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三億円を護れ! [book] [新堂冬樹]

sample134.jpg新堂冬樹/幻冬舎/お薦め度 ★★★★☆ 

I'll be back!

ストーリーはいたって簡単。三億円宝くじに当たった、しょぼくれサラリーマン。その三億円を掠め取ろうとする「詐欺師」軍団。それを護ろうとする主人公たち。

「カリスマ」、「無間地獄」、「溝鼠」と大阪のノリ?で破天荒な小説を世に送り出した新堂冬樹が帰ってきた。「ヤミ金融」、「新興宗教」、「地上げ屋」・・・金の裏にまつわる人間像を描いてきた作者が、今回取り上げた題材は「三億円宝くじ長者」。

しょぼくれ主人公のまわりに、詐欺師、不倫妻、ホスト、ヤクザ、アイドル妄想狂、強欲婆・・・強烈キャラを配し、実に劇画的な、破天荒な大乱戦が展開される。

本書の前に刊行された「銀行籠城」は何だったのだろうか・・・

追伸:週刊アサヒ芸能(徳間書店)に掲載されていた本書。週刊ポスト(小学館)でもない、週刊現代(講談社)でもない、まさに週刊アサヒ芸能にぴったりな作品!!!

2004/05

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銀行籠城 [book] [新堂冬樹]

sample108.jpg新堂冬樹/幻冬舎/お薦め度 ★★★☆☆ 

優し過ぎる結末!?

最近の作者を見ていると、JRと私鉄が並行して走っているさまに見える。ひとつは「無間地獄」、「カリスマ」、「溝鼠(ドブネズミ)」に代表される、破天荒で劇画的な路線。もうひとつは、「忘れ雪」、「ある愛の詩」(未読ですが・・・)の恋愛?路線。本書は前者の路線を走る作品!?

午後3時3秒、あさがお銀行中野支店、閉店のシャッターを潜り入ってきた男、いきなりリュックからデザート・イーグルを取り出す、異変に気づいた客の悲鳴を合図に、シャッターへ駆け出すサラリーマン、男はトゥリガーを引く。さらに2階の行員を1分以内に1階に集めるよう命令される案内係、1秒だけ遅れた行員のために、案内係が二番目の犠牲者となる。

2階の行員たちは後手に縛られ、イモ虫状態で転がされる。次に男の口から出た言葉に全員が絶句した。「お前ら、全員、服を脱いで、俺の盾になれ!」・・・人質を奴隷化した男の名は、五十嵐。

10年前。大田区蒲田で起きた「羽根田事件」は、金融会社社長の菅井光三郎宅に押し入った羽根田義明が、菅井と妻、娘、家政婦の4人を人質に立て籠もり、娘以外の3人を射殺するという篭城事件だった。一家惨殺という最悪の事態を免れ、少女を救出した功績で鷲尾は警察功労章を授与され、警部補から警部へと昇任した。

犯人五十嵐と現場指揮官鷲尾の壮絶な戦いが始まる。シミュレーションゲーム?が展開される結末とは?

2004/03

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溝鼠・ドブネズミ [book] [新堂冬樹]

sample60.JPG新堂冬樹/徳間書店/お薦め度 ★★★★☆ 

「カリスマ」同様、破天荒な小説!?

ドブネズミの鉄則、腐った餌を食らっても、猛獣の餌には手を出さない。命あっての物種・・・

関東最大手の規模を誇る付属病院の助教授で、次期教授候補の坂峰。自身の出身校の医学部への裏口入学の斡旋で、数億円からの金を貯め込んでいるらしい。

今回の絵を描いた男は、宝田組組長・宝田。まんまと色仕掛けで恐喝のネタをビデオに納めた愛人・澪。澪は澪で、自由を手に入れるためには宝田を裏切り、億単位の金を横取りすることを画策する。

復讐代行屋・鷹場の前に、九年ぶりに姿をあらわしたのは整形手術で顔をかえた父・源治だった。源治が持ち込んだ話は、宝田組から二億の金を掠め取ることだった。

源治を拒絶する気持ちと二億円の魅力。すべてを見透かされ、すべてを計算され尽くしていた。鷹場は肚を決めた。宝田組から二億の金を掠め取ることを・・・そして、復讐代行屋のプライドにかけて、源治に復讐することを。・・・

澪は弟の鷹場を巻き込むために、源治にある提案をした。期間限定の共存共栄、億単位の金を眼前にした自分と源治は、九年間の空白などなかったように息が合っていた。

二億の金を掠め取るために自分の利害だけしか考えない三人の親子、というより守銭奴の親、姉、弟、と宝田の破天荒な馬鹿し合い。

毒から逃れるために、いまの生活に逃げ込んだ。そして、あれほど忌み嫌っていた毒を以て、自分を救ってくれた毒を制しようとする自分。毒と毒の混合、調合を間違えば、自らの命も落としかねない危険な賭け。

澪はわかっていた。誰よりも危険でおぞましい毒は、自分であることを・・・

新堂冬樹、エンジン全開の一冊!?

2002/05


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カリスマ [book] [新堂冬樹]

sample172.JPG新堂冬樹/徳間書店/お薦め度 ★★★★☆

劇画小説!?

新興宗教に帰依し、夫を刺し殺し、自殺した母を持つ男。
成人した男は自ら新興宗教のメシアとなり、絶対的権力を握る。
メシアのターゲットとなった女は母の生まれ変わりだった。
メシアに洗脳される女。その洗脳と解くために奔走する夫。
その夫に手を貸す心理カウンセラー。

オウム真理教事件等を下敷きに!?
人間はなぜ、そこまで信じることができるのか?
人間はなぜ、そこまで堕ちることができるのか?
人間はなぜ、カリスマとなることができるのか?
を徹底的に描いた「劇画小説」。

彼、彼女らが信じた神は、救いの手を差し伸べてはくれなかった。
男は知っている。人は誰かに依存しなければ生きてはゆけぬことを・・・
男は知っている。己を救えるのは、己意外にはいないことを・・・
男は知っている。存在しない幻影に救いを求めた瞬間に、己も存在しなくなることを・・・

多くのカルト教団の指導者たちは言う。自我を捨てなさい、と。
このひと言に、洗脳の秘密は隠されている。自我を捨てることイコール己を捨てること―つまり、己は存在しない。
指導者たちは、己を喪失した人間を操るために、自我喪失を奨励する。

2001/03

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無間地獄 [book] [新堂冬樹]

sample47.JPG新堂冬樹/幻冬舎/お薦め度 ★★★★☆

幻冬舎創立六周年記念特別作品

題名の「無間地獄」とは、仏教語。八大地獄のひとつ。五逆罪を犯した者が、絶えず苦しみを受ける所。

上司に嵌められ、ヤクザに追われ、囚われ、家も金も奪われ、同僚に裏切られてカモ達にも見放され、ブ男の尻の穴を掘らされ、そのブ男よりも醜い、鏡を覗いた本人さえ吐き気を催す醜貌にされ、自分に首ったけだった女に嫌悪され、尻を出した無様な格好で、胃液と涙と鼻水と血に塗られて身悶えている。「地獄だ・・・生き地獄だ・・・」玉城の呟きが・・・

金がないのは、首がないのと同じ。金の無い奴は死人。幼心に懐裡深く刻まれた父親の言葉―憎悪と呪詛を胸奥の飼い慣らしつつ、肯定する桐生がいた。お袋呪った、父親を呪った、運命を呪った、金を呪った。とりわけ、どうすることもできない無力な自分を呪った。

キャッチセールスの玉城。ヤクザの桐生。若頭の鬼塚。兄を殺された街金業者・成瀬・・・曲者同士の騙し、裏切り。逃げるろくでなし、追う人でなし・・・

正に「無間地獄」そのもの。地獄をここまで描ききった著者に脱帽。

ふと、ヤン・ソギルの「血と骨」、馳星周のデビュー作「不夜城」を思い出してしまいました。ヤン・ソギルのパワー、馳星周の裏社会・・・幻冬舎はいい新人を発掘しました。

2000/05

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