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冬のオペラ [book] [北村薫]

sample09.JPG北村薫/中央公論新書/お薦め度 ★★★★☆

北村薫お得意の連作短編集。今回の主人公は「名探偵・巫(かんなぎ)弓彦」と「記録係・姫宮あゆみ」。

デビュー作の連作ミステリー「空飛ぶ馬」は、「女子大生の私」と「落語家・春桜亭円紫」。続く第二弾「覆面作家」シリーズは、「お嬢さん探偵」と「雑誌編集者」。本書も絶妙のコンビが日常に潜む謎を解きます。

北村薫は殺人事件の少ないミステリー作家と言われていますが、本作品「冬のオペラ」では円紫シリーズ・「秋の花」に続いて殺人事件が起こります。

「北村薫ワールド」は奥が深い。さらりと読んでも面白いし、作者の仕掛けを知れば尚、面白さが倍増します。例えて言うなら「何気ないマジック」。決してデビッド・カッパーフィールドに代表される「大仕掛けなイリュージョン」ではありません。


2000/03/03

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覆面作家の夢の家 [book] [北村薫]

sample1.jpg北村薫/角川書店/お薦め度 ★★★★

シリーズ完結編!

北村薫、最新刊「太宰治の辞書」をブックシェルフへ。「覆面作家」シリーズ第三弾の本書が未読だったことが判明!

北村薫の代表的なシリーズは、時と人三部作。「スキップ」、「ターン」、「リセット」。<円紫さん>と<私>シリーズ、「太宰治の辞書」でシリーズ第六作。<ベッキーさん>シリーズが現在まで第三作、そのなかの「鷺と雪」は直木賞受賞作!

大富豪の令嬢にして美貌の作家・探偵、新妻千秋、ワトソン役に編集者の岡部良介を従え、コンビで謎に挑むシリーズ。

仕立てはユーモア・ミステリーだが内容は本格ミステリー、さすが北村薫!

読後の「ほっこり」感がたまらない・・・

これで三作揃ってシェルフに収まる。めでたし!めでたし!


太宰治の辞書 [book] [北村薫]

sample1.jpg北村薫/新潮社/お薦め度 ★★★★

シリーズ第六弾

前作「朝霧」は1998年刊行、あれから17年、最新刊を手にするとは思わなかった・・・

出版社の編集者として社会人生活をスタートさせた前作、本書では相方と中学生の息子を育てながら編集者を続けている<私>がいる。

前作までのシリーズでは日常の些細な謎解きが中心だったが、本書では<私>の本に対する探究が3編収録されている。

芥川の「舞踏会」の花火、太宰の「女生徒」の”ロココ料理”、太宰の辞書・・・加えて朔太郎の詩、と<私>の探究は留まることを知らない。

「太宰治の辞書」では<円紫さん>とのやり取りに触発され件は前作までのシリーズを踏襲。うれしい限りです。

確かに太宰が使っていた「辞書」を探すことと、太宰考察としての「辞書」というふたつの意味をかけているようにわたしには思えますが・・・

<円紫さん>シリーズのファンにとってはたまらない一冊!


鷺と雪 [book] [北村薫]

sample2.jpg北村薫/文藝春秋/お薦め度 ★★★★ 

シリーズ第三弾

大御所なのに直木賞を受賞していない作家のひとり。本書で直木賞がとれるかもしれない(わたしの大胆予測)!?

連作短編集、三編収録されている。表題の「鷺と雪」が実にいい。時は昭和十一年ニ月二六日。

主人公の英子と別宮(ベッキー)が日常の中で起こる謎を解き明かすシリーズだが、時代背景が大きな鍵を握っている。シリーズ第一弾「街の灯」は昭和七年、第二弾「玻璃の天」は昭和八年、本書は昭和十年、十一年。日本が戦争に突き進もうとしている中で起こる日常の事件だということ。

その最たる短編が「鷺と雪」。

ベッキーが英子に語るひと言がすべてを象徴している「・・・何事もお出来になるのはお嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」


タグ:直木賞

玻璃の天 [book] [北村薫]

北村薫/文藝春秋/お薦め度 ★★★★ 

「街の灯」に続くシリーズ第二弾

主人公は士族出身のお嬢さん、花村英子と、新しく運転手として花村家にやってきた、別宮みつ子こと「ベッキーさん」。

前作から一年、昭和八年。ますます不透明感を増す時代にあって、凛と咲くふたつの華、英子とベッキー。

昭和八年の大きな出来事といえば、満州国を認めない国際連盟を脱退、日本は “世界の孤児” になることを選択したと同時に、素直に思っていることを口に出来ない世になりつつある時でもあった。そんな時代背景が事件のメッセージ性をより濃くしている。

北村ワールドにどっぷり浸ってください!


街の灯 [book] [北村薫]

北村薫/文藝春秋/お薦め度★★★★

北村薫といえば、女子大生の「私」と噺家の円紫師匠シリーズ。日常の何気ない謎解き、殺人事件のないミステリー・・・わたし的にもお気に入りのシリーズ。本書は新たなシリーズとして、昨年、別冊文藝春秋に掲載された三篇を収録したものです。

主人公は士族出身のお嬢さん、花村英子と、新しく運転手として花村家にやってきた、別宮みつ子こと「ベッキーさん」。
花村家の祖父は師団長を歴任、陸軍の名物男。叔母は子爵家へお興入れ、父は日本でも五本の指に入る財閥系列の商事会社社長。
昭和七年という時代設定、花村家のお嬢さんの「私」(歳のころは十四、五歳)、男装の麗人?の運転手ベッキーさん・・・北村ワールドを彩るにふさわしいプロット。

昭和七年というと、
関東軍が錦州を占拠する。溥儀が満州国の執政に就任する。上野駅新築工事が完了する。第1回日本ダービーが開催される。犬養毅首相が射殺される。78歳(誕生:安政2(1855)/04/20)。5.15事件。海軍青年将校と陸軍士官候補生9人が首相官邸を襲撃し、「問答無用」と射殺する。 東京・銀座に服部時計店が新装開店する。大正10年以来の時計塔が復活する。 日本橋の白木屋百貨店で初の高層ビル火災が起る。死者14人、重軽傷者130人。このときまで日本の女子は下着を着ける習慣がなかったために女子従業員が高所から飛降りることができずに焼死したものが多かったと言い伝えられる。

今後の進展に期待したいシリーズ!

追伸:あまりに装丁がきれいだったので巻末を見ると、「装丁  京極夏彦 With Fisco」。京極さんはこんなこともやっているんだ!


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