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ボトムズ [book] [ジョー・R・ランズデール]

sample263.JPGジョー・R・ランズデール/早川書房/お薦め度 ★★★★☆
  
MWA最優秀長編賞受賞作

八十歳を過ぎたいま、老人ホームのベッドに横たわる「私」こと、ハリーが事件の回想に耽るところから始まる。

1933年か34年の夏だった。十一歳のハリーは重傷を負った愛犬をピストルで処分するため、妹と森の中に入るが道に迷ってしまう。そのあげく黒人女の惨殺死体を発見する。ほうほうの体で家にたどり着く。

父親のジェイコブは理髪店を営む傍ら、町の治安官を務めていた。検死の結果、売春婦の身元が判明する。しかし、ジェイコブ以外、売春婦殺しにかかわる白人はこの町にはいなかった。

やがてこの売春婦殺しが過去一年半、近くで起きた三件目の事件であることを知らされのだった。

半身がヤギで半身が人間という魔物ゴート・マンが出現するホラータッチのサイコミステリーだが、当時の黒人に対する暴力、差別がはびこる時代背景が物語の大きなバックボーンにある。

差別的な社会状況下にもかかわらず親黒人的な態度を貫くジェイコブ。しかしそのタフネスな父親も叩きのめされてしまう。それを救うのは肝っ玉婆さん・ジェーン。ジェーンとハリーは探偵団を結成する。

こう書いてしまうと軽妙なストーリーテリングに思われるが、全編、時代小説、社会派小説仕立てであることも付け加えておこう。わたしはここが本書のもっとも素晴らしいところだと思うし、気に入っている(このトーンが嫌いな人には苦痛なミステリーかもしれない)。

題名の”ボトムズ”とは湿地帯を意味するようだが、”底辺の黒人たち”をも意味しているのではないだろうか。

2001/11

タグ:MWA賞
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