スタンド・アローン [book] [ローラ・リップマン]
ローラ・リップマン/早川書房/お勧め度 ★★★★
同じく、未読の一冊
1999年アガサ賞最優秀長篇賞受賞作、テス・モナハン・シリーズ第三作
前作「チャーム・シティ」ではライセンス申請中でしたが、本作からめでたく私立探偵として活躍することに。
最初の依頼人は元受刑者、自身の裁判で証人となった子供たちを、償いのために探してほしい、と。調査中に証人が殺されるに至り、元受刑者は警察に身柄を拘束されることになる。
二件目の依頼は、里子に出した娘を探してほしいというもの。
いつしか二つの調査が結びついていくことになる。
シリーズものの楽しみは主人公をとりまく人間模様の変化。現在、第八作まで続いているシリーズ、今後も期待したいものです。
チャーム・シティ [book] [ローラ・リップマン]
ローラ・リップマン/早川書房/お薦め度 ★★★★
未読の一冊
1998年MWA賞最優秀ペーパーバック賞受賞作、テス・モナハン・シリーズ第二作
舞台はチャーム・シティと呼ばれるボルチモア。ボルチモア・オリオールズ(野球)、ボルチモア・レイブンズ(アメフト)などで知られるメリーランド州の都市。ボルチモア訛とは本書にあるように、「オリオールはエリオールに、火(フィイア)などはファーに、海岸まで(ダウン・トウ・ザ・オーシャン)はダウニーオーチンになるのだろう」
新聞社を首になり、弁護士事務所で働くことになったテス。只今私立探偵のライセンス申請中。
プロ・バスケットボールチームの誘致話にまつわるスキャンダラスが新聞にすっぱ抜かれる。その記事は掲載予定ではなく、何者かによってコンピューターを操作されたものだった。
テスは、二週間の期限付きで犯人を突き止めるため新聞社に雇われる。素人探偵の成果や如何に!?
1999年にアガサ賞最優秀長篇賞を受賞することになる本シリーズ、MWA賞よりアガサ賞にピッタリな作品。
心から愛するただひとりの人 [book] [ローラ・リップマン]
ローラ・リップマン/早川書房/お薦め度 ★★★★
はじめての短篇集
テス・モナハン・シリーズ、女探偵もの、ではなく、ノン・シリーズの「あの日、少女はたちは赤ん坊を殺した」、「永遠の三人」、「女たちの真実」で知られる、ローラ・リップマン初の短篇集
テス・モナハンの短篇も収録されていますが、娼婦、エロイーズを主人公にした話がいい。
また、トップの「クラック・コカイン・ダイエット」は「ベスト・アメリカン・ミステリ」早川書房でも読んでいただけます。トップバッターにふさわしい作品です。
遅まきながら、テス・モナハン・シリーズを手にしたいと思います。
永遠の三人 [book] [ローラ・リップマン]
ローラ・リップマン/早川書房/お薦め度 ★★★★
「女たちの真実」に続く本年度二作目の邦訳
舞台はグレンデール高校、仲良し三人組、キャット、ジョージー、ペリ、が鍵のかかったトイレで倒れていた。キャットは胸を撃たれ死亡、ジョージーは足を撃たれ負傷、ペリは意識不明の重体に。銃を撃ったのは重体のペリらしいのだが、状況説明の出来るジョージーはなにかを隠しているように見える。仲良し三人組に何が起きたのか?
このプロットからローラ・リップマンはどういう結末を導き出すのでしょか?ただひとり口が利けるジョージーは何を隠しているのでしょうか・・・
丁寧な筆の運びでしっかり読ませる一冊です。
女たちの真実 [book] [ローラ・リップマン]
大エース登場!
三十年前、サニー、ヘザー・ペサニーの姉妹がショッピングモールからこつ然と姿を消した。死体すら見つからず事件は迷宮入り。
ところが、あるとき、自動車の当て逃げで捕まった女が、自分はペザニー姉妹のひとりだと、告白する。
三十年もたったいま名乗り出た真意はなんなのか?大エース、リップマンはしっかり読ませてくれます。
三十年の時間を紐解くのに四部構成をとっていますが、なかなか真実に行き当たりません。しかし、最後はどんでん返しが用意され、さすがリップマンということになることまちがいありません。ファンにはたまらい一冊!
ベスト・アメリカン・ミステリ クラック・コカイン・ダイエット [book] [ローラ・リップマン]
極上の短編ミステリ集
ジェフリー・ディーヴァー(「リンカーン・ライム」シリーズ・・・)、C・J・ボックス(「凍える森」・・・)、ローラ・リップマン(「あの日、少女たちは赤ん坊を殺した」・・・)らの短編集を収録、編者は「推定無罪」のS・トゥロー、豪華メンバーによる一冊。
どうしてもジェフリー・ディーヴァーに目がいってしまいます。彼の短編に対する評価は「クリスマス・プレゼント」を読んでいただければわかります。今回の作品もしっかり「落ち」がついてすばらしい出来ばえ。ボックスもリップマンも同様です。
サブタイトルの「クラック・コカイン・ダイエット」はリップマンの作品。
ミステリ・ファンにはたまらない一冊です。
ロスト・ファミリー [book] [ローラ・リップマン]
ローラ・リップマン/早川書房/お薦め度★★★★
「あの日、少女たちは赤ん坊を殺した」の作家が放つシリーズもの
2005年、MWA賞、アガサ賞、アンソニー賞最優秀長篇賞ノミネート作品。テス・モナハン・シリーズ第八弾!
女私立探偵、テス・モナハン、今回の依頼人は裕福な毛皮商人で正統派ユダヤ教徒、マーク・ルービン。幼い三人の子供を連れ、行方不明になった妻、ナタリーの捜索。
なんともシンプルな仕事と思いきや、次々と明るみに出る衝撃の過去。ナタリーの父親は受刑者、刑務所で行われていたナタリーの秘密の行動・・・
子連れのナタリーは愛人、ズィークと車で逃げていることが判明する。何不自由ない暮らしをしていたはずなのに!?
もっとなにかあるはずと思いつつ読み進むということは、完全に作者の罠にはまってしまったことを意味する。思いがけない事実が判明するまで想像力をかきたててくれる一冊。
読了後、表紙を見直してもらえれば本シリーズのエッセンスがわかるはず。実に的を得た素敵なイラスト!
あの日、少女たちは赤ん坊を殺した [book] [ローラ・リップマン]
ローラ・リップマン/早川書房/お薦め度★★★★★
アンソニー賞、バリー賞ダブル受賞!
なんとも衝撃的な題名。原作は「EVERY SECRET THING」。邦題に軍配あり!
十一歳の少女、ロニーとアリス、友達の誕生パーティから帰された途中、高級住宅街のなかで、銀色の持ち手が日光を反射して光っている乳母車を見つけた。「あたしたちでこの子の面倒をみてあげなきゃ」。ふたりはいい子になろうとした。
七年後、刑期を終えたふたりは社会復帰する。ふたりの周りで起こる幼児誘拐?あの事件と関係があるのだろうか。警察、新聞記者へのタレコミ。ふたりに対するアリバイ確認・・・幼児誘拐事件?と七年前の秘密が暴かれることになる。
ここのところ、少年犯罪、少年法を題材にした作品をしばしば目にする。本書も少年犯罪を扱ったものだが、ふたりの少女を取り巻く大人たちの「EVERY SECRET THING」が重要なファクターになっている。
本年度ベスト・ミステリーの本命!?