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テラ・アルタの憎悪 [book] ['24 海外編]

sample5.jpgハビエル・セルカス/早川書房/お薦め度 ★★★★☆

CWA賞最優秀翻訳小説賞受賞作

主人公メルチョールは、十代の頃、麻薬カルテルの手先として逮捕、投獄されてしまう。獄中で「レ・ミゼラブル」との出会いと母が殺されたことが相まって、警察官を目指す。何と言う設定・・・

弁護士、娼婦だった母親の客?父親?、ビバレスの協力を得、無事警察官となった。彼を一躍ヒーローにしたのは四人のテロリストを射殺した事件。警察上層部はテロリストの復讐を恐れ、メルチョールを田舎町、テラ・アルタへ異動させた。

事件はそんな田舎町で起こる。町一番の富豪であるアデル美術印刷の社長夫妻が拷問の末、惨殺された。日本でいう帳場がテル・アルタ署にたち、メルチョールも捜査本部に召集される。

ここからメルチョールが「レ・ミゼラブル」と、母親の死から学んだ彼自身の哲学、正義を貫く不屈の闘志、道義を求め悪を忌み嫌う、が捜査に色濃く反映される。そんなメルチョールに署長が、「正義は善だ。しかし、極端な善は悪に転じてしまう。もうひとつ。正義とは、単なる内容の問題ではない。なによりも、形式の問題なのだ。正義の形式を尊重しないことは、正義を尊重しないと同じなのだ・・・絶対的な正義は、絶対的な非正義にもなり得る」ことをおぼえておけ、と。

最後の最後にメルチョールに付きつけられる正義とは何か、悪とは何か・・・哲学的なスペイン・ミステリーだ。


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