彼女が家に帰るまで [book] [ローリー・ロイ]
ローリー・ロイ/集英社/お薦め度 ★★★★
MWA賞ノミネート作
1950年代後半のデトロイト、栄光のアメリカに景気後退の影が忍び寄る。黒人売春婦が殺された事件に異常に興味を示すマリーナ、長女を亡くし、いまだそのショックから抜け出せないジュリア、出産間近のグレース。
身近なところで事件は起きる。22歳のおとな子供のエリザベスが忽然と姿を消す。街をあげて捜査に乗り出す住人。事件をきっかけに三人の妻たちの関係とそれぞれの夫との関係に微妙な波風が立ち始める。
黒人売春婦と夫の関係を疑う一方、嘘に嘘を重ねるマリーナ。遊びに来た双子の姪に翻弄されながら、子供を望まぬ夫との距離に悩むジュリア。夫には言うことの出来ない秘密を抱えてしまったグレース。
黒人娼婦殺人事件とエリザベス失踪事件はつながっているのか?三人の鬱積した思いの行きつく先はどこなのか?
物語の進行と題材のギャップ、進行はソフト、題材はハード、がサイコ・サスペンス感を助長させている!?
処女作の「べント・ロード」はMWA賞処女長編賞受賞、二作目の本書はMWA賞ノミネート、三作目の「地中の記憶」はMWA賞受賞、なんともすごい作家!
地中の記憶 [book] [ローリー・ロイ]
ローリー・ロイ/早川書房/お薦め度 ★★★★
MWA賞受賞作
1936年、サラとジュナ、姉妹を中心とする話と、1952年、アニーを中心とする話が交互に語られる。
1952年、アニーのハーフバースデー、16歳の6か月前の日、成女の日と言われ、真夜中に井戸を覗き込むと未来の伴侶が見えるという言い伝えがある。アニーに無理やりついてきた妹のキャロライン、ふたりが帰りに見たものはペイン家の老母の死体だった。
1936年サラとジュナ、長女的なサラと奔放なジュナ、対照的な姉妹と男としては線の細い弟デイル。ジュナとデイルが作業に出掛けるが、帰りが遅いので探しにいくと乱れたブラウス、手から出血したジュナを発見する。デイルの姿は見えない。
ジュナの証言をもとに捜索が開始され、ペイン家の長男が重要参考人として浮かびあがり、彼の証言を発端に瀕死の重傷を負ったデイルが発見される。
ジュナがペイン家の長男に何をされたか、デイルの発見証言をもとに裁判にかけられた長男は絞首刑を言い渡され、ジュナが女児を出産、殺される。
1936年に起こった殺人事件が16年後のアナ一の家族、ペイン一族・・・に引継がれる。ゆっくりと流れる語り口が筆者の持ち味なので少々の我慢が必要かも!?
ベント・ロード [book] [ローリー・ロイ]
ローリー・ロイ/集英社/お薦め度 ★★★★
MWA賞処女長編賞受賞作
デトロイトからカンザス、都会から田舎、へ引っ越すスコット一家。アーサーが引っ越しを決意した原因は娘にかかってくる黒人の電話だった。
20年ぶりに帰郷する一家、アーサー、シーリア、イレイン、ダニエル、イーヴィ、故郷には母、姉・ルースが暮らしている。もうひとりの姉イヴは亡くなっており、ルースはイヴの恋人だったレイと結婚していた。
シーリアはアーサーと母親が何かを隠していることに気づく。そのことがアーサーをデトロイトへ旅立たせたことだと・・・
アルコール中毒のレイとルースの不仲、レイが姉イヴを殺したと囁く人々、娘イーヴィがイヴにそっくりなことがもたらす恐怖・・・サイコサスペンス的な展開を示しながら進む物語。
最後の最後に明らかになる真実と痛ましい事件、ちょっと物語を引っ張り過ぎる感はあるが秀逸なデビュー作!?