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キツネ狩り [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg寺嶌曜/新潮社/お薦め度 ★★★★☆

新潮ミステリー大賞受賞作

本よみうり堂で宮部みゆき推しの警察小説。

尾崎冴子は三年前、二人乗りバイクの自損事故?で、運転していた婚約者を亡くす。後ろに乗っていた尾崎も骨折、更に右眼を失明。六年半在籍した刑事課を離れ警務課に配置転換になっていた。

事故後、初めて現場を訪れた尾崎は失明した右眼で事故の状況を具に見て唖然とする。それは故意に起こされた事故、いや事故に偽装した殺人にしか見えない光景だった。 

検査の結果、尾崎の左眼は現在の、右眼は三年前の光景を見ていることが判明する。つまり左眼が見ているのと同じ場所の三年前の光景を右眼に見えているということだ。

深澤署長は早速、継続捜査支援室を立ち上げ、かつての指導役、弓削をバックアップにつけ、尾崎の能力を使って事件を再捜査することにする。

支援室の最初の事件は尾崎の右眼で犯行を見ることが出来る時間まで、あと四日しかない「笹塚一家四人殺害事件」。

トリッキーと思われる設定だが、左眼と右眼の時間差、空間差を見事に描き切った作者にあっぱれ!

なんで新潮ミステリー大賞なのか?江戸川乱歩賞でもよかったのに・・・とにかく掘り出し物の一冊でした。



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テスカトリポカ [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg佐藤究/直木賞受賞作/お薦め度 ★★★★☆

直木賞受賞作

クライムノベル

メキシコの麻薬密売組織ロス・カサソラスを仕切っている四人兄弟に大型ドローンで奇襲をかけたのは敵対するドゴ・カルテル、兄弟を三人殺したが、最後の一人バルミロ・カサラス、<粉>、をまだ仕留めていなかった。

バルミロは冷凍船、コンテナ船を乗り継ぎ、アフリカ、オーストラリア、インドネシアへと姿を消した。復讐と組織再興のための秘策を練る場所はジャカルタだった。

ジャカルタで出会ったひとりの日本人、臓器、腎臓、売買のコーディネーター、心臓血管外科医、末永から臓器ビジネスの新しいアイデアをもらい、二人で日本に渡る。

川崎で育った天涯孤独の少年、土方コシモはバルミロと出会い、その才能?を見いだされ、バルミロらの犯罪組織に引き込まれて行く。

アステカ神話の主要な神のひとり、テスカトリポカに仕えたご先祖さまの血を受け継いでいると教わり育ったバルミロがそれをコシモに話すことでふたりの運命が交錯する・・・

新しいビジネス、心臓密売、の行方がどうなるのか?どう決着をつけるかと期待?しながら読み進むも、テスカトリポカをめぐる解釈に齟齬が生じ、それがビジネスに大きくはね返る結末はそれでよかったのだろうか!?

江戸川乱歩賞受賞作より数段上を行く一冊。



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醜聞の作法 [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg佐藤亜紀/講談社/お薦め度 ★★★★

風刺小説

フランス革命前夜、ある侯爵が養い子のジュリーを放蕩三昧の金持ちに輿入れさせようと企んだ。ジュリーには結婚を誓った音楽教師がいる。侯爵夫人は一計を案じる。

そのためにうだつの上がらない、便利屋の弁護士ルフォンを金で釣り、醜聞、ゴシップ、の代筆屋としてパンフレット、冊子、に誹謗文を載せ、1500部印刷、配らせる。

醜聞はまたたく間に拡散、話に尾ひれがついて増幅する。事実かどうかなんてものはどうでもいい。事実なんていまそこにあってももう見えないし、確かめられもしない・・・

いまならフェイクニュース、SNS・・・で拡散、炎上ということになるるのですが、その時代は代筆屋の腕次第で、更に炎上、その逆で終息となるわけです。

本書は2010年の作品でフランス革命前夜の設定、いまならもっともっと手厳しいしっぺがいしを余儀なくされるのですが、当時はそこまで厳しくない沙汰が下ったようです!?

いまの時代にも通じるf風刺小説。


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木挽町のあだ討ち [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg永井沙耶子/新潮社/お薦め度 ★★★★☆

時代小説ミステリー!?

人情物+ミステリー仕立て+「オーシャンズ11」

芝居小屋の立つ木挽町の裏通りで、菊之助は父親の仇の下男を斬り、本懐を遂げる。この一件は「木挽町の仇討」と呼ばれる。

二年後、菊之助の書状、「この者は某の縁者につき、事の次第やそこもとの来し方など語ってほしい」、を携えた若侍が芝居小屋を訪れる。

幇間の「一八」、元武士、立師の「与三郎」、衣装の支度、繕いの「ほたる」、小道具作りの「久蔵」、戯作者の「金治」の五つの場が描かれる。人情物+ミステリー仕立て・・・

松井今朝子の「吉原手引草」を彷彿させる。

終幕、「国元屋敷の場」で仇討の真相、「オーシャンズ11」、が明らかになる。

人情物といい、伏線のはり方、回収といい、秀逸な時代小説。



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方舟 [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg夕木春央/講談社/お薦め度 ★★★★

大どんでん返し

登山サークルで一緒だった6人と柊一の従兄、山菜とりで道に迷った3人、両親と息子、10人が地下建築で一夜を明かすことになる。

翌日の明け方、地震に見舞われ、扉が大岩でふさがれ、地上に出ることが出来なくなる。方舟と書かれた案内図によれば地下建築は三層、1階と2階は小さな部屋に分かれており、3階は大きなまじきりで仕切られ、水に浸かっている。

地下建築の捜索の結果、10人が助かるためには、誰か1人が犠牲となって作業室の巻き上げ機を巻き上げることしかないようだ。

そんな状況下、この地下建築に案内した裕哉が死体で発見される。

3階の水かさは増すばかり。裕哉に続いてさやか、三人家族の父親が殺される。犯人を突き止め、説得、巻き上げ機を巻き上げさせることは出来るのか!?

完全なクローズドサークルのなか、水没まで刻々と時間は削られて行く。探偵役の従兄の翔一郎と僕、柊一。夫婦の隆平と麻衣、花、母親と息子。7人の中に犯人が・・・

大どんでん返しのエピローグ、これを読ませるために物語を綴った作者にあっぱれ!



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52ヘルツのクジラたち [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg町田そのこ/中央公論新社/お薦め度 ★★★★☆

2021年本屋大賞第一位

52ヘルツのクジラとは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。

あることがきっかけで知り合う、貴糊と「ムシ」。貴糊はこれからの人生を義父の介護に搾取され、「ムシ」は母親に虐待され・・・貴糊は自分と同じ匂いを「ムシ」から嗅ぎ取る。

大分の片田舎に移住してきた貴糊、ここに至る理由と孤独な人生、自分が一番大切な人の52ヘルツを聞き逃した贖罪が、「ムシ」の発する52ヘルツに耳を澄ますことだ。

孤独なふたりの新たな魂の物語。

物語の紡ぎ方が巧い作家さんだ。本屋大賞、全国の書店員が選んだいちばん売りたい本、第一位も納得。



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虹の谷の五月 [book] [~'23 国内編]

sample75.JPG船戸与一/集英社/お薦め度 ★★★★★

直木賞受賞作

フィリピン人と日本人との混血・ジャピーノ。おいらの名前はトシオ・マナハン。みんなはおいらをジャピーノと呼ぶ。

舞台はフィリピン・セブ島。おいらしか知らない虹の谷で起こった三年間の物語。それはおいらが十三歳のときから始まった・・・

十三歳の五月、ここガルソバンガ地区にシルビア・ガラン・オオシタが戻ってきた。二十一年まえ日本人画家と結婚。その夫は一年半ほどまえに脳隘血で死んだ。どうしてもやらなきゃならないことがふたつあるからと帰ってきた。ひとつは故郷のために役立つことをする。もうひとつは言わない、と。

おいらはシルビアと四人の男を一万ペソで虹の谷に案内するはめになった。虹の谷にはリベルタ婆さんの息子、ホセ・マンガハスがひとりで暮らしている。ホセは新人民軍の副指揮官だったらしいが、何かの理由で十二、三年まえに新人民軍から追放された・・・

ホセにあったのは二年前だ、ときどきリベルタ婆さんの使いでラム酒と煙草を届けにいっていた。

どうせ太っているシルビアだから虹の谷まで、一日じゃ登れないだろう。途中でホセのところまでラム酒と煙草を持っていけばいいやと思って出発した。

事件は次の日に起きた。いつもの洞窟で待っても待っても、ホセは戻ってこなかった。あきらめて洞窟を踏み出そうとした瞬間、ぱん!ぱん!と弾ける音がたてつづけに響いた。理由はわからないが、ホセと四人が戦い始めた。

ホセは一対四の劣勢にもかかわらず戦った。おいらがへまをしなければ勝っていたはずだった・・・

捕まったホセに向け、

「そうだよ、シルビアだよ。おまえを追いかけてガルソンガ地区からネグロス島での闘いに馳せ参じたあのシルビア・ガランだよ」

「けどね、あたしがおまえを殺すのはおまえに捨てられたからじゃない」

「なら、何だ」

「闘ってるからだよ」

「男だろうと女だろうと、闘いを忘れた人間は羽をもがれた蝶と同じなんだ。どんな贅沢をしても翔ぶことはできない。あたしが安穏と暮した二十年間を嘲笑うようにセブ島で闘いつづけた。それが赦せないだよ、それが!」

おいらにはよくわからなった。シルビアはホセの足もとに向け引鉄を引き続けた。

「これから、あたし、あまえのことなんか気にしないで生きていくことにするよ」

「さあ、とっとと消えておくれ」

「今度はほんとうの別れの言葉だ」とシルビアは虹の谷を後にした。

おいらは虹の谷で起きたことは誰にも喋らなかった。十三歳の五月は終わった。十四、十五歳と成長していく少年の様を描いた感動巨編。直木賞に値する一作。

2000/08



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天国への階段 [book] [~'23 国内編]

sample161.JPG白川道/幻冬舎/お薦め度 ★★★★★

驚嘆のミステリー巨編!

家業の牧場を騙し取られ、非業の死を遂げた父。最愛の女性にも裏切られ、孤独と絶望だけを抱え19歳の夏上京した柏木圭一は、26年の歳月を経、若き実業家となった。

元強盗犯・及川広美が刺殺された。及川を逮捕した定年間近の刑事・桑田則夫は、自ら志願して捜査を開始した。その最中に不可解な第二の殺人事件が起きる。

孤独と絶望を抱えた男は、罪を礎に巨大な財を成した。そして今、金だけを武器に壮絶な復讐の階段を昇りはじめる。復讐のターゲットとシナリオとは・・・

こう書いてしまうと、ハードボイルド小説のキャプションになってしまうが、実は恋愛小説!?

26年前、柏木は父の命を奪った牧場主の娘・亜木子と将来を約束していた。しかし、亜木子は二世議員・江成達也の政略結婚の道具となってしまった。

上京した柏木はがむしゃらに働き、そこで知り合った及川に実の弟のように面倒をみてもらった。及川が通うバーで英子と知り合う。

過去に蒔かれた悲劇の種子から、二つの命が生まれた。ひとりは亜木子の娘・未央。もうひとりは及川の子供として育てられた・一馬。

柏木、亜木子、未央。柏木、及川、一馬。ふたつのトライアングルが交錯しながら、各々の人生が軋みだす。

題名の「天国への階段」は、柏木と亜木子がふたりで聴いた、レッド・ツェッペリン、「天国への階段」から取られている。

「天国への階段はお金で買えるのか・・・」。本書にふさわしい題名である。ハードボイルドとして読んでも、恋愛小説として読んでも一級の作品である。

2001/03



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幻夏 [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg太田愛/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★

シリーズ第二弾

ある夏の日、少年は尚と拓という兄弟と出会った。三人はたちまち仲良しになった。その直後、尚が忽然と姿を消した。川原に残されたランドセルの中は翌日の時間割だった。

23年後、前作の暴走?で刑事課から交通課へ左遷させられた相馬は、少女連れ去り事件の応援に駆り出される。一方、鑓水と修司の探偵事務所に奇妙な依頼が入る。23年前にいなくなった息子を探し出してほしい、と・・・

相馬は少女が連れ去られた現場に刻まれた印、//=|、を見つける。尚がいなくなった現場に残された印と同じものだ。ふたつの事件が相馬、鑓水、修司の三人がかかわることで結びあわされて行く。

23年前、尚が相馬に語った「俺の父親はヒトゴロシなんだ」。あの夏本当は何が起こったのか?今、何が起ころうとしているのか?

デニス・ルヘインの「ミスティック・リバー」を彷彿させるが、前作「犯罪者」より数段進化している一冊!?


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犯罪者 [book] [~'23 国内編]

sample1.jpg太田愛/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★

デビュー作

駅前広場で起こる通り魔事件、四人が刺殺され、修司は脇腹を切られたが間一髪で逃れた。搬送された病院で謎の男から「あと十日。十日、生き延びれば助かる。生き延びてくれ。君が最後の一人なんだ」と言われた・・・

修司は病院を後にアパートへ帰るが、そこで再び命を狙われ、病院で小競り合いになった刑事、相馬に助けられる。相馬の計らいで友人のフリーライター、鑓水のマンションに匿われ、三人で通り魔事件を調べ始める。

脚本家であり、本書がデビュー作の著者。通り魔事件に止まらず話を目一杯膨らます。食品会社の不祥事・隠蔽、難病、産廃、企業と政治家の繋がり、政治腐敗、裁判闘争・・・

ちょっと饒舌、書き込みすぎなところはあるが、脚本家らしい構成力で膨らませた話を見事に繋げていく筆力は買いだ。

残念なのは結末、もっと簡潔にエンタメ的な結末にしてほしかった。余韻の残らない結末になってしまった!?

脚本家・作家、野沢尚、今は亡き、のようになってほしいものだ。


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