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開かせていただき光栄です [book] [皆川博子]

sample1.jpg皆川博子/早川書房/お薦め度 ★★★★

本格ミステリ大賞受賞作

題名の意味するところは、解剖学が偏見をもって見られた時代、18世紀のロンドン、を舞台にしていることから由来する。

私的解剖教室を開いているダニエル先生と5人の弟子たち、とりわけ一番弟子・エドワード、二番弟子、天才細密画の書き手・ナイジェルを中心に物語は進行する。

准男爵令嬢の解剖中に、あるはずのない死体、四肢を切断された少年、顔を潰された男、が解剖学教室に出現!

弟子たちと知り合ったばかりの詩人志望の少年の才能と古詩をめぐる運命を中心に、先生思いの弟子たちの陰謀? それを冷静に分析する盲目の治安判事、当時の訴訟制度を逆手に取った手の込んだお膳立て。くるくるまわるそんな一冊


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コメント 1

オーウェン

予想外と想定内というものがあるのだが、ある程度が想定内というか、ストーリーそのままに収まってしまうというところがややもったいない気がします。

ミステリとしての焦点は、死体の正体と、どういった理由により殺害されたのかということ。
そして、その内容を補完するかのようにネイサン・カレン少年の話が平行して物語が語られていく。

徐々に明らかになる、外科医ダニエルをとりまく様々な状況。
兄との確執や経済的基盤について。
そして、ダニエルを取り巻く弟子たちの思惑。

こうした事象が絡み合い、ひとつの道筋が徐々に明らかになっていくこととなるのだが、その道筋がほとんど物語の流れ上語られるとおりであり、最後に大きく見方が変わるというようなものではない。

思いのほか、物語上そのままという感じがして、サプライズ性はやや薄目。

それでも、最後の最後でひとつのどんでん返しが待ち受けているのだが、意外性というよりは、きっちりと伏線が張られていたということに驚かされる。

物語全体としては、それなりにうまくできていると思えるのだが、読んでいる方は、もっと大きなどんでん返しがあるのではないかと勝手に期待し過ぎてしまうような内容。

基本的には、詩的であり叙情にあふれた著者らしい端正なミステリ作品として仕上げられている作品と言えると思う。
by オーウェン (2023-11-13 22:14) 

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