憂いなき街 [book] [佐々木譲]
道警シリーズ第七弾
機動捜査隊の津久井巡査部長は宝石店強盗犯が故買屋と接触するという情報をもとに、ホテルのラウンジで待機していた。ラウンジではジャズっぽいアレンジでピアノが奏でられていた・・・
ラウンジの案内ボードには、ピアノ、安西奈津子、と。ジャズ好きの津久井はその名を知っていた。ジャズ・ピアニスト、何年か前にCDも出していたはず。
被疑者確保の前に演奏の邪魔にならないように安西に一礼して現場を動いた津久井。
このシリーズは佐伯警部補、小島百合巡査部長、本書の津久井巡査部長がメインキャスト。今回はいつもと違った、津久井の恋愛物語!?
そんなふたりが「ブラックバード」で再会、意気投合する。奈津子の宿泊するホテルで一夜を共にするのだが、奈津子の腕に張られた救急絆創膏、情事の余韻が霧散する。奈津子はもう使っていない、四年前に止めた、捕まって執行猶予がついた、と・・・
津久井は顔をそむけて部屋のドアへと向かった。
中島公園にある池で女性の死体が発見される。持ち物から被害者は判明、覚せい剤所持、執行猶予判決を受けていた。しかも奈津子が参加するジャズ・フェスティバルのコンボ・リーダーの追っかけ!?
一夜にしてひび割れた関係になった津久井と奈津子だったが、捜査線上に奈津子の名前があがるに至り、津久井はどういう行動をとるのか?
大人の恋愛事情を絡めた異色の本書、佐伯と小島の関係も半歩前進!?
真夏の雷管 [book] [佐々木譲]
道警シリーズ第八弾
閉店セール中の店からの通報、高校生二人組の万引き犯が・・・生活安全課の巡査部長、小島百合が現場に向かう。高校生はいつの間にかいなくなり、代わりに万引きで捕まえたのは少学校6年生の少年、水野大樹。
一方、刑事三課窃盗係の佐伯は園芸店の侵入事件現場に向かう。何が盗まれたかはっきしない店主だったが、最近納品されたばかりの30kg弱の硝酸アンモニウムがなくなっている、と。これだけの硝酸アンモニウムがあればかなりの威力のある爆弾を作ることが出来る・・・
ふたつの事件はいつしか交錯し、思わぬ方向へ動き出す。
確かに手だれたシリーズだが、当初の頃の緊張感はない。道警を「うたった」メンバーにもぎらぎら感がない。時間とともに忘れさられていくのか?それとも時間が過去を塗り固めていくのか・・・
なかなか辛いシリーズになりつつあるようだ!?
警察庁から来た男 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★
積んどく!?
シリーズは既に第六弾、本書はシリーズ第二弾にして未読。本棚には入っているがブログ、アップなし。
表題の通り、道警に警察庁から特別監察が入る。道警は第一作の「うたう警官」の続き、裏金工作、かと色めき立つ。
特別監査の狙いは、道警本部、札幌方面本部の生活安全課において細かな不祥事が連続しているとみえる。そのうちとくに警察庁が関心をもっているのは、タイ人少女が保護を求めたにもかかわらず、暴力団に連れ戻された件と、ぼったくりバーで客が殺害された蓋然性の高い事件だった。
百条委員会で「うたった」津久井刑事がなぜかしら監察官から協力要請を受ける。
一方、大通署の佐伯刑事は、ぼったくりバーで死亡した男の父親が再捜査依頼のため宿泊していた部屋が荒らされた事件を担当する・・・
いつしか小池百合巡査も加わり、前作同様、道警の恥部?解明へと突き進む。
第一作同様、骨太のプロットが実にいい。独りごとだが、骨太だったのはこの辺までだったかな!?
人質 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★
道警シリーズ第六弾
ワイン・バーでのミニコンサートに誘われた小島百合、誘った香里は少し遅れる、と。会場にはピアニスト、その母、夫、娘。老夫婦。そこへ二人組の男が・・・
ひとりは冤罪事件で4年服役した被害者、もうひとりは支援者、彼らの要求は被害者のささやかな希望、当時の県警本部長に直接、謝罪してほしい、に協力してほしい、と。
ピアニストの父親が当時の県警本部長、ワイン・バーの経営者が大物議員の娘。その両面からの働きかけを見越しての行動・・・
監禁?される面々、頼みの綱は小島巡査部長?
著者のことですからちょっと捻った結末を用意していますが、硬派のシリーズが遂に二時間ドラマになってしまったようです。
密売人 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★☆
道警シリーズ第五弾
昨年末、刊行の「人質」でシリーズはすでに第六弾。遅まきながら文庫化で手にするも・・・
津久井、佐伯、小島百合を主人公にして回を進めてきたが、本書ではこの三人の追う事件がいつしかひとつに結びつく。
ホテルでランチを共にしたり、”ブラックバード”で作戦会議とちょっと趣を異にする。
事件の根っこに道警の元警官が絡んでいること以外普通の警察小説!?ちょっとさびしいですね・・・
警官の条件 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/新潮社/お薦め度 ★★★★
「警官の血」の続編
覚せい剤取締法違反で逮捕された元警視庁職員が、無罪判決を受けて復職する。復職した男は加賀谷仁、警務部にうたったのは安城和也。安城にとって加賀谷は直属の上司。
安城は、祖父、父と三代にわたる警官、「警官の血」をお読みください、その彼が若きエースとして登場。
潜入捜査中の刑事が殺される、その失態の責任を問われる安城。遅々として進まぬ捜査、一度は警察組織から抹殺された加賀谷が呼び戻される。なんともすごいプロット。
以前同様、単独捜査を進める加賀谷、一層焦る安城。
警官の血を呼び起こさせるラストシーンは感動的。本年度最高の警察小説か!?
巡査の休日 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★☆
道警シリーズ第四弾
未読の一冊、待望の文庫化!?
神奈川県で起きた現金輸送車強奪未遂事件、犯人は二人組、ひとりは強姦殺人犯の鎌田と判明。前作で小島百合巡査に撃たれ、逮捕されたが病院から脱走、現在指名手配中。
鎌田につけ狙われた村瀬香里のもとに再び脅迫メールが送りつけられる。指名手配中の鎌田が札幌に舞い戻り、再び香里を襲うのか?
結末ではすべての事件が解決するのだがどれもこれも中途半端、未読のままの方がよかったかも・・・
シリーズ第四弾としては惜しまれる一冊。
廃墟に乞う [book] [佐々木譲]
佐々木譲/文藝春秋/お薦め度 ★★★★
直木賞受賞作
警察小説の旗頭だが、直木賞にはとんと縁がなかった著者
休職中の刑事、仙道孝司が主人公の連作短篇集。
休職中の身でありながら、いろんな相談事を持ちこまれ、警察手帳なしでどう事件を解決するのか。マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ的、刑事→私立探偵→刑事、な一冊!?
直木賞受賞作と代表作はリンクするのか?
著者の最近の代表作といえば「警官の血」。代表作では受賞出来ず本書で受賞。なんと皮肉なことか。また、桜庭一樹のように若くして受賞する作家もいれば、著者や北村薫のようになかなか受賞出来ない作家もいる。神のなせる業なのか!?
六篇が収められているが、わたし的には「復帰する朝」が好き。妹について真反対のことを教える姉、それが真実への扉となる。巻末のぶるっとする姉の言葉が凄い。
警官の紋章 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★
道警シリーズ第三弾!
「うたう警官」、「警視庁から来た男」に続く本書
洞爺湖サミットを一週間後に控えるさなか、勤務中の警官が拳銃を所持したまま失踪、津久井卓は追跡を命じられた。
一方、道警の暗部、「うたう警官」、に釈然としない思いを持つ佐伯宏一は、過去の覚醒剤密輸入おとり捜査に疑惑を抱く。
団結式に出席する大臣のSP補佐となった小島百合。
それぞれの任務がそれぞれを結団式会場に向かわせる。失踪警察官は・・・道警の暗部は・・・大臣の警護は・・・
少々不満なのが津久井卓の存在感、シリーズ第一弾から比べると優等生化し過ぎて影が薄い。次作ではもっと存在感を示してほしいものだ。佐伯と小島の関係も少々気になる。
警官の血 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/新潮社/お薦め度 ★★★★
親子三代にわたる「警官の血」
安城清二、安城民雄、安城和也。
安城清二、戦後まもなく警察官となる。上野警察署で幾多の事件に遭遇、念願の天王寺駐在所所長に。在職中のある夜、跨線橋から転落死する。
安城民雄、父の同僚たちの支援を受けながら、警察官の道を選ぶ。学力の優秀さをかわれ官費で大学へ。その見返りは北大過激派内への潜入操作。精神を病むことになるが、制服警官となり天王寺駐在所へ。父の遺品の手帳、ホイッスル。父の死の真実に近づこうとした矢先、銃弾に倒れる。
安城和也、新人として配属された捜査四課、マル暴。そこで待つ特命は先輩刑事のスパイ。警察官人生の中でたどり着いた祖父、父の死の真実とは・・・
帝銀事件、赤軍派、佐藤訪米、大菩薩事件・・・それぞれの時代背景を踏まえながら物語は進行する。上下巻の大作だが、一気に読ませる。佐々木譲の警察官小説の集大成!