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奇術探偵 曾我佳城全集 [book] [泡坂妻夫]

sample6.jpg泡坂妻夫/講談社/お薦め度 ★★★★☆

「このミステリーがすごい!」2001年度第1位

伝説の女流奇術師、”曾我佳城”が探偵として活躍する連作短編集。二十年間にわたり書き綴られた二十二作品が収録された、まさに全集!

”秘の巻”の最初に登場する「空中朝顔」、私も一番好きな作品。


中高で眸が大きく、下瞼のふくらみに上品な色気が漂う。束ねた髪の形が、紺の中形によく似合った。年は三十を過ぎているはずだが、まだ開花の盛りという感じだった。


鉢は定石通りの行灯作りで、土には四本の細竹が立てられていたが、どこを探しても花の茎が見えなかった。葉と蔓が行灯の上部にからみ、可憐な花をつけてはいるが、土に植えられているべき、茎がないのである。


秋子が裕三と言葉を交わすようになったのは、前の年の八月だった。その年は、いい花が多く咲いた。夜明けとともに起き、花の手入れをするのが秋子の日課だった。


一朝会の創始者で、長く会長を務めた父の死後、会員を訪ね、栽培の正しい方法を教わり、曲がりなりにも花を作ることができるようになった。年下の裕三からのプロポーズ。秋子は自分の年齢のことばかり考えていた。裕三が大学を卒業するまで、待てなかったのである。秋子が学費や小遣いまで、面倒を見る約束ができていた。


そんな幸せも束の間。裕三は春雪なだれに遭い、死んでしまった。親戚の反対を押し切った罰だと言われる始末・・・裕三が死んだ初七日。裕三が栽培していた鉢から苗の芽が吹き始めた。そして、一週間目の朝。・・・鉢の空中に、緑色の芽が現れた!


来年、びっくりするような花を作ると、裕三が言ったのはこのことだった・・・あなたの考え出したトリックは、わたしが考えた以上に、すばらしいものだったわ。だって、有名な女流奇術師の曾我佳城さんが見て、動けなくなってしまったんですもの・・・


秀逸な一冊!


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