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ミネット・ウォルターズ ブログトップ

カメレオンの影 [book] [ミネット・ウォルターズ]

sample1.jpgミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆

CWA、MWA賞作家最新刊

イラクに駐留する英国軍のアクランド中尉、輸送車両の護衛中、装甲車シミターが敵の攻撃を受け部下二名を失い、アクランド中尉も重症を負ってしまう。頭蓋内に深刻な損傷が見られることからアクランド中尉は母国の病院に移送される。

手術を繰り返すアクランド、側に寄り添う母親を煙たがり、女性看護師を嫌悪、訪ねてきた元婚約者に暴力的な態度をとり、他人に触れられると荒れ狂う。おまけに顔面の形成手術を断り、失った目にアイパッチをつけて無理やり退院してしまう。

ロンドンでひとり暮らしを始めるアクランド、行きつけのパブで暴力沙汰を引き起こしたことから市内で連続する殺人事件、ひとり暮らしの退役軍人が殴殺される、の容疑者にされてしまう。

そんなアクランドに手を差し伸べる大女のレズビアン医師、ジャクソン、好感を覚えるところは医師としての力量と、他人から引きだしてしまう否定的な反応に憤然とかみつくこと・・・

警察の捜査とふたりが探り当てたことがシンクロするとき、それぞれの姿、被害者、犯人、ががらりと変わる真実!?

アクランドとジャクソンの巧みな心理描写はさすがミネット・ウォルターズ。

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悪魔の羽根 [book] [ミネット・ウォルターズ]

sample1.jpgミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆

最新刊

ロイター通信の記者、コニー・バーンズ、イラクのバグダッドで問題の男、マッケンジーと名乗る、と三度目の遭遇を果たす。最初はシエラレオネ、二度目はコンゴのキンシャサ。コニーは男、それぞれ違う名前を名乗っていた、を連続強姦殺人の容疑者と疑っていたが、証拠はなかった。

空港へ向かう途中、コニーは何者かに拉致監禁されてしまうが、奇跡的にも4日後に無傷で解放される。警察の聴取にあいまい?に答えるコニー、何を隠しているのか?

コニーはひとり事件から逃れるように片田舎の古びた一軒家を借り、隠遁生活を始める。そこに犬をつれた農場経営者、ジェスがあらわれる。

犬に怯えるコニー、かみ合わない会話、仲介役の医師の登場で少しづつ心を開くコニー・・・そこに割った入るジェスと折り合いの悪い家主の娘。

マッケンジーの陰におびえ続けるコニー、両親をも巻き込んだ壮絶な戦いが始まる。曖昧な発端の事件、謎めいた結末、ミネットの筆がひかる。もう一方のジェスと家主の娘の問題はスッキリ・・・

さすがミネット・ウォルターズという一冊!


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囁く谺(こだま) [book] [ミネット・ウォルターズ]

sample71.JPGミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆

粛々とした筆の運び

ウォルターズの作品は1992年の「氷の家」以来、ほぼ一年に一冊のペースで刊行されている。本書は1997年刊行の長編第五作にあたる。

高級住宅街にある民家のガレージで、ホームレスの男が死んでいるのが発見される。死因は餓死。

その出来事は、マスコミの関心を少なからずかきたてた。

警察に指紋がビリー・ブレイクの名で記録されていたのも、窃盗で何度か捕まったことがあったからだ。当時の警察は年齢を65歳と記録しているが、病理学者の鑑定では45歳。

この風変わりな事件にミセス・パウエルは、ビリーが死んだのが彼女の家のガレージだったという点で関わっているだけだった。ビリーのことは、マスコミの騒ぎがおさまり自宅に戻ってからずっと心にひっかかっていたので火葬の費用負担を申し出た。

物語は唐突に「二十一世紀の未解決事件」なる書物から二つの失踪事件をとりあげ、読者の戸惑いを誘う。

それから六ヵ月後、ミセス・パウエルのところに、雑誌ストリートの記者だという男から電話がかかってきた。ビリー・ブレイクのことでインタヴューさせてもらえないかと。男はマイケル・ディーコンと名を名乗った。

なぜ彼女はこれほどビリーの餓死に興味を示すのか?マイケルはホームレスの素性を調べ始まる。

落ち着いた語り口。しっかりした構成力。”ミステリーの新女王”は健在なり!


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養鶏場の殺人/火口箱 [book] [ミネット・ウォルターズ]

sample1.jpgミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★

二編の中編

巻頭にあるように「養鶏場の殺人」は、本をあまり読みつけない大人に、読書になじみ、読む力を高めてもらう。「火口箱」は、読書好きな人々に、普段は読まない分野を試しに読んでもらう。そんな依頼の二編。

ミネット・ウォルターズらしさが如何なく発揮されているのは「火口箱」。1999年刊行とちょっと古いが実にいい!

小さな村で老女と住みこみの看護婦が殺され、アイルランド人の男が逮捕された。同じ村に住むアイルランド人、シヴォーンは男の両親らがイングランド人の村人から嫌がらせにあい危険な状態だと警察に訴える。

そんな状況下、アイルランドvsイングランド、一家が火災に見舞われる。

火災後、火災前の村人の状況が交互に明らかになっていく。身内びいきに起因する結末は結構意外!?ウォルターズ節全開の一編!


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遮断地区 [book] [ミネット・ウォルターズ]

sample1.jpgミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆

ジェフリー・ディーヴァー!?

ジェットコースター・クライシス・ノベル。本当にミネット・ウォルターズ?と疑いたくなる一冊。

治安の悪い低所得者団地、そこに越してきた小児性愛者親子、ふたりを排除しようとする抗議デモ、それに便乗し、火焔瓶を用意する悪ガキたち・・・バリケードを張り、警察が入れないようにした大暴動が勃発する。

そのきっかけは10歳の少女の失踪事件。悪意に満ちたおしゃべりが噂を呼び、小児性愛者排除に向かわせた。

暴動と失踪事件の行き着く先は?

三人の主人公、デモの首謀者である妊婦、ムショ帰りの夫、女医、が暴動のさなか孤軍奮闘するさまは見事。ウォルターズの作品のなかでこんな読了感のすがすがしいものは初めてでは・・・


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破壊者 [book] [ミネット・ウォルターズ]

sample1.jpgミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★

遅すぎる邦訳!?

既刊、「囁く谺」と「蛇の形」に挟まれた1998年の作品

海岸に打ち上げられた女、裸でレイプされた、の溺死体、第一発見者の少年兄弟、通報者の俳優。溺死体現場から20キロ離れた場所で保護された3歳の幼女、ふたりは親子だった。

なぜ母親が殺されたのに、幼女は別の場所に放置されたのか?

捜査が進むにつれ明らかになる女をめぐる人間関係、夫、夫の上司、俳優、俳優の友人・・・それぞれの嘘を丹念につぶしながら捜査の幅を狭めていく警察。

とんでもない人間関係が浮き彫りになる結末までの描写をじっくり愉しんでください。久々の新刊ですから・・・


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病める狐 [book] [ミネット・ウォルターズ]

ミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 

CWA賞最優秀長篇賞受賞作

二度目のCWA賞受賞

旧家の主人・ジェームスの妻の不審死と遺産相続問題。それとは何ら関係ないと思われる、寒村の雑木林を占領する移動生活者たち。物語はこれらふたつのことがらを軸に進む。

寒村の住人、遺産相続の関係者、移動生活者たちとそのリーダー・・・それぞれが抱える現実と悩みを丹念に描き出すウォルターズ。老婦人の死がきっかけで始まった事件は、寒村に居合わせて人々を巻き込みどこへ行こうとしているのか?

登場人物像をしっかり描くために結構のページ数を割いているため、スピード感という点ではイマイチだが、巻末への流れは最高!ファン必読の一冊!


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蛇の形 [book] [ミネット・ウォルターズ]

ミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★★

サラ・ウォーターズの「荊の城」か、ミネット・ウォルターズの「蛇の形」。現時点では両ウォルターズのいずれかが本年度No.1!?

ミセス・ラニラは二十年前の事件-隣人の黒人女性が雨の夜、路上に倒れ死にかけている現場に出くわす。警察は交通事故死として処理をする-を解決すべく再び故郷に戻ってくる。

ラニラが事件当時どうしても解決することのできなった過去、それにより夫婦仲が悪くなった過去、海外に脱出するはめになった過去・・・

用意周到にあらゆる情報を集め、帰国後、数少なくなった当時の住人に直接話を聞き、なんとか事件を解決しようとする現在・・・

過去と現在を巧みに、重厚に、丹念に、描いた傑作。


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