメリカ市場を継続させるためにアメリカがメキシコに援助、が・・・
前作、「犬の力」、超えの犯罪小説だ!
報復 [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★
「執念」シリーズ、パート2
物語は至ってシンプル。元デルタフォース、現在は空港保安監督官のデイヴ、空港で妻子を見送った、その飛行機があわやの大惨事。最愛の妻子を失くしてしまう。
政府の見解は飛行機事故、デイヴの集めた情報は"テロ"、政府の隠蔽工作に直面にするデイヴのとった行動は、亡くなった人たちの親族が受け取った賠償金からお金を拠出してもらい、自らの手でテロリストに「報復」することだった・・・
そのための特別チームを編成、デイヴ自身も過酷なテストを受けチームに参加する。
後半部分は壮絶なアクションシーンの連続、チームからも犠牲者を出し、着実にテロリストを追いつめていくデイヴ。
同時刊行の「失踪」も少女を捜し出す元刑事の執念、本書もテロリストを追いつめる元デルタフォース隊員の執念。「執念」シリーズ、パート2でした。
失踪 [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★
執念の物語
ネブラスカ州リンカーン、わたし的には二度訪れたことのある地、母親が目を離した隙に5歳の少女が消えてしまった。誘拐であれば3時間以内に75%が殺されてしまう・・・
捜査にあたるのは元海兵隊員のフランク・デッカー刑事、少女が生きていることを信じ様々な手を打つがやみくもに時間は過ぎるばかり。3週間が経過、第2の事件が起きる。
ここからが凄い!刑事を辞め、妻との離婚も覚悟、失踪した少女探しの旅に出る。1年が経過、ささやかな情報の行き着く先はニューヨーク、デッカーも初めて訪れる地。
ニューヨークで出会う、写真家、人気のファッションモデル、ニューヨーク市警の刑事、娼館の女主人、女実業家・・・いろんな人物が絡みながら結末へと向かう。
ウィンズロウらしい場面展開の早さは健在。とんでもない話だが、果たして少女の行方は?
同時に「報復」も刊行、ちょっとズルイよKADOKAWAさん!
キング・オブ・クール [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/角川書店/お薦め度 ★★★★
シリーズ第二弾!?
「野蛮やつら」の主人公、ベン、チョン、O(オー)、の前日譚なのだが、ルーツ、血縁と言った方がいいかも・・・
物語は2005年、1976年のラグーナ・ビーチ、2005年、ベンとチョンは大麻の水耕栽培で大がかりな供給グループを築き上げる。
1976年、コカインの密売組織「連合」のリーダー・ドク。ジョン、ドクを慕う少年、その後連合の一員となり、ドクの右腕となる。キム、トレーラー住まいのウェトレス。こちらも三人が主人公。
1976年の3人と2005年の3人がいつしか交わるのだが、その交わり方が中途半端じゃない!
相変わらずクールな筆致が魅力的な一冊・・・
紳士の黙約 [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/角川書店/お薦め度 ★★★★☆
シリーズ第二弾
元サンディエゴ市警刑事、現サーファー探偵、ブーン・ダニエルズ、今回の依頼はふたつ。人気サーファーK2殺害犯ともくされる若者の身辺調査と”紳士の時間”仲間、ダン、の妻の浮気調査
若者の身辺調査は”ドーン・パトロール”のメンバーから総スカン、K2殺害犯の味方をするのかと・・・
ダンの妻の浮気調査は早々に決着、妻もその事実を認め、ふたりは仲直り。
そうは問屋が卸さない。ふたつの事件に潜む大きな犯罪が浮き彫りになる。
パシフィックビーチを舞台に、まったり流れる時間と空気がなんとも心地良い。事件解決に奔走、奔走じゃなく、肩ひじ張らずに、粛々と事件に取り組むブーンの姿にも好感がもてる。次作も期待したい。