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夢裡庵先生捕物帳 飛奴 [book] [泡坂妻夫]

sample5.jpg泡坂妻夫/徳間書店/お薦め度 ★★★★
 

ユーモア・ミステリーの一番手、泡坂先生の時代劇!

 

北町奉行の同心で、本名を富士宇衛門。この男、身形にはとん着ないと見えて、月代と無精ひげを伸ばし、髷は横に傾いている。黒絽の羽織は色が褪せてしかもよれよれだった。表特(善行をあらわす号)を夢裡庵という。荒木無人斎流柔術の達人で文もよくする。古風を尊び、曲がったこと柔弱でちゃらちゃらしたことが大嫌い。

 

著者お得意の連作短編集。余分なことはすべて省いた洒脱なミニマリズム!

 

海外にも著者同様、ユーモア・ミステリー、癒し系ミステリーの旗頭と呼ばれる作家が何人かいます。「サム・ホーソンの事件簿」のエドワード・D・ホック、「庭に孔雀、裏に死体」のドナ・アンドリューズ、「スイート・ホーム殺人事件」のクレイグ・ライス、「フェニモア先生、墓を掘る」のロビン・ハザウェイ・・・

 

今の時代だからこそ、この種のジャンルは欠かせない!?

 


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亜愛一郎の狼狽、転倒、逃亡 [book] [泡坂妻夫]

sample9.jpg泡坂妻夫/東京創元社/お薦め度 ★★★★


北村薫の推薦図書。連作短編集。なんとも言えない味があります。登場人物、プロット、謎解き・・・
すべてに。ユーモラスと言ったらいいのか、トリッキーと言ったらいいのか・・・それくらい今まで食したことのないものです。癖になる味です。北村薫ともちょっと違うし・・・それにしても主人公の姓は「亜」、名は「愛一郎」。ユニークな名前の素人探偵です。


sample8.jpg亜愛一郎の転倒/泡坂妻夫/東京創元社


亜さんは「雲」の写真家。腕力は結構強いようです。博学、色白の二枚目、独身、年齢不詳。いつも仕立てのいいスーツに蝶ネクタイ。普段は「どじ」と言うか、のんびりしてると言うか・・・事件のあるところ、亜あり。


sample7.jpg亜愛一郎の逃亡/泡坂妻夫/東京創元社


最後に、亜さんは某国の皇太子という種明かしで連作は終了!?連作短編集は長編より難しいのではないでしょうか?一篇ごとにプロット、謎解きを考えなければならないので・・・泡坂妻夫はすごい!

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奇術探偵 曾我佳城全集 [book] [泡坂妻夫]

sample6.jpg泡坂妻夫/講談社/お薦め度 ★★★★☆

「このミステリーがすごい!」2001年度第1位

伝説の女流奇術師、”曾我佳城”が探偵として活躍する連作短編集。二十年間にわたり書き綴られた二十二作品が収録された、まさに全集!

”秘の巻”の最初に登場する「空中朝顔」、私も一番好きな作品。


中高で眸が大きく、下瞼のふくらみに上品な色気が漂う。束ねた髪の形が、紺の中形によく似合った。年は三十を過ぎているはずだが、まだ開花の盛りという感じだった。


鉢は定石通りの行灯作りで、土には四本の細竹が立てられていたが、どこを探しても花の茎が見えなかった。葉と蔓が行灯の上部にからみ、可憐な花をつけてはいるが、土に植えられているべき、茎がないのである。


秋子が裕三と言葉を交わすようになったのは、前の年の八月だった。その年は、いい花が多く咲いた。夜明けとともに起き、花の手入れをするのが秋子の日課だった。


一朝会の創始者で、長く会長を務めた父の死後、会員を訪ね、栽培の正しい方法を教わり、曲がりなりにも花を作ることができるようになった。年下の裕三からのプロポーズ。秋子は自分の年齢のことばかり考えていた。裕三が大学を卒業するまで、待てなかったのである。秋子が学費や小遣いまで、面倒を見る約束ができていた。


そんな幸せも束の間。裕三は春雪なだれに遭い、死んでしまった。親戚の反対を押し切った罰だと言われる始末・・・裕三が死んだ初七日。裕三が栽培していた鉢から苗の芽が吹き始めた。そして、一週間目の朝。・・・鉢の空中に、緑色の芽が現れた!


来年、びっくりするような花を作ると、裕三が言ったのはこのことだった・・・あなたの考え出したトリックは、わたしが考えた以上に、すばらしいものだったわ。だって、有名な女流奇術師の曾我佳城さんが見て、動けなくなってしまったんですもの・・・


秀逸な一冊!


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湖底のまつり [book] [泡坂妻夫]

sample1.jpg泡坂妻夫/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆

BOOK1お薦めの一冊

「紀子」、傷心の一人旅、山間の村で、急に増水した川に流され、ロープを投げ助けてくれた晃二とその夜結ばれる。翌朝、晃二の姿は消えていた。

「緋紗江」、山間の村、ダム工事の測量士補、休日、急に増水した川に流され、ロープを投げ助けてくれた晃二とその夜結ばれ、結婚することを約束する。

「粧子」、「Pを殺してわたしも死ぬ・・・ママごめんなさい」、とノートに、白づくめで山間の村へ、途中で晃二に拾われ、自宅へ、ジュースを飲んだあと姿を消す。その日、晃二が毒殺され発見される。

三つの物語があたかも騙し絵のジグソーパズルのように、1ピースづつ埋められていく様は「見事」としかいいようがない。完全無欠の騙し絵!

泡坂妻夫といえば手妻師、2001年度「このミス・・・」では「奇術探偵 曾我佳城全集」が国内編一位を獲得、本書はそれより遡ること20年、何ともすごい作家ですね!


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