長いお別れ [book] [海外ミステリー遺産]
レイモンド・チャンドラー/早川書房/お薦め度 ★★★★☆
海外ミステリー遺産
1954年刊、フィリップ・マーロ・シリーズ、MWA賞受賞作。「ギムレットには早すぎる」
ハードボイルド御三家と言えば、本書のレイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメット(「マルタの鷹」・・・)、ロス・マクドナルド(「ウィチャリー家の女」・・・)。
妙にウマの合う男、テリー・レノックスと杯を重ねるうち、彼の逃亡を手助けすることになるフィリップ。
妻を殺し、自分も死ぬとの手紙を受け取る。そのことで警察に拘留されるフィリップ。
テリーの無実を信じ逃亡を手助けしたフィリップのもとに新たな依頼が・・・売れっ子作家?を連れ戻してほしい、と。
テリーの妻の姉、大富豪の妻の父、作家の妻、ギャングのボス・・・がかかわり、否が応でもテリーの事件の渦中へ引き戻されるフィリップ。
どれをとってもハードボイルドなフィリップ・マーロウ!
牧師館の殺人 [book] [海外ミステリー遺産]
アガサ・クリスティー/早川書房/お薦め度 ★★★★
海外ミステリー遺産
1930年刊、ミス・マープル・シリーズ第一弾、居心地のいい作品の先がけ。
ロンドンから一時間ほどの静かなセント・メアリ・ミード村が舞台。嫌われ者の治安判事の元大佐が牧師館で殺される。自首してきたのは若い画家、村人は事件解決と・・・
牧師館の裏手に住み、観察眼鋭いミス・マープルだけは別だった!
続いて、画家と道ならぬ恋仲だった元大佐の二番目の妻が、自分が犯人と名乗り出る。お互いをかばい合っているとうことで二人とも無罪放免となり、事件は振り出しに戻る。
おしゃべり軍団のおばさんたち、元大佐の娘、考古学者とその秘書、ならず者、謎めいた女性・・・くんずほぐれつの展開が待っている。
最後はミス・マープルの観察眼と洞察力が事件を解決する!
バスカヴィル家の犬 [book] [海外ミステリー遺産]
アーサー・コナン・ドイル/東京創元社/お薦め度 ★★★★
海外ミステリー遺産
1902年刊、ホームズ一気の謎解き
バスカヴィル家の当主が怪死を遂げる。死体の近くに大きな犬の足跡。全身から光を放つ異様な生き物。忌まわしい言い伝えの「バスカヴィル家の犬」!?
次期当主の身を案じた医師の依頼を受けるホームズとワトソン。ホームズはロンドンを離れられないため、ワトソンが当主と同行、<館>にて捜査を開始する。
バスカヴィル家の執事と妻、博物学者とその妹、ラフター家の主人と娘、脱獄囚・・・執事の不信な行動、博物学者の妹から当主へのメモ、ラフター家の娘の離婚問題、執事の妻と脱獄囚との関係が次々と明らかになる。
ロンドンで報告を待っているはずのホームズが忽然と現れ、事件は一気に解決の方向へ!
一番映像化されている作品。
百万ドルをとり返せ! [book] [海外ミステリー遺産]
ジェフリー・アーチャー/新潮社/お薦め度 ★★★★★
海外ミステリー遺産
1976年刊、MWA賞受賞作、コン・ゲーム小説の代表作。
コン・ゲームとは「cofidence gameの略。詐欺や騙し合いにした痛快な犯罪サスペンス。映画<スティング>がそのジャンル」
北海油田の幽霊会社の株を買わされ、大金を巻きあげれた数学教授、医師、画商、貴族。四人が失った金額は百万ドル。その策略の首謀者は富豪のハーヴェイ・メトカーフ。
天才的数学教授は被害者、メトカーフを丹念に調べ上げ、被害者3人を招集する。百万ドルをとり返すプランを各自が持ち寄り、それぞれのプランを実行に移す緻密な作戦を練りあげる。
手に汗握る奪回作戦、<オーシャンズ11>?、最後の貴族とその恋人のプランには驚愕!
深夜プラス1 [book] [海外ミステリー遺産]
ギャビン・ライアル/早川書房/お薦め度 ★★★★
海外ミステリー遺産
1965年刊、スリル感際立つ冒険小説。
元レジスタンスのビジネス・エイジェント、カントンが引き受けた仕事は、オーストリアの実業家を定刻までにブルターニュからリヒテンシュタインへ車で送りと届けることだった。
相棒に指名したNo.1とNo.2のガンマンは使えず、No.3のロヴェルとペアを組むことに。しかも実業家はフランス警察から婦女暴行罪?で追われていた。
ブルターニュで拾ったのは実業家とその秘書。なんだか最初から段取りが違う!?
カントンらを追っているのは警察だけではない。敵方のガンマンに狙われ、レジスタン時代の仲間に助けられたり、紆余曲折の護送劇が繰り広げられる。
ロヴェルがアル中、秘書が名ドライバー、無記名株の株主会・・・いろいろ用意された冒険アクション!
マルタの鷹 [book] [海外ミステリー遺産]
ダシール・ハメット/東京創元社/お薦め度 ★★★★
海外ミステリー遺産
1930年刊、「ハードボイルド探偵」を確立。
私立探偵サム・スペードのもとを訪ねる若い女。依頼事項は妹と駆け落ちした男と合うので、見張ってほしいというものだった。相棒のアーチャーがその任につくことに・・・
事件は見張りの最中に起きる。アーチャーと問題の男、ふたりが射殺される。
殺人事件はあらぬ方向に急展開、「マルタの鷹」、マルタ島騎士団がスペイン皇帝に献上した純金の像、をめぐる争いに巻き込まれるスペード。
妹の失踪とはまったくの嘘だった若き女、東地中海人、鷹を狙う男と子分・・・胡散臭い面々が繰り広げる丁々発止の駆け引き。その上前を撥ねるスペード。なんとも愉快?な物語。
毒をもって毒を制すハードボイルド探偵!?
料理長が多すぎる [book] [海外ミステリー遺産]
レックス・スタウト/早川書房/お薦め度 ★★★★
海外ミステリー遺産
1938年刊、巨漢の食いしん坊探偵が活躍
310ポンド(140キロ)の巨漢美食探偵ネロ・ウルフは、15名の巨匠が5年に1度集まる食の祭展?に主賓として招待される。15名といっても3人は故人、2名は欠席、10名の料理長だけが集まる。
メインイベントの前日、ソースの味きき、9皿のソースの抜けている香辛料を当てる、の最中、ひとりの料理長がナイフで刺殺される。
ウルフと助手のグッドウィンが捜査に乗り出すというのが通常のパターンだが、頑固なウルフはひつ筋縄では事件解明を引き受けない・・・
なんだかんだと回り道をするが、最後にはウルフが真犯人を見つけ出すという筋書き。それにしてもひねくれ探偵のウルフと助手のかみ合わない会話が実に面白い。
ウィチャリー家の女 [book] [海外ミステリー遺産]
ロス・マクドナルド/早川書房/お薦め度 ★★★★☆
海外ミステリー遺産
1961年刊、探偵リュウ・アーチャー・シリーズ、「戦後アメリカ社会の軋み」!?
表題の通り、富豪ウィチャリー家の女、前妻キャサリン、娘フィーベ、と夫であり父親であるホーマーの物語。
行方不明の娘の捜索を依頼されるアーチャー、船旅に出る船室でもめ事を起こすキャサリンとホーマー。見送りに来たフィーベはキャサリンと一緒に下船、タクシーに同乗、途中で別れる。そこからフィーベの足どりは消えてなくなる。
依頼主ホーマーの態度に違和感を覚えながら捜索にあたるアーチャー。そんな折、キャサリンの売り出し中の家で不動産屋が死んでいる現場に遭遇、キャサリンを探し出しことに主眼を置くアーチャー。
困難の末、キャサリンにたどり着き話を聞くのだが、何者かに殴られ、昏倒、キャサリンを見失う。
フィーベの失踪の鍵を握ると思われるキャサリン、彼女と娘、彼女と元夫、元夫と娘、三人の関係に陰を落とす男女の憎愛劇と金銭・・・フィーベの思いこみと人間入替トリックがミスリードを呼び、事件はもつれにもつれていく。
もうひとりのウィチャリー家の女が事件の根底に・・・
淡々と職務をこなすクールなアーチャー、アーチャーを演じたポール・ニューマン、「動く標的」、はぴったり!
寒い国から帰ってきたスパイ [book] [海外ミステリー遺産]
ジョン・ル・カレ/早川書房/お薦め度 ★★★★★
海外ミステリー遺産
1963年刊、MWA賞、CWA賞受賞作、スパイ小説の金字塔
英国情報部員、アレックス・リーマン、ベルリンでの任務の失敗により、任を解かれ本国へ。そこで待っていたのは閑職と首。リーマンをそこまで追いやった憎っくき奴とは、東ドイツ情報部副長官、ムント。
英国情報部のチーフが描く策略に嵌るリーマン。絵に描いたような落ちぶれた元情報部員、そんな彼に東側からの甘い誘いが・・・
多額の報酬の見返りに情報提供を承諾、再びベルリンに向かうリーマン。そこで待ち受ける対敵情報課、フィードラーによる執拗な尋問、ムントと反目するフィードラー、リーマンはムントを裏切り者に仕立てていく。
これ以上はネタばれになるので書けませんが、更に二転三転の物語が待ち受けている。フレデリック・フォーサイス「ジャッカルの日」、こちらもスパイ小説の金字塔、と同様の驚愕の結末が待っている。
さらば甘き口づけ [book] [海外ミステリー遺産]
ジェイムズ・クラムリー/早川書房/お薦め度 ★★★★★
海外ミステリー遺産
1978年刊 アメリカ現代文学の代表作!?
私立探偵スルーのもとに奇妙な依頼が・・・依頼主は元妻、西海岸を転々と飲み歩いているアル中の作家トラハーンを連れ戻して欲しい、と。愛車をかってアル中の後を追い、先回りをするがなかなか捕まらない。やっとのことでトラハーンを見つけ出す。アル中?のブルドッグと一緒に飲んだくれていたところを。
その酒場でひと悶着、トラハーンは尻を負傷、入院に付き合うことになるスルー。その間に酒場の女主人から10年前に失踪した娘を捜してほしいと依頼を受け、待機時間を失踪事件にあてる。
呑んだくれ同士のスルーとトラハーンにいつしか切っても切れない縁が・・・トラハーンをめぐる女たち、一緒に暮らす元妻と母、現在の妻、とひと筆も書けなくなったアル中作家の奇妙な関係に付き合わされるはめに。
失踪事件と女たちのドラマがいつしかリンク、結末に向かう件とスルーの台詞がいいですね。
「大体が馬鹿げた仕事なんだし、ぼくはそれを馬鹿げたやり方でやっているんでしょうな。ぼくにはそういうふうにしかできないんです。誇りと根性ートラハーンに効くのはその二つです」「人間の性格とはそういうものなんです」
超一級の人間臭いハードボイルドでありエンターテインメント!