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凍てつく太陽 [book] [葉真中顕]

sample1.jpg葉真中顕/幻冬舎/お薦め度 ★★★★☆

日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門受賞作

日崎八尋、特高刑事、アイヌ出身、父親は大和人、父親の口癖は皇国臣民になることがアイヌにとって幸せ、昭和二十年、終戦前夜、函館、御三家の軍需工場に勤務する朝人将校が殺害され、一緒にいた芸妓は行方不明、現場には”我が名はスルク我が怒りを知れ”の血文字が・・・

続いて、同工場に勤務する工員が死んでいるのが見つかり、”カンナカムイに群がる鳥どもを狩り尽くす”と・・・

死因は毒殺、八尋の父親が開発した毒が用いられことから、同じ特高の先輩、三影に嵌められ網走刑務所に投獄されてしまう。

更に第三の事件が発生、”国賊の鳥ども残りは三羽だ”、と。

八尋は「己の使命」、皇国臣民、のため、脱獄を企て、まんまと成功する。「スルク」とは何者か?軍需工場に潜む秘密とは何か?「国賊」とは誰か?

民族、アイヌ、朝鮮、大和人とは?国家とは?臣民とは?時代を終戦前夜に設定した骨太の、心揺さぶられるエンターテインメント。

囮捜査で捕らえられたヨンチョン、朝人、と八尋の出自が途中から人間対人間に変わっていく様は本書のもうひとつの肝!?

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政治的に正しい警察小説 [book] [葉真中顕]

sample1.jpg葉真中顕/小学館/お薦め度 ★★★★

短編集

多彩な変化球の六編

表題の「政治的に正しい警察小説」、「ポリティカル・コレクトネス」(政治的に正しい言葉遣い。政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語)をコンセプトにした警察小説を依頼される主人公。

パワフルでエキセントリック編集者を相手に繰り広げられる禅問答?に著者のにやけ顔が浮かびます。

ミステリーらしい「秘密の海」、笑っちゃうけど現実だったら笑えない「リビング・ウィル」・・・多彩な変化球を愉しめます。


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ブラック・ドッグ [book] [葉真中顕]

sample1.jpg葉真中顕/講談社/お薦め度 ★★★★☆

掘り出し物の一冊!?

過激な動物愛護思想を訴える<DOG>が遂に一線を越えた。その犯行声明は「全人類に告ぐ!即刻、種差別をやめよ!動物を犠牲にするすべての活動を停止せよ!さもなくば、我々はきみたちに直接的な裁き<審判>を降す」。

次なるターゲットは日本、よくない噂の絶えない大手ペット企業が主催、大人気のエンジェル・テリアの販売会。動物愛護団体もイベントに便乗、里親を募る「譲渡会」を開催することになっていた。

事件はイベントの開会式で起きる。突然、会場の防火シャッターが降り、参加者が孤立してしまう。そこに12匹の謎の「獣」が放たれ、次々に人間に襲いかかる。逃げまどう人々は抵抗することは叶わず肉塊と化した。

逃げまどう人々、大臣、動物保護団体の代表、副代表、合唱を披露することになっていた中学生たち、胡散臭いペット企業の社長、その広告塔のタレント・・・各々の視点で物語は進んでいく。

確かにホラーなのだが、そこに時限的な脱出劇、極限状態下で見える人間のエゴ・・・いろんな要素が組み合わさった掘り出し物のエンターテインメント!?

500頁超の大作ですが、一気読みでした。年末のベストミステリーでは結構いい線いくかも・・・


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絶叫 [book] [葉真中顕]

sample1.jpg葉真中顕/光文社/お薦め度 ★★★★☆

犯罪小説

マンションの一室で飼い猫に食いちぎられた無残な死体、通帳の名義は鈴木葉子。

NPO法人代表理事殺害、同居の女、姿消す。

平凡なサラリーマン家庭に育った葉子、母親の期待を一身に背負った弟の自殺、バブル崩壊、投資の失敗で行方をくらます父親、家を手放し、ひっそり暮らす母娘。

結婚を機に上京、夫の不倫で離婚・・・葉子に転機が訪れたのは、ひょんなことから声をかけられ保険外務員になったことだった。

営業成績を上げるための努力、知人を頼った営業、が実りどんどん契約をとっていく葉子。しかし、知人の伝手がなくなった途端、成績は下降線をたどり、遂には契約をとるため「枕営業」も辞さない葉子。

クレジットの支払い、母親への仕送りで首が回らなくなる葉子。枕営業がばれ解雇、デリヘルで金を稼ぐ葉子。ある日「デリヘル狩り」にあった葉子、首謀者の男、神代との出会いが葉子の人生を大きく狂わせる!

葉子の人生の足どりを追う女刑事、綾乃、いつしか連続保険金殺人事件に突きあたる。事件のからくり、孤独死・・・どこでどう結びつくのか・・・一気読みのミステリー!


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ロスト・ケア [book] [葉真中顕]

sample1.jpg葉真中顕/光文社/お薦め度 ★★★★

日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作

超高齢化社会の介護問題を真正面に据えた社会派ミステリー。

介護サービスを提供する側、提供される側、その両側に内在する問題。提供する側からすると介護報酬の引き下げによる人材難、低賃金、重労働・・・その使命感と反比例する環境。一方提供される側は虐待、悪質なサービス・・・人間の尊厳を無視される環境。

43人も殺害した凶悪犯?の物語。

凶悪犯に?をつけたのは表題の「ロスト・ケア」。「・・・殺すことで彼らの家族を救いました。僕がやっていたことは介護です。喪失の介護、ロスト・ケアです」。

我々の価値観を揺さぶる展開。父親を介護施設に預ける検事を登場させ、キリストの教えを示し、介護ビジネスの内幕を暴露?・・・社会派の顔だけでなくミステリーの要素も兼ね備えた一冊。

追伸:犯人をデータ、出勤簿と犯行日、から解析していくシーンはマーケティング発想でなかなか面白かった!


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