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ダークライン [book] [ジョー・R・ランズデール]

sample186.jpgジョー・R・ランズデール/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ 

ストーリーは少年冒険小説的な展開、舞台は1958年、アメリカが光り輝いていた時代、南部の片田舎、十三歳のスタンリーは地中から恋文?の入った箱を掘り出す。姉のカルドニアと一緒に恋文の主を探しているうちに、過去の殺人事件?を知り、その謎へと迫っていく。

ドライヴ・イン・シアターを営む両親、黒人のメイド、暴力を振るう内縁の夫、飲んだくれの映写技師、町の実力者、愛犬・・・スタンリーを取り巻くさまざまな人々と時代背景。その中で謎解きの経過と共に成長していく主人公・・・どことなく、スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」を彷彿させる。

手法は冒険小説的かもしれないが、ゆっくり流れる時代と謎解きは一級のミステリー!

2003/04



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アイスマン [book] [ジョー・R・ランズデール]

sample23.JPGジョー・R・ランズデール/早川書房/お薦め度 ★★★★☆

「ボトムズ」、MWA賞受賞作、を凌ぐと言われたら・・・

強盗に失敗したビルの逃げ込んだ先はフリークショー(freak)の一座だった。

フリークショーとは戦前の日本にもあった興行。奇形の人びとを見世物にするもの。本書ではドッグマンやひげ女、黒人のシャム双生児、でか頭、胸から手が生えている連中が登場する。

ビルは逃走の途中、ボトムズ(湿地帯)で何千匹もの蚊の大群に襲われ、まぶたは大きく膨れ、鼻はぼこぼこ、唇はタイヤのチューブのように腫れあがった見るも無惨な顔になっていた。その容姿が幸いしフリークショー一座の面々に温かく迎えられることになった。

やむなく彼らと生活を共にしながら逃げだすチャンスを伺うことにしたビルをそそのかす女があらわれる。経営者の妻・ギジェットだ。夫を殺しふたりで逃げようと・・・

全編、湿地帯(ボトムズ)のイメージそのもの。暗く、じめじめした、きっと著者の狙いなのだろうが・・・、この狙いにはめられることを良しとするか否かはあなた次第!?

追伸:題名の「アイスマン」とはフリークショーに登場する氷浸けの人間。ラストで・・・

2002/02



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死人街道 [book] [ジョー・R・ランズデール]

sample1.jpgジョー・R・ランズデール/新紀元社/お薦め度 ★★★★

五編収録の連作集

西部劇とホラーの融合=weird west=幽霊など超自然的なものを思わせて異様な、気味の悪い、この世のものでない、変な、奇妙な西部。

三十六口径コルト・ネイヴィをサッシュベルトで腰に留めたジェビダイア・メーサー牧師、邪悪なるものと遭遇した以上、使命は果たさなくてはならない。なぜか自分でもわからないが、邪悪なるものを感知することができた。恩恵とも呪縛ともつかない、犯した罪の代償に神から与えられたものだ。

魑魅魍魎の跋扈する魔界へ引き寄せられるメーサー牧師。そこにあるのは砂埃と血と汗、目に沁みる硝煙の臭いだけ。

ジム・トンプスンのパルプ・ノワール、夢枕漠の「陰陽師」とも違うジョー・R・ランズデールの「ウィアード・ウエスト」が。初めて手にするジャンルだ・・・


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ボトムズ [book] [ジョー・R・ランズデール]

sample263.JPGジョー・R・ランズデール/早川書房/お薦め度 ★★★★☆
  
MWA最優秀長編賞受賞作

八十歳を過ぎたいま、老人ホームのベッドに横たわる「私」こと、ハリーが事件の回想に耽るところから始まる。

1933年か34年の夏だった。十一歳のハリーは重傷を負った愛犬をピストルで処分するため、妹と森の中に入るが道に迷ってしまう。そのあげく黒人女の惨殺死体を発見する。ほうほうの体で家にたどり着く。

父親のジェイコブは理髪店を営む傍ら、町の治安官を務めていた。検死の結果、売春婦の身元が判明する。しかし、ジェイコブ以外、売春婦殺しにかかわる白人はこの町にはいなかった。

やがてこの売春婦殺しが過去一年半、近くで起きた三件目の事件であることを知らされのだった。

半身がヤギで半身が人間という魔物ゴート・マンが出現するホラータッチのサイコミステリーだが、当時の黒人に対する暴力、差別がはびこる時代背景が物語の大きなバックボーンにある。

差別的な社会状況下にもかかわらず親黒人的な態度を貫くジェイコブ。しかしそのタフネスな父親も叩きのめされてしまう。それを救うのは肝っ玉婆さん・ジェーン。ジェーンとハリーは探偵団を結成する。

こう書いてしまうと軽妙なストーリーテリングに思われるが、全編、時代小説、社会派小説仕立てであることも付け加えておこう。わたしはここが本書のもっとも素晴らしいところだと思うし、気に入っている(このトーンが嫌いな人には苦痛なミステリーかもしれない)。

題名の”ボトムズ”とは湿地帯を意味するようだが、”底辺の黒人たち”をも意味しているのではないだろうか。

2001/11

タグ:MWA賞
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