可燃物 [book] [米澤穂信]
黒牢城 [book] [米澤穂信]
Iの悲劇 [book] [米澤穂信]
連作短編集
地権者と交渉して空き家を貸す了解を取り付け、その家を定住希望者に格安で提供し、新生活全般をサポートして、もっと蓑石を甦らせる。課長の西野秀嗣。新人の観山遊香。そして満願寺邦和の三人が、南はかま市Iターン支援推進プロジェクト、「甦り課」、の全メンバーになる。
この四月、開村式前に久野さんと安久津さんが移住してきたが、火災が原因で安久津さんは夜逃げ同然で蓑石を去り、久野さんも出て行った。
開村式ごの五月、事業を興そうとして最初の一歩でつまずいた牧野さんが引き上げていった。七月には立石家の未就学児童が迷子になり、久保寺さん宅の地下で動けなくなっているのが見つかった。久保寺さんはよその子供の命を危険にさらしたことに責任を感じ、立石さんはにわかに蓑石を救急体制に不安を覚えて、それぞれ蓑石での生活をあきらめた。
そして十月、秋祭りの際に食中毒事件が発生し、キノコを提供した上谷さんと食中毒に遭った河崎さんが引っ越した・・・
一癖?ある移住者が蓑石に来たは去っていく。その後も謎のトラブルは発生し続け、蓑石には誰もいなくなった!?
表題は「Iの悲劇」だが、なぜか終章は「Iの喜劇」、悲しくもあり捻りのきいた終章。さすが短編の名手、米澤穂信!
いまさら翼といわれても [book] [米澤穂信]
<古典部>シリーズ第六弾
六編収録の短編集。米澤穂信の短編集と言えば「満願」、短編の名手による青春ミステリー!?
表題の「いまさら翼といわれても」は実にいい。市のイベントである合唱祭でソロパートを歌うことになっていた千反田えるが本番を前に姿を消した。<古典部>の伊原摩耶花から連絡を受け、会場である文化会館へ向かうホータローこと、折木奉太郎。
<古典部>のもうひとり福部里志、ふくちゃん、もバスの路線図と時刻表を手に参戦、ホータローとの唐突な将棋の話を繰り広げる。
千反田の苦悩が垣間見える青春ミステリー。
私が初めて手にしたシリーズであって、五冊既刊、米澤ファンにとっては必読のシリーズなのですね!?
本と鍵の季節 [book] [米澤穂信]
連作短編集
堀川次郎、僕、と松倉詩門は、高校二年生、今年の四月に図書委員会の第一回会議で知り合った。話してみるといいやつだった。快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋だった。
そんなふたりに元図書委員の先輩女子から持ち込まれた依頼は、亡くなった祖父の開かずの金庫の番号を探し当ててほしいというのだが・・・
構成が実にいい、一編から四編は図書室に持ち込まれた謎に挑むふたりの推理、五編「昔話を聞かせてくれよ」、六編「友よ知るなかれ」はふたりの友情?の物語なっている。
知りあったばかりで馬が会うが、僕は松倉のことをよく知らない。五編、六編はそんな気持ちを下敷きに、ほろ苦い思いを絶妙な筆で描いている。さすが短編の名手!
追伸:前回紹介した若竹七海の「殺人鬼がもう一人」も連作短編集、こちらは「毒気」がたまらない、本書は爽やかさとほろ苦さが同居する、どちらも短編の名手による一冊、あなたはどちらに軍配を上げますか?
真実の10メートル手前 [book] [米澤穂信]
米澤穂信/東京創元社/お薦め度 ★★★★
太刀洗万智の短編6編
「王とサーカス」の前日談、新聞記者時代、とフリーランスの記者としての活動記録。
太刀洗万智、取っつきにくいが、二、三手先を読んだ隙のない段取り、多くを語らず、誤解を招くような態度も確かなものだけを集め、あらゆる角度から検討を加えることの証。
探偵ではなくあくまでも記者として真実を解き明かす。記事を書くことで大なり小なりの波紋が起こる。そこが探偵と記者の一番の違い。そのスタンスは時には己の身を削る。それでも真実を直視する記者、太刀洗万智・・・「綱渡りの成功例」にそのことが語られている。
最近はまっている若竹七海の葉村晶シリーズ、葉村は探偵、ストイックでシニカル。探偵と記者としての立ち位置は違うが、太刀洗万智と相通じるものがあるように思える!?
太刀洗万智を掘り下げるにはもってこいの一冊。本書を読んから「王とサーカス」を手にすればよかった・・・
さよなら妖精 [book] [米澤穂信]
米澤穂信/東京創元社/お薦め度 ★★★★
最新刊「王とサーカス」とリンク?
雨宿りをしているマーヤ、ヨーゴスラヴィア出身、行くところがない、と。わたしの同級生、白河の家は旅館、二ヶ月間旅館を手伝うことに。そこから奇妙な交流が始まる。
ユーゴスラヴィアは6つ共和国で成り立っている。スロヴェニア、クロアチア、セルビア、ボスニアヘルツェゴヴィナ、モンテネグロ、マケドニア。1991年、血で血を洗う内戦が勃発。
マーヤと過ごした二ヶ月、マーヤは自分の帰る場所を告げず日本を去る。彼女の出身地はどこなのか?わたしたちの謎解きが始まる。
内戦問題をこういう形で物語にする著者の発想に脱帽。余韻の残る一冊!
追伸:わたしの同級生として太刀洗万智が登場するが、最新刊「王とサーカス」の主人公となんらリンクしていない。
王とサーカス [book] [米澤穂信]
米澤穂信/東京創元社/お薦め度 ★★★★
最新刊
主人公の太刀洗万智は6年務めた新聞社を辞め、フリーのライターとして、月刊誌の旅行事情の取材でカトマンズを訪れる。そこで事件は発生する。ネパール国王をはじめ親族8人が皇太子により射殺される・・・
ショッキングな事件にもかかわらず、政府は沈黙を守る。いらつく市民が王宮を取り囲み警官隊と一発触発の様相を呈す。
千載一遇のチャンス?とばかり万智は取材に奔走する。そんな折、宿の女主人から王宮に使える准尉を紹介され、指定の場所に赴く万智、そこは廃墟と化したクラブ跡だった。
しかし、准尉の取材から殺人事件の手掛かりは得られなかったばかりか、准尉が死体で発見される。
王宮での殺人事件と准尉殺害事件がリンクしながら進むのかと思いきや、准尉の殺人事件を追う万智・・・
「満願」が良かっただけに期待しちゃいました。ジャーナリズム云々という余分なものが入り、ちょっと期待はずれな一冊!?
満願 [book] [米澤穂信]
米澤穂信/新潮社/お薦め度 ★★★★☆
山本周五郎賞受賞作にして直木賞最終候補作
今年のベスト10には入るだろうなと思っていた未読の一冊。
予想に違わぬ秀逸な短編集。
6編収録されているなかでは、表題の「満願」もいいが「夜警」がいい。横山秀夫ばりの警官に向かない男たちの話。
直木賞を獲るには、受賞者の黒川博行に比べると、汗のかき方がすくな過ぎたのかな!?
若手では長岡弘樹よりも飴村行、本書の米澤穂信の方が短編の旗手とわたし的には思っています。
次の短篇集も期待して待っています。
折れた竜骨 [book] [米澤穂信]
米澤穂信/東京創元社/お薦め度 ★★★★
日本推理作家協会賞受賞作
舞台は12世紀末のヨーロッパ、ロビン・フッドが生きた時代。ソロン諸島の領主・ローレント、「呪われたデーン人」からの侵略に備え傭兵を囲っている最中、何者かによって殺される。
ローレントの娘・アミーナは放浪の騎士・ファルクと従士ニコラに真実究明の命をくだし、自らも犯人探しに奔走する。
ひと癖もふた癖もある傭兵たちだが、見事にデーン人からの侵略を見事に防いでくれた。しかし、この傭兵たちのなかに犯人がいるはず・・・
特殊設定ミステリーの謎解き、なかなか多才な著者、趣を異にする一冊だが好みが分かれる!?