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IN イン [book] [桐野夏生]

sample3.jpg桐野夏生/集英社/お薦め度 ★★★★ 

「OUT」から12年・・・

表題の「IN」、装丁の緑、すべてにおいて「OUT」を意識させる設え、なぜ?

小説家、鈴木タマキは「淫 イン」という作品を書こうとしていた。主人公は緑川未来男が書いた「無垢人」の登場人物、「〇子」。妻と愛人、「〇子」の間で繰り広げられる修羅の日々を描いた作品。タマキは「〇子」がいったい誰なのか、特定するために取材を進める。

緑川、妻、「〇子」の関係と並行して、タマキ自身と「青司」の過去も明らかになる。第三章を除いて、「淫」、「陰」、「因」、「陰」、「姻」、「IN」と物語は進む。

「〇子」はいったい誰なのか?

タマキが緑川の妻・千代子に「〇子」について尋ねるラストはキリノの面目躍如。

それにしても「OUT」を意識させる必要があったのか。キリノの意思ではなく、集英社の販売戦略ではないか・・・!?


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東京島 [book] [桐野夏生]

sample2.jpg桐野夏生/新潮社/お薦め度 ★★★★ 

谷崎潤一郎賞受賞作

谷崎潤一郎と聞くと「耽美主義」―道徳功利性を廃して美の享受・形成に最高の価値を置く西欧の芸術思潮―

本書も孤島にたどり着いた32人、その中に女は清子ひとり。逆ハーレムの中で繰り広げられる食欲、性欲、感情をむき出しにした極限状態の行動。こんなところが谷崎潤一郎賞受賞の要因なのでしょうか!?

著者いわく、大スランプ! 数えてみれば四年ぶりの新刊。結構評価がわかれる作品のようです。清子のエログロさが桐野らしいという人、設定に無理があるとか・・・それだけ問題作だということです。まったく桐野らしい作品。

読了後しばらく時間がたってブログにしています。読了後よりわたしの中の評価は高くなった気がします。


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メタボラ [book] [桐野夏生]

桐野夏生/朝日新聞社/お薦め度 ★★★★ 

桐野ワールド最新刊

「悪人」同様、こちらも朝日新聞、得だね朝日かな!?

時代性みたいなものを題材にして物語をすすめることって結構苦労するように思えます。時代性だけがついつい先行して、物語が薄っぺらいものになってしまう、桐野に限ってそんなことは関係なしでした。

記憶喪失になった主人公が沖縄でひとりの男と出逢う。女を巻き込んだ奇妙な共同生活からスタートする。

まともな男?とハチャメチャな男?、それぞれの自分探し、記憶喪失なのだから自分探しは当然だが、ハチャメチャな男も閉塞感の中から自分探し、こちらは桐野の言う<自分殺し>、に。果たして記憶は甦るのか!? 時代性として、帯に様々な文中のキーワードが載っています。ニート、下流社会、ワーキング・プア、フリーター・・・それを破壊されつくした僕たちという言葉に置き換えたのは桐野、流石としか言いようがない、桐野流冒険小説の出来上がり!


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魂萌え! [book] [桐野夏生]

桐野夏生/毎日新聞社/お薦め度 ★★★

まったく桐野らしくない本書!?帯には「若い人には、まだ想像できない世界」、と。たしかにそうだが、そんなことを桐野が言いたかったのだろうか・・・?

突然の夫の死。アメリカから帰国する長男夫婦・孫たち。コンビニで働く娘と同棲中の若者・・・あわただしさの中、葬儀はとりおこなわれる。定年後の葬儀の何とさびしいこと。

長男の帰国の目的は、アメリカでの生活をたたみ、日本で事業を起こすことだった。そのための事業資金確保は、母親・敏子との同居あるいは遺産の法定相続だった。そんな最中、夫の携帯が鳴る。発信もとは「伊藤」とある。女の声だった。夫の死を知らされていなかった・・・お線香をあげさせてほしい、と。敏子はそれを承諾する。

夫の秘密、息子と娘をめぐる遺産相続、敏子をとりまく女友達、夫の蕎麦うち仲間・・・専業主婦として暮らしてきた敏子の荒波への船出がはじまる。

巻末の台詞が本書を物語る。「・・・確かにあなたの経験って、小説みたいだもの」「そんなことはありません。どこにでもある話じゃないですか」


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アイム ソーリー、ママ [book] [桐野夏生]

桐野夏生/集英社/お薦め度 ★★★★★

勘ぐるわけじゃないが、桐野がMWA賞にノミネートされたことと、本書のストリーが関連しているのではないだろうか?
①加筆とMWA賞ノミネートの時期がかさなっている?
②ノミネートされたことで「OUT」的要素が本書に持ち込まれた?

わたし的には「OUT」の続編では・・・!?と直感的に思ってしまった。

物語は保育士とその夫が焼死する。その背後に施設出身の女の存在が浮かび上がる。

ここまではすんなりと犯人探しの展開かと思いきや、次々にその女と関係する人たちが殺されていく。その関係とはいかなるものか?

斉藤環との対談のなかで、今回の主人公を構成するものは、「ものを考えない」、「ためらいのない行動」、典型的な人格障害者だ、と。

あらゆる悪事、放火、窃盗、殺人を働きながら、母親探し、自分探しをする主人公。何とも鮮烈な物語だ。


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残虐記 [book] [桐野夏生]

桐野夏生/新潮社/お薦め度 ★★★★☆

前作、「グロテスク」は「東電OL殺人事件」を、本書、「残虐記」は「新潟女性監禁事件」を下敷きに描かれた作品。

本書のキーワードは「ストックホルム症候群」
1973年、ストックホルムで銀行強盗が人質をとり、立てこもります。6日後に人質は解放されますが、不思議なことに人質の中には犯人に対して良い感情を持ってしまう人々がいました。犯人と人質の間に生まれるこの奇妙な感情は、後にストックホルム症候群と呼ばれるようになりました。

今回の事件でも、これに似たことが起きてしまったのかもしれません。大きな不安や恐怖の中で、ほんの少しでも親切にされると、理屈には合わないのですが、犯人に感謝の気持ちのようなものを感じてしまうことがあります。

9才で誘拐された少女にとっては、この犯人に頼るしか、生きる方法はなかったでしょう。このようにして本来持っていた自由な心が奪われると、逃げられるチャンスがあっても逃げることができなくなることはあるでしょう

主人公は「小海鳴海」というペンネームを持つ小説家。現在、三十五歳。デビューは早く、高校一年の終わりの十六歳の時だった。私は十歳の時、安倍川健治という名の二十五歳の工員に誘拐拉致され、安倍川健治の自室に一年間監禁された。ケンジには余罪があったため、精神鑑定を経た後の裁判で無期懲役という厳罰が下された。

ケンジの手紙に、私の受けた衝撃は、犯人に「ゆるしてくれなくてもいいです。私も先生をゆるさないと思います」と、書かれていたことだけではなかった。二十五年ぶりによみがえってくる事件の「被害者」の感覚だった。

「残虐記」と名づけれた原稿を残し、失踪する作家。自ら封印したはずの事件が生々しくよみがえる。何が彼女をして事件を回想させ、かつ失踪させたのか・・・

「すごみを増す」という言葉がぴったりな最近の桐野!


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グロテスク [book] [桐野夏生]

桐野夏生/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆

「東電OL殺人事件」-被害者・渡辺泰子の昼の顔と夜の顔。昼の顔、東京電力、総合職のキャリア。夜の顔、円山町で毎日立ち続け、終電に乗る-を下敷きに、高学歴の主人公が奈落に落ちていくさまを、桐野はこう解く。

まず、桐野は被害者、佐藤和恵なる人物を設定する。佐藤は地元の小学校、中学校を経て、Q女子高等学校に進学し、Q大学経済学部に入学。地元の中学校からQ女子高等学校に進学することが、後で大きな転換期となる。Q大学を卒業した佐藤は父親の勤めていたG建設株式会社に入社。G建設始まって以来の女子総合職の先駆けとして入社し、将来を嘱望されていた。

続いて、桐野はもうひとりのキーパーソン、平田百合子を登場させる。スイス国籍を持つ父と日本人の母の次女として生まれ、スイスにて母が死亡したため、父と別れて一人帰国。長女は母の父と一緒に暮らしていたため、平田は米国人の知人宅に寄宿することになり、Q学園中等部に編入した。平田はこの後、Q女子高校に進学したが、高校三年の時に素行不良で退学処分になっている。生まれついての娼婦として物語の中では重要な役割を果たす。

百合子の姉を語りべに物語は展開する。百合子の手記、張(被告人)の上申書、和恵の日記と・・・

勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。一番になりたい。尊敬されたい。凄い社員だ、佐藤さんを入れてよかった、と言われたい。

誰か声をかけて。あたしを誘ってください。お願いだから、あたしに優しい言葉をかけてください。綺麗だって言って、可愛いって言って。お茶でも飲まないかって囁いて。

桐野が解く「東電OL殺人事件」。


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ダーク [book] [桐野夏生]

桐野夏生/講談社/お薦め度 ★★★★★

久々の村野ミロシリーズ。シリーズ第一弾、「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。第二弾、「天使に見捨てられた夜」。番外編、「水の眠り、灰の夢」。これも番外?連作短編の「ローズガーデン」。

ミロのデビューは32歳。今は年を重ね38歳。「40歳になったら死のうと思っている」というショッキングな書き出しから物語は始まる。

自分を裏切った男。自分が愛した男。成瀬が獄中自殺を図った。ミロはそれを知らず、六年の歳月を過ごした。村善はそれを知っていたが、ミロには知らせなかった。真実を問うため村善が住む札幌へ向かう。村善は盲目の若い女と暮らしていた。村善と口論となり、はずみで義父を死なせてしまう。救急車を呼べば、心臓発作はなんとかなったはず・・・

ここから、いままでにない破天荒な方向へミロは向かう。これ以上は言えません・・・

本書はミロシリーズの集大成でもあり、これからもミロを書き続けるという桐野の強いメッセージです。ファンならずとも一読あれ!


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玉蘭 [book] [桐野夏生]

桐野夏生/朝日新聞社/お薦め度 ★★★★★

玉蘭の花が枯れる時、幻の船に乗って失踪した男が現れる。愛を知るには73年の月日が必要だった。

地方出身者の有子は東京戦争、医者・行生との恋愛戦争にも敗れ、会社を辞め、上海へ留学する。不眠症に悩まされ続けていた有子に、若き日の大叔父が亡霊となってあらわれた。それは母から留学を諌めるために届いた「トラブル」と題した日記のせいだった。

大叔父はN汽船の機関長として上海に住み、戦後日本に戻り、昭和二十九年、上海に帰ると言って家を出たまま二度と帰らなかった。

戦時下の上海で大叔父はひとりの女を愛した。女の名前は浪子。大叔父と浪子、有子とそれを取り巻く留学生の男たち。二つの物語はオーバーラップする。

病魔と闘いながら生きてゆく浪子。自由奔放に男たちと関係を持つ有子。浪子の過去をなぞるように有子は・・・

現在と過去、過去と現在が入り混じりながら桐野の筆は進む。大叔父の亡霊と始めて出合った時に買った玉蘭。浪子の死を悼み添えられた玉蘭。

大叔父は最後に夢をみる。若い自分が暗い部屋でベッドに横たわった若い女と話しているものだった。女は不眠症で何かを悩んでいた。帰ろうとすると、その女が自分の手を握った。夢はそこで終わる。まだ掌に女の手の温もりが残っている気がした。女は登美子か(失踪後大叔父が愛した女)。いや、浪子か。どちらでもいい。叔父は微笑んで両の掌を擦り合わせた。

桐野が書く恋愛小説とはこういう形!?


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光源 [book] [桐野夏生]

桐野夏生/文藝春秋/お薦め度★★★★☆

映画づくりのために集まった女プロデューサー、新人監督兼脚本家、頑固なカメラマン、売れっ子男優、したたかな女優・・・

女プロデューサー:脳梗塞で倒れ、寝たきりの夫(元映画監督)。夫名義のマンション、半分は自分が払ったのだが、を抵当に映画づくりを始めた。

新人監督兼脚本家:学生時代に八ミリで映画を作った経験しかない。フリーターをしながら脚本修行をし、ぜひとも映画が撮りたいと持ち込んだ男。

頑固なカメラマン:女プロデューサーは自分にとってかけがえのない存在だった。九年前、突然、映画監督と結婚すると言い出すまでは・・・二人を見返すため、貯金をはたきアメリカで勉強をした。

売れっ子男優:ヤクザ映画のちょい役から女プロデューサーに見出され売れっ子となった。スキャンダルねた―腹ちがいの妹との秘密の関係―を持つ。

したたかな女優:元アイドル。ヘアヌード写真集発売と映画出演。売れっ子男優との共演。みえみえの売出し作戦。

我儘でなければ光れない。身勝手でなければ作れない。一番光り輝くのは誰なのか。

桐野の作品にしては、いまひとつ切れがない。それは映画界、芸能界が周知の目にさらされすぎたせいだと思う。


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