偽りの楽園 [book] [トム・ロブ・スミス]
トム・ロブ・スミス/新潮社/お薦め度 ★★★★
前三部作とは趣を異にする一冊
スウェーデンの農場でのんびり暮らしていると思った父からいきなりの電話、「母さんは精神病を患っていま、入院している」と。ロンドンにいるダニエルは急いで飛行機の予約をする。
いざチェックインの時に再び父からの電話、「母さんはもうここにはいない!」。医者を説得、ひとりで退院してしまった。
今度は母から「お父さんの言ったことは全部嘘よ。わたしはおかしくなんかなっていない・・・これからロンドンまで飛行機で行くわ。ヒースローで待っていてちょうだい・・・」
どっちが正しいのか?
母のショルダーバッグから出される手帳、写真、新聞の切り抜き・・・それらの証拠?をもとにダニエルの全く知らなかったスウェーデンの農場で起きた出来ごとが語られる。
しかし、100%母のいうことを信じることのできないダニエル。苦渋の選択は母を入院させ、自身が真実を確かめにスウェーデンに向かうことだった。
驚愕の結末を期待したのですが、少々尻すぼみ!?
エージェント6 [book] [トム・ロブ・スミス]
トム・ロブ・スミス/新潮社/お薦め度 ★★★★☆
シリーズ完結編
「波乱万丈」としか言いようがない主人公、レオ・デミドフの人生!
1965年、レオの妻・ライーサが団長となり養女のゾーヤ、エレナを含む少年少女を率い、使節団としてニューヨークを訪れる。使節団とアメリカの少年少女によるコンサートは大成功を収める。事件はコンサート会場の国連本部前で起こる。
事件のきっかけをつくったのは共産主義を信じて疑わないエレナ、国家がそれをプロパガンダに利用したのだった。事件の犠牲者になったのは、黒人の歌手夫婦とライーサ。
レオの波乱万丈の人生、ライーサを殺した犯人を見つける、が再び始まる。
米ソ、東西の冷戦構造、ソ連のアフガニスタン侵攻を背景に、今回も一気読みの完結編。
グラーグ57 [book] [トム・ロブ・スミス]
トム・ロブ・スミス/新潮社/お薦め度 ★★★★
「チャイルド44」続編
波乱万丈の冒険小説
1956年、フルシチョフのスターリン批判が行われた年、主人公・レオ・ドミトリフはモスクワ殺人課を創設。国家保安省捜査官時代、上司からの命令で多くの人を逮捕、強制労働収容所へ送った。今は証拠にもとづく真実だけを追う仕事。
レオ・ドミトリフの囮捜査で強制労働収容所へ送られた、元司祭とその妻に絡んだと思われる連続殺人事件が起こる。
レオの捜査の前に立ちはだかる犯罪者集団のリーダーとなった元司祭の妻、フラエラ。
一向に心を開かない養女を盾に取られ、元司祭、ラーザリを脱出させるため「グラーグ57」(第57強制労働収容所)へ向かうはめになるレオ・ドミトリフ。
前作とは少々趣の異なる続編。しかも続々編も用意されているサービス満点のシリーズ。
チャイルド44 [book] [トム・ロブ・スミス]
トム・ロブ・スミス/新潮社/お薦め度 ★★★★★
2008年度CWA賞最優秀スパイ・冒険・スリラー賞を受賞
間違いなく、本年度のベスト3に入る作品!?
舞台は旧ソビエトのスターリン体制下、国家保安省捜査官のレオ、体制の側にありながら減点主義に疑問を感じるエリート。その彼が狡猾で卑劣な部下にはめられてしまう。本来なら収容所送りになるはずが、妻ともども地方の民警に追放される。
そこで発見される惨殺体、かって自身が事故として処理した死体に酷似していた。次々に発見される惨殺体、国家は不審者を捕まえ処刑を繰り返す。
スターリン体制下の恐慌政治に怯える人々、「ワイルド・スワン」を彷彿させる、役人はすべて減点主義、いつ綻びてもおかしくない時代の中、体制に歯向かいながら奔走する主人公。
表題、「チャイルド44」が意味するものは?そこに見える真実とは? 本年度、第一級のサスペンス!