ネプチューンの影 [book] [フレッド・ヴァルガス]
警察署長アダムスベルグ・シリーズ第三弾
若い女性の刺殺死体、腹部には一直線に並んだ三つの穴、あたかも海神ネプチューンの三叉槍を突き刺したような・・・
30年前、弟を失うはめになった?事件に酷似している。
アダムスベルグは一連の事件を14年間追い続けてきた。容疑者は高名な判事なのだが、アダムスベグの網からいつもするりと抜けていった。
いままで抱いていた思いを再度強くしながら、カナダへ研修のため旅立つアダムスベルグたち。そのカナダでも三叉槍で刺殺された死体が・・・しかもアダムスベルグがかかわりを持った若い女だった。
泥酔で記憶を失ったアダムスベルグ、そのことが事件を複雑にする。
独断と偏見に満ちたユニークな?警察署長、その彼に手を貸す部下、ふたりの老女、ひとりは名うてのハッカー、カナダ王立警察の主任部長の部下・・・脇役に支えながら自信を取り戻し、犯人を追いつめるアダムスベルグ。
結末には「荒技」が用いられているが、アダムスベルグ以外では絶対に許されない。
さすが、フレンチ・ミステリーの女王!
青チョークの男 [book] [フレッド・ヴァルガス]
フレッド・ヴァルガス/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆
アダムスベルグ・シリーズ第一弾
パリ五区の警察署長に任命されたばかりのアダムスベルグ、直感の男、45歳、がらくたの寄せ集めのような顔だが、神様がその顔を成功作へ持っていった。温かみのある声が人を引き付けるが説明はからっきしダメ。ボタンをかけ違えたり、ズボンからワイシャツがはみ出たりと、なかなかのキャラの持ち主!?
表紙のように、青いチョークで円が描かれ、そのなかにガラクタが置かれる出来ごとが続く。そうこうするうちに円の中に喉を切られた女性の死体が・・・
事件はこれだけに止まらず、第二、第三の殺人事件へと繋がっていく。
味のある会話と脈絡のない会話、主人公のひらめき、登場人物のユニークさ・・・どれをとっても秀逸なフレンチ・ミステリー!
シリーズ第二弾の「裏返しの男」もいいですよ。
追伸:著者の作品はどれをとっても300ページ前後、ちょうど良い長さ!
彼の個人的な運命 [book] [フレッド・ヴァルガス]
フレッド・ヴァルガス/東京創元社/お薦め度 ★★★★
三聖人シリーズ第三弾のフレンチ・ミステリー
前作「論理は右手」同様、主人公は元内務省調査員、ケルヴェレール。
元売春婦のマルトが「ボロ館」に連れた来たクレマンは、一時彼女が親代わりとなったことがあったアコーディオン弾きの男。女性連続殺人事件の容疑者として手配されていた。
マルトを信じる三聖人、三聖人のひとりマルクの叔父で元刑事のアルマン、ケルヴェレールが協力、捜査に乗り出す。
パソコン、携帯があるのに古色蒼然とした雰囲気とアナログな捜査、ここが本書の特徴でもあるのですが、がなんとも心地いい!?
ラストのラストまで引っ張っても300頁、愉しめる一冊だが、またまた三聖人の掛け合いが少ないのには不満が残る・・・
裏返しの男 [book] [フレッド・ヴァルガス]
フレッド・ヴァルガス/東京創元社/お薦め度 ★★★★
シリーズ第二弾
本書・アダムスベルグ・シリーズと三聖人・シリーズの2つのCWA賞シリーズをもつ著者。
狼の歯形の残る羊の死骸、それに続く喉に噛み痕のある女牧場主の死体。巨大狼の仕業と恐れる村民。死体で見つかった牧場主はある男が狼男だと言っていた。
狼男の捜索に乗り出す牧場主の友人で音楽家のカミーユ、アダムスベルグ警視の元彼女、牧場主に育てられた黒人青年、老羊飼いの三人。
次々と起こる羊と人間の殺害、一向に進まぬ捜索、そこに乗り出すアダムスベルグ警視、彼の「ひらめき」で事件は一挙に進展する。
前半のグダグダを我慢していただければ、警視の「特殊能力」が如何なく発揮される後半は愉しんでいただけるはず・・・
論理は右手に [book] [フレッド・ヴァルガス]
フレッド・ヴァルガス/東京創元社/お薦め度 ★★★★
三聖人シリーズ第二弾
前作「死者を起こせ」はCWA賞受賞作。となれば・・・
犬の糞から人骨が。元内務省調査員、ケルヴェレールは調査を開始する。友人の甥で三聖人のひとりマルコ、中世専門の歴史学者、を助手に、犬捜しからはじめる。
三聖人のあと二人とは、マタイ、先史時代専門の歴史学者。ルカ、第一次世界大戦専門の歴史学者。
飼い主を捜し当てたが、そこで最近老女が海岸で事故死していた。事件はあらぬ方向へ・・・
前作のように三聖人の掛け合いがないまま物語は進む。前作を知っているファンとしては少々欲求不満!? 文章の量といい、主人公といい、結構楽しめるシリーズ。次作は三聖人の掛け合いに期待したいものです。
死者を起こせ [book] [フレッド・ヴァルガス]
フレッド・ヴァルガス/東京創元社/お薦め度★★★★★
2006年CWA賞/最優秀翻訳長篇賞
本書の勝因は、三人の歴史学者、中世専門のマルク、先史時代専門のマティアス、第一次大戦専門のリュシアス、とマルクの叔父で元刑事のアルマンの組み合わせ。事件は四人が住む「ボロ館」の隣人、ソフィア、引退したオペラ歌手、からの依頼、庭に出現したブナの若木を掘り返すこと。
掘り返してみたものの、何も出てこなかった。そうこうするうちにソフィアが失踪する。まったく無関心な夫、夫の愛人、リヨンから突然やってきたソフィアの姪、ソフィアと仲のいいレストランの女主人・・・を巻き込んだ騒動へと。
名前はフレッドですが女性。ユーモアに富んだ作風は好感が持てる。シリーズ化されているようなので一時も早い邦訳を期待したいものです。