銃とチョコレート [book] [乙一]
乙一/講談社/お薦め度★★★★
高級チョコレートの代名詞といれば「GODIVA」、生チョコの代名詞といえば「ROYCE」。怪盗「ゴディバ」を追う名探偵「ロイズ」。なんとも乙一らしい謎かけ!?
亡くなった父親が露店で胡椒と聖書を買ってくれた。これからは必要になるだろう、と。問題の地図はその革表紙に隠されていた。
怪盗ゴディバの残すカードの裏に描かれた風車小屋。少年リンツの持つ地図の裏にも風車小屋が・・・リンツはロイズにこのことを手紙で伝える。ここから事件は思わぬ方向へ。
かって子供だったあなたと少年少女のためのミステリーランド、というシリーズ? 本来ならもっとクールでノワール的な展開になっていたのでしょうが、少年少女のためにちょっと遠慮したのでしょうか・・・!?
まず、リンツ、メリー、デメル、モロゾフ、ロイズ、ゴンチャロフ、ドゥバイヨルなどなど、登場人物名や地名にチョコレート関係の名前がつけられているのが可愛くて楽しいですね。
そのせいで、英語圏の名前やドイツ語圏の名前、ロシア語圏の名前など世界各国の名前が入り乱れ、読んでいて落ち着かない印象もあったのですが、子供ならそのようなことは気にならないでしょうね。
むしろ、何も知らないでこの本を読んだ子供が、あの名前は全てチョコレート絡みだったのかと後で気づいたら、さぞ楽しいだろうなと羨ましくなってしまいます。
「怪盗vs名探偵」という、私が子供の頃から大好きなパターンなのですが、物語は乙一さんらしく一筋縄ではいかない、綺麗事だけでは済まされない展開になっていますね。
チョコレートにも、甘いミルクチョコレートだけでなく、ブラックチョコレートがありますが、この作品もブラック風味。
とてもビターです。そして平田秀一さんのダークなイメージの挿絵がまた雰囲気を盛り上げていますね。
あっさりと仕掛けが見えてくる部分もあるのですが、予想を遥かに上回るブラックな展開には驚かされました。
本当にこれでいいのかと不安になってしまう部分もあったほどです。
しかし、それがまたとても魅力的なんですね。
特に、ドゥバイヨルのキャラクターのインパクトが強かったです。
戦争や移民問題など色々と考えさせられる要素を盛り込みつつも、それが決して説教臭い形ではなく、さらりと、しかし、しっかりとこちらに伝わってくるのもとてもいいと思います。
by オーウェン (2023-11-13 21:33)