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幾世の鈴 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

あきない世傳 金と銀 特別巻下

四編の短編の主人公は、八代目店主・周助、菊栄、結、幸と賢輔の夫婦・・・

気がかりだった結のその後を描いた「行合の空」がわたし的にはお気に入り。

音羽屋忠兵衛は重追放と闕所を言い渡され、結も自身番に拘束され、取り調べを受けた。罪人となった夫と別れて、江戸に留まる、という道を選ばなかった。実はその時、お腹に新しい命が宿っていたのだ。

今は生まれ故郷の村とそっくりな播磨国の田舎で「千種屋」という旅籠屋を営む。忠兵衛は釣り三昧、ふたりの子供、姉は十、妹は七つ、が結の手伝いをしている。

いまだに「あのひと」のことを思い浮かべると憎しみと哀しみと惨めさが突き上げてくる。このままこんな田舎で朽ち果てるはわけにはいかぬ、と思い続けている結に再起の味方?があらわれる。

一枚だけ手元に残った型紙、結が持ちだした、を見てもらいに出かける。妹がしんどそうなと姉が引きとめるのも聞かず・・・

形紙は時代遅れで価値もなく、帰ってみれば妹は高熱を出し、姉もぐったりしている。江戸で猛威をふるった麻疹。ただじっと治まるのを待つしかない。

結の耳もとで母の声が、姉さんがいつも盾になって、あんたを守ってくれたこと。忘れるんやないで・・・

姉妹が三途の川を渡らずに戻ってくれたことで、母の想い、姉、幸、の想いに素直にむきあうことが出来たのだった。

いままでのもやもやがすっきり!


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契り橋 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

あきない世傳 金と銀 特別巻上

シリーズ十三巻を読み終えた読者への贈り物

四編の短編、主人公は惣次、佐助、お竹、賢輔・・・

「契り橋」は九代目賢輔と七代目幸との秘めた想いの行方がメインなんだろうけど、わたし的には惣次を主人公にした「風を抱く」がお気に入り。

本編では江戸で事あるごとに幸にアドバイスを送っていた惣次の心根の変化が読みとれる。変化のもとは、家族の絆に対する激しい飢えがあったのだが、お家さんの富久、兄、弟、恋女房、幸との間に絆はとうとう築けなかった。その惣次が井筒屋二代目保晴を父に、その娘、雪乃の夫になったことで初めて心が満たされたのだった。



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あきない世傳 金と銀13 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第十三弾にして完結編

まずは吉原での衣装競べ、ライバルたちの豪華絢爛な衣装、そのなかでも音羽屋のきらびかさは贅を尽くしている。最後のランウェイは芸者の歌扇、歌扇らしくあるための衣装は観客の度肝抜く・・・しかし、二票差で音羽屋に軍配があがる。

幸にとって勝敗は二の次だった。江戸本店で頃合いの品から贅を尽くした品まで扱うことの限界を感じ、手ごろな呉服と太物を店先現銀売りする本店と選りすぐりの呉服を屋敷売りする新店に分けることを決意する。

新店開業に伴うまさかの裏ぎり、災禍・・・どう乗り越えていけるのか。

マーケティング的にいうと、百貨店、本店、の限界を知り、術無い思いをすることなしに買い物を楽しんでもらえるセレクトショップ、本店と新店の棲み分け、へ。田原町全体でワンストップショッピングを楽しめるモール構想、商いの大海へ漕ぎだす幸の姿が清々しい。


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あきない世傳 金と銀12 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第十二弾

五十鈴屋江戸本店、吉凶、織り交ぜての十年、小紋染めを町人のものとし、麻疹禍には鉢巻用として江戸紫の小紋染めの切り売り、創業からの帯結び指南、反物の裁ち方指南、湯帷子を寛ぎ着としての浴衣へ、力士と揃いの浴衣・・・真っ先に浮かぶ凶は妹、結。そして音羽屋忠兵衛による仕打ち・・・

待望の浅草太仲間から浅草呉服太物仲間への道筋が見えてきたものの、奉行所から出た沙汰は、冥加金千六百両を出せば結成を許すというものだった。

一難去ってまた一難、奉行所と幸の知恵比べが始まる。

太物から絹織まで扱いアイテムが増え、それに伴い顧客も町人から名家、豪商と拡がり、商いはすこぶる順調だったが、幸のなかには一抹の不安が・・・お客が「買いたい」というものが何なのか曖昧になってきている気がする。

五十鈴屋が百貨店化してきた。果たしてそれが顧客にとっていいことなのか!?

その答えを見つけるために吉原の衣装競べに参加することを決める幸だった。




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あきない世傳 金と銀11 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第十一弾

五十鈴屋の藍染浴衣地は、江戸中の評判となった。幸の次の一手は、一時の流行りで終わらせないためにどうすべきか・・・

マーケティング的に言えば、トヨタがとったオープン戦略とは、自社技術を同業他社に開放し、その技術を用いる製品の陣容を拡大した上で市場競争に臨み、自社技術を用いた製品を普及させることによって、自社技術の技術標準化を図る。

言いかえると、浅草太物仲間に限り、五十鈴屋は型染めの技を無償でお教えます。染物師を寄越してください。技を公開し、型紙を融通することで、浅草太物仲間のどの店でも藍染浴衣地を商えるようにしたい。

ひとつの店だけで商われる品は短命。おそらくは一時の流行りで終わってしまう。幸はそれを望まなかったからこそオープン戦略をとったのです。

次作は太物仲間が幸への恩返し!?


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あきない世傳 金と銀10 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第十弾

前作で罠にはまり?呉服仲間から外され、呉服商い、絹商い、が出来なくなった五十鈴屋の糧は太物商い、木綿商い。c知恵を寄せ集めこれまでにない浴衣地の開発に挑む・・・

開発から発売までの二年間を描いた本書、少々走りすぎの感は否めない。大阪から幸の強力な助っ人、菊栄、が江戸に居を構える。

振り返れば、浜羽二重、桑の実色の縮緬、五十鈴帯、小紋染めを手掛け、商運をつかんできた五十鈴屋、今まで経験のないほどの大きな商機が訪れるに違いない、と・・・男女の違いを超え、身分を超えて江戸の街に木綿の橋を架ける。

今回から顧客サービスの一環として、帯結び指南に加え、裁ち方指南が加わり、顧客囲い込みに力を貸す。

本書では妹、結の嫁ぎ先、音羽屋日本橋店に割かれた頁数はほとんどなく、川開きのシーンだけ、次作ではどんな横やりを入れてくるのか!?

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あきない世傳 金と銀9 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第九弾

幸の妹、結、が「かんにん」の書置きを残して消えた。消えたのは結だけでなく、十二支の漢字を散らした文様の型紙、今後の五十鈴屋の運命を賭す、も・・・・・・

結が身を寄せたのは、以前より結を後添いにと熱望していた音羽屋忠兵衛のところだった。

妹と袂を分かつことになる幸。型紙は結への<嫁資>として、結が女将となる呉服商日本橋音羽屋、贈る。幸いにも型彫師の奮闘で十二支の小紋染めは五十鈴屋でも同時に売り出すが出来た。

一難去ってまた一難。ひとりの中年の侍が五十鈴屋江戸本店、江戸店を大阪と切り離し江戸本店とする、に現れ、縮緬百反の買い求めた。そのことが呉服仲間の寄合で非難の的となる。五十鈴屋が寄合仲間の顧客を奪い取った、と・・・

「顧客ノ横奪ハ厳ニ慎ムベシ」と仲間定法に記されており、それをもって五十鈴屋は呉服仲間から外され、呉服商い、絹商い、が出来なくなった。

五十鈴屋江戸本店、存亡の危機!取りあえず、太物商い、木綿商い、として店を開けることにするが、絹と木綿では単価が違いすぎる。この難局を幸ら江戸本店の面々はどう乗り越えるのか?

次作へと続く・・・


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あきない世傳 金と銀8 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第八弾

中村座で主役を演じる冨五郎がお練りで、五十鈴屋の江戸紫の小紋染めを纏ったことから、五十鈴屋の小紋染めは江戸っ子の支援を集める。

「吉凶禍福」。江戸の町を麻疹が襲う。五十鈴屋のみではなく、日本橋でも何処でも呉服がまるで売れなくなったのだ。

一難去ってまた一難。お上から上納金、金千五百両、を仰せつかる。何故五十鈴屋が・・・

足掛け三年の「女名前」の猶予期間が迫る中、八代目をどうするのか・・・

小紋染めを町人のものとするための策とは・・・

妹、結、の行く末は・・・

いかなる時も知恵を絞って精進を続ける幸と五十鈴屋であった。


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あきない世傳 金と銀7 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第七弾

赤穂浪士の討ち入りの日に無事江戸店をOPENさせた五十鈴屋、忙しない一年が過ぎ、江戸での商売を確固たるものにするため幸は・・・

毎月十四日、五十鈴屋による帯結びの工夫を伝える催しを無料で開催、地味ではあるが顧客に帯の結び方ひとつで見栄えが違うことを喜んでもらうための会を始めた。

治兵衛から餞としておくられた言葉、大きな時代の流れを読み取る豪気と、日々の営みに目ぇを光らせる細心、「女名前三年」の間、幸の大命題は五十鈴屋の江戸店でしか買えない商品の開発と八代目の店主を誰にするかであった。

「女名前三年」は大阪の鉄助を中心に策を練り、ある程度の方向性が見えてきた。それは「女名前延長」という手立てであった。それにより幸は江戸店のことだけに集中できる環境が整ったのだ。

次は五十鈴屋江戸店を大きく前進させる商材として幸が狙いを定めたのは「江戸小紋」、江戸の庶民が着る小紋だった。

本書はシリーズで言えば「中継ぎ」、江戸小紋が次作でどう爆発するのか、跡取りは延長という手立てで一時的に回避できたが、根本的な問題はどうするのか、次作を待ちたいと思います。

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あきない世傳 金と銀6 [book] [高田郁]

sample1.jpg高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

シリーズ第六弾

「五十鈴屋」六代目店主、智蔵の急死、本当に男運のない幸・・・

そんな幸を窮地に追い込む「女名前禁止」の掟、「五十鈴屋」の暖簾を守るには養子を迎えるしかないのか?番頭の鉄助に養子の話をしたものの鉄助は幸の申し出を固辞する。幸こそが「五十鈴屋」の店主にふさわしい、と。

船場の先例に三年間、女名前で猶予をもらい、次の店主を決めたことがあった。その慣習を呉服仲間の寄り合いで何とか認めてもらう算段をする幸、長老のひと言が幸の後押しをすることに・・・

智蔵との約束、「買うての幸い、売っての幸せ」を叶える江戸進出、を果たすべくまい進る幸。

亡き夫の台詞、「小さく産んで、大きく育てる」、に見合う物件を田原町に見つけ、四人で開店準備に江戸を赴くことに・・・

討ち入りの日、12月14日、に「五十鈴屋」江戸店は無事開店を迎えるが、江戸での商売ぶりは如何に?次作へ続く!

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