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此の世の果ての殺人 [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg荒木あかね/講談社/お薦め度 ★★★★☆

江戸川乱歩賞受賞作

三か月後に小惑星が地球、世界で最も不幸な場所は熊本県北東部、に衝突する。日本に残っている人間はほとんどいない。まして九州など論外。

そんな大牟田の自動車学校に小春、ハルちゃん、がガソリンを盗みに入ると、最初の教習を担当したイサガワ先生と出くわす。咄嗟に「免許を取りに来ました」と答える・・・こうしてハルは人生最後の数カ月で再び運転を教えてもらうことになったのだ。

高速教習の最中、どうしようもなく強烈な死臭が漏れ出していた。恐る恐るトランクを開けてみると見知らぬ女性の遺体が・・・最寄りの警察署に向かうふたり、運よくイサガワ先生の元部下の市村刑事に出会い、これが三件目の殺人事件であることを知らされる。二件の被害者はどちらも若い男。

終末にもかかわらず正義感の強い?イサガワ先生に引きずられるように殺人事件を追うハル。

いじめにかかわっていた弟、刑務所を脱走してきた兄弟、整形外科の先生、残留村、暴走タクシー・・・風呂敷を目いっぱい広げた展開を修練させる能力は高い。とても最年少、23歳、とは思えない。二作目も手にしたい。





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蒼天の鳥 [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg三上幸四郎/講談社/お薦め度 ★★★★

江戸川乱歩賞受賞作

実在の女流作家、田中古代子、と娘、千鳥、をシャーロックとワトソンにした探偵小説。舞台は大正13年の鳥取。

「探偵奇譚 ジゴマ」、主人公のジゴマは変装名人の大怪盗であり、兇賊。Z組という集団をあやつって、盗み、放火、殺人、あらゆる犯罪を犯し、巴里の街の人々を恐怖のどん底におとしいれる。その兇賊に対するのは、ポーリン。どんな悪漢でも明晰な推理で確保する巴里一番の名探偵。

活動写真を見に行く古代子と千鳥、上映中に火災が発生、兇賊ジゴマがあらわれ、客のひとりを殺す。そのことを見てしまった二人が同じジゴマとZ組に襲われる。その大怪盗が夜光会、コミュニスト、くずれの露亜会の一味で・・・

時代背景、女性解放、コミュニスト・・・大正13年の鳥取・・・母娘探偵・・・魅力的な設定に映る。しかも小説としては完成度が高い。欲を言うともう少しミステリー色がほしかった。次作に期待しましょう。


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北緯43度のコールドケース [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg伏尾美紀/講談社/お薦め度 ★★★★

江戸川乱歩賞受賞作

沢村依理子、警部補への昇進を機に所轄への配属となった。その前は道警本部の刑事企画室に所属していた。今年の誕生日で36歳になる。警官になって7年、博士号を持つ大学院出の幹部候補生!?

侵入窃盗犯が見つけた女児の遺体、5年前に起きた誘拐事件、お蔵入り、の被害者と判明する。犯人は身代金と一緒に札幌駅で電車に轢かれた。5年もの間、共犯者?が育てていたのか!?

この事件がメインテーマなのだが、兎に角おテンコ盛り。道警内部の抗争、13年前の管理売春事件と酷似した死体遺棄事件、警務部からの呼び出し・・・

時系列が巧く整理されていないためか、右往左往させらてしまうが、魅力的なアイデア、謎解きが欠点を補ってくれる。久々に愉しめた江戸川乱歩賞受賞作。次作に期待が持てる新人発掘!?



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老虎残夢 [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg桃野雑派/講談社/お薦め度 ★★★★

江戸川乱歩賞受賞作

武侠ミステリー、武術に長け、義理を重んじる人々を主人公にした、であり孤島ミステリーでもある。

蒼紫苑は武術家の梁泰隆に拝師して十八年、日夜研鑚したにもかかわらず奥義を継承することは叶わず、名だたる三人の武侠から一人を選び、奥義を授ける、と言われる。

泰隆には恋華という十八歳の養女、金国の役人に家族を殺された、がおり、食事の世話などをさせている。

屋敷はハ仙島にあったが、泰隆は湖上の楼閣の道場で寝泊まりをしている。

三人の武侠が八仙島にやってくることで事件は起きる。小宴会の翌朝、孤島で毒を飲まされ、ヒ首で刺された泰隆の死体が発見される。

犯人は五名の中のひとり、弟子として師父の謎の死を解明するため紫苑が立ちあがる。

限定された中での犯人探しは行きつ戻りつ、五人の動機が検証されていく。ネタばれになるのでこれ以上言えないが、泰隆の永年にわたる密かな謀、老虎残夢、が事件の裏に潜んでいた・・・

紫苑と恋華の同性恋愛、三人の武侠と泰隆の関係、泰隆の紫苑に対する思い・・・がすべて最後に丸く収まる結末はいかがなものか!?


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わたしが消える [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg佐野広実/講談社/お薦め度 ★★★☆

第66回(2020年)江戸川乱歩賞受賞作

軽度認知障碍(障害者→障碍者)と診断された藤巻、元警察官、今はマンションの管理員、大学生のひとり娘、裕美から実習中の介護施設の門の前に置き去りにされた老人、「門前さん」、の身元探しを依頼される。

偶然にも置き去りにした人物と思われる老婆、防犯カメラ、電話・・・、と遭遇したものの、20年一緒に暮らしていたが、門前さんの詳しい素性はわからない、と。

後日、老婆から連絡があり、駆け付けてみると、パスポート2通、学生証2枚、社員証1枚、日雇い手帳1通の入った布袋を渡される。そこに書かれた名前はすべて異なっていた。

門前さんの指紋をとり、元同僚に調べてもらうが、該当者なし?との返事・・・

かつて警察をうたった時にお世話になった弁護士の協力を仰ぐが、その弁護士が殺されるところからサスペンス度が増していく。

増していくのはいいのだが、都合よくいろんなことが次々と明らかになり、仮説がどんどん膨らんでいく。最後に「緊張の戦略」が出て来て、本題からかけ離れた結末へ物語を誘う。誘ってほしくなかった!?

ここ数年、昨年も、不作の江戸川乱歩賞!?今年の受賞作2作はどうなのだろうか・・・


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ノワールをまとう女 [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg神護かずみ/講談社/お薦め度 ★★★★

第65回江戸川乱歩賞受賞作

「揉め事を引き受け、静かに解決することを生業としている。じつは話を聞き、君に興味をもった。きみなら使えるんじゃないかと思った」・・・原田、ボス、総会屋から転身、からこう言われスカウトされたわたし、西澤奈美。

企業の炎上案件を解決する裏稼業だ。今回の案件は日本でも有数の優良メーカー、美国堂、にかつて日本批判を浴びせた韓国人の社長が傘下に入ったのみならず、役員に収まっていることを問題視する市民団体、「美国堂を糺す会」、がデモをしかけている、というものだ。

「美国堂を糺す会」に潜入、情報を集める奈美、ここまでが物語の入口、奈美の同性愛パートナー、雪江、が「美国堂を糺す会」の会合に現れることで物語はあらぬ方向へ舵を切る。それに加え、奈美がお世話になったアサコ苑、韓国料理店、のママの死の真相も追うことになる。

それらが絡み合いながら物語は結末を迎える。最後におまけ、ネタばれ、ボスとの一戦、までついた仕立てになっているのだが、いまいちストンと落ちない。ここまで風呂敷を広げたのだから読み手は捻りを期待してしまう!?

最近の江戸川乱歩賞の質が落ちていることは確かだ。唸るような江戸川乱歩賞を読みたいものだ。

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到達不能極 [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg斉藤詠一/講談社/お薦め度 ★★★★

江戸川乱歩賞受賞作

2018年、遊覧飛行中のチャーター機がシステムダウンで南極に不時着する。時を同じく、南極観測隊員が雪上車で移動中、電波障害?に見舞われるなか一瞬だけ受信した飛行機の避難信号・・・

1945年、ペナン島の日本海軍基地、訓練生の星野信之はドイツから来た博士と娘、ロッテを南極のナチス・ドイツの秘密基地まで送り届ける任務を言い渡される。

2018年、現在と1945年、過去を繋ぐものとは?

ナチスが研究をしていた「不老不死」、生身の人間の意識ー脳内の電気信号の流れを保存することに成功したらしい。今でもそれが生き残っていて、飛行機の不時着、通信不能等を引き起こした

博士の娘、ロッテに恋心を抱だき彼女の意識と最後の交信をした青年。保管された「意識」を提供したロッテに会うため70年の歳月を経て再び南極へ向かったかつての青年。

過去の清算と現在の危機がどう結びついてどう解決されるのか?

江戸川乱歩賞にしてはちょっと趣を異にする作品。福井晴敏の作品が一瞬頭をよぎる・・・冒険SFサスペンス!?

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QJKJQ [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg佐藤究/講談社/お薦め度 ★★★

2016年江戸川乱歩賞受賞作

快楽殺人のスペシャリストが家族、母杞夕花、兄浄武、父桐清、そして私亜李亜。

キリングハウスから突然兄が殺され死体が消えた。兄に続き母も・・・父とふたりになった亜李亜、父が兄と母を殺したのか!?

13年前の殺人事件のフラッシュ・バックが亜李亜を襲う・・・フラッシュ・バックと現在の繋がりは何なのか?それを解き明かす鍵は父桐清!

ここから延々と境界殺人犯の殺人遺伝子がどうのこうのという読者を煙に巻く与太話?が始まる・・・

我慢しながら最後まで行きついたが、スッキリしない江戸川乱歩賞受賞作!

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道徳の時間 [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg呉勝浩/講談社/お薦め度 ★★★☆

本年度江戸川乱歩賞受賞作

作品より選考経過の方がおもしろい!? 

選者は五氏、有栖川有栖はイチオシ、池井戸潤は「受賞者ナシ」、石田衣良は消極的ながらもオシ、今野敏は他作をオス、辻村深月はイチオシ。講談社は当然、受賞作品なしだけは避けたい(過去に一回だけ受賞作品なしあり)。最終的に多数決の決着、3対2、薄氷の受賞。

例年であれば著者近影と受賞の言葉があるはずなのに本書にはそれがない。著者のささやかな抵抗!?

ビデオジャーナリスト、伏見の住む街で連続イタズラ事件発生、現場に「生物の時間を始めます」、「体育の時間を始めます」とのメッセージが・・・続いて陶芸家の自殺?そこにも「道徳の時間を初めます。殺したのはだれ?」との落書きが・・・

うら若き女が監督するドキュメンタリー映画の仕事が伏見のもとに舞い込む。題材は「鳴川第二小事件」、13年前、講演中の講師が5、6年生の目の前で刺殺され、犯人は黙秘を続け、「これは道徳の問題なのです」と言い残し、無期懲役刑が確定。

現在と過去の事件がどうリンクするのか?と読む進むが全くリンクしない。主人公が関わる現在と過去の単なる事件。また、13年前の事件の動機が明らかになる件は「それはないでしょう!」。


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闇に香る嘘 [book] [江戸川乱歩賞]

sample1.jpg下村敦史/講談社/お薦め度 ★★★★

第60回江戸川乱歩賞受賞作

村上和久は全盲の視覚障害者、孫娘に腎臓を移植しようと検査を受けるが、結果は不適格。娘はすでに腎臓の片方を提供しているため、頼みの綱は兄の竜彦だった。

岩手の実家に母と住む兄、腎臓移植を頼むが、検査さえも拒否されてしまう。

兄の態度に違和感を覚える和久。兄は中国残留孤児、永住帰国を果たした時、和久は既に失明、兄の顔を確認することは出来なかった。兄は偽者?

視覚障害をおして、北海道、岩手、京都と真実を求め歩く和久。果たして兄の正体は・・・

視覚障害、69歳、娘と離れ独り暮らし・・・すべての苛立たしさが真実を曇らせる。

前半の伏線を後半ひとつひとつつぶすことで真実が見えるさまは、まさにミステリー!

追伸:江戸川乱歩賞作家と言えども二作、三作となかなか続かない。今回は期待出来そうな新人!?


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