僕が死んだあの森 [book] [ピエール・ルメートル]
われらが痛みの鏡 [book] [ピエール・ルメートル]
わが母なるロージー [book] [ピエール・ルメートル]
カミーユ警部・シリーズ第3.5弾
パリで爆破事件が起きる。幸いにも死者はいなかった。事件直後、警察に出頭した青年は砲弾は7つ仕掛けました。まだ6つあります。毎日ひとつ爆発します、と・・・
要求は拘留されている母親と、警察留置になることが確実な自分の保釈。加えて、オーストラリアに行って暮らせるように新しいIDと500万ユーロ。国境を越えたら残りの砲弾の場所を教えます。
青年の真意を計りかねるカミーユ警部、青年の尋問がテロ対策本部とカミーユの所属する犯罪捜査部を行った来たり。母親は息子の恋人を殺し、息子は母親を救い出そうと爆弾テロを計画、この2点だけでも辻褄が合わない。
タイムリミット・サスペンス?カミーユ警部の下した策略とはいかなるものか?
結末ありき?そこに向かって逆算で物語が進められて来たような印象をもってしまう!?
炎の色 [book] [ピエール・ルメートル]
「天国でまた会おう」の続編
資産家のぺリクール一族の当主の葬儀、そこで起きた悲劇、孫のポールが三階から棺の上に落ちて重傷を負う。当主の遺産のほとんどは娘と孫が相続したものの、マドレーヌは車いす生活のポールの看護に明け暮れる毎日だった
時は世界恐慌前夜の1927年、マドレーヌとポールに不満をいだく面々が水面下で暗躍する。議員であるマドレーヌの叔父、亡き当主の経営する銀行の上級管理職員で元婚約者、ポールの家庭教師でありマドレーヌの愛人・・・
マドレーヌの叔父と銀行の上級管理職員のよからぬ謀に乗せられ、遺産相続で得た資産すべてを失ったマドレーヌとポールは、小さなアパルトマンで細々と暮らすことに。
ヨーロッパはファシズムの台頭により混迷の度を増すばかり、第二次世界大戦の影が忍び寄る。そんな時代を逆手に取ったマドレーヌの復讐劇が始まる。
大仕掛けな復讐劇なんだから筆がもっと踊ってもいいのだが、ルメートルは淡々と粛々と筆を進める。ひとりひとり用意周到にしかも大胆に・・・
さすがルメートル、頁をめくる手が止まらない。三部作の完結編が待ち遠しい!
監禁面接 [book] [ピエール・ルメートル]
ノンシリーズ
失業4年目のアラン、再就職のエントリーを繰り返すもなかなかうまくいかない。57歳の年齢がネック?今はアルバイトのかけ持ちで糊口をしのいでいる。
そんなアランに朗報?が、一流企業の最終試験に残った、と・・・その最終試験とは、上級管理職5人のなかから最適任者を選ぶ、選抜試験がメインであると同時に採用試験も一緒に行うという。採用試験の内容は上級管理者を襲撃、拉致、尋問せよ!
藁をも掴む思いのアラン、娘の住宅資金を騙しとり?探偵事務所に上級管理職者の素行調査を依頼したり、元警察特別介入部隊警部を雇ったりと着々と襲撃、拉致、尋問に備える。
テロリストを演じる者たちと、もうひとりの最終候補者、こちらが本命、アランはダミー、と一緒に上級管理者らを襲撃する!
第一部、「そのまえ」はアランが語り手、第二部、「そのとき」は本試験を企画、実行した警備保障会社社長フォンタナが語り手、第三部、「そのあと」は再度アランが語り手と、凝った三部構成。
愛する妻、娘たちのために最終試験に臨んだアランの策略とは・・・
めまぐるしい展開、ただでは起きないアラン、その執念に脱帽・・・でも、ちょっと寂しい結末!?
傷だらけのカミーユ [book] [ピエール・ルメートル]
ピエール・ルメートル/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆
CWA賞受賞作にしてシリーズ完結編
カミーユ警部の恋人、アンヌ、カミーユへのプレゼントを受け取りに行った宝石店で強盗に出くわし、瀕死の重傷を負う。
一命を取り留めたアンヌ、犯人を捕まえるべく病室で事情聴取に臨むカミーユ。無残な姿のアンヌはショックで少しづつしか事件について話せない状況。そんな折、アンヌの収容された病院に犯人と思しき人物が現れる。
カミーユはアンヌを守るべく彼女との関係を隠し事件を担当する。二度と愛する人を失しないたくないという強い思いが捜査の手順を狂わす。
妻、イレーヌを失ってから5年、「悲しみのイレーヌ」、アンヌとの奇跡的な出会い、これが事件の発端だった。ネタばれになるのでこれ以上はいえませんが、さすがピエール・ルメートルと唸ってしまう展開です!
前二作、「悲しみのイレーヌ」、「その女アレックス」、同様ベスト1かもしれない一冊!
天国でまた会おう [book] [ピエール・ルメートル]
ピエール・ルメートル/早川書房/お薦め度 ★★★★☆
ゴンクール賞(エスプリに満ちた作品)受賞作
「その女アレックス」とはひと味もふた味も違う作品。
第一次世界大戦休戦前夜、百十三高地の奇襲、上官ブラデルの犯罪?に気づいたアルベールは砲弾の穴に突き落とされ、生き埋めに。窮地を救ったのはエドゥールだった。しかし、砲弾の破片が顔に刺さりエドゥールは顔を失う。
野戦病院で懸命に看病にあたるアルベール、断固として裕福な実家に戻ることを拒絶するエドゥール。エドゥールの姉に弟は戦死したと嘘をつき、別人になりすましパリへ帰還、ふたりの生活が始まる。
エドゥールのモルヒネ代を稼ぐには、アルベールら帰還兵に対する世間の仕打ちは冷たかった。
ブラデルは帰還後、エドゥールの姉と結婚、胡散臭い仕事で実業家としてのし上がっていた。
戦没者追悼墓地建設でひと儲けを企むブラデル、一方、エドゥールは途方もない追悼記念碑建立詐欺の計画を練りあげていた。
ふたつの企みの行き着く先は?こう書くとエンタメ的な要素が多いように聞こえるが、画才のあったエドゥールの奇行?を理解しなかった父、ペリクール、との確執、エドゥールの戦死により我が子を思う心に変化をきたす父。大戦を皮肉る?とともに父子愛を描いたエスプリ。
悲しみのイレーヌ [book] [ピエール・ルメートル]
ピエール・ルメートル/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆
衝撃的なデビュー作
大ベストセラー「その女アレックス」の第一作目が読めるなんて・・・
カミーユ・ヴェルーヴェン班が担当する事件は猟奇的バラバラ殺人、犠牲者は体型の似た二人の娼婦。壁には血文字の最後に指を一本だけ押しつけた跡が・・・
その指紋が2年前の事件と結びつく。
一日中事件のことを考えているカミーユ、ある日の夢のなかに突拍子もないことが浮かぶ。2年前の事件の殺害方法は「ブラック・ダリア」/ジェームス・エルロイ(「LAコンフィデンシャル」、「ホワイト・ジャズ」の著者)を模したものではないのか、と。
ミステリー通の書店主らの力を借りると、猟奇的バラバラ殺人事件は「アメリカン・サイコ」/B・E・エリスをなぞったものと判明。
カミーユたちの捜査状況は事あるごとに新聞にリークされ、そのことがカミーユを窮地に陥れる。それを救った奇策とはミステリー誌に掲載した広告だった。
犯人からの手紙には犯行の全貌が記されていた。犯人の最後の仕上げは「悲しみのイレーヌ」!?
ミステリーのなかにミステリー本を登場させ、ミステリーファンのこころをつかむとは・・・秀逸な一冊。
死のドレスを花婿に [book] [ピエール・ルメートル]
ピエール・ルメートル/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆
フレンチ・ミステリー
「その女アレックス」は著者3作目にして40数万部超のベストセラー。本書は2作目の文庫化。
4部構成の本書。第1部は主人公の「ソフィー」。ベビーシッターとして雇われたソフィー、雇い主のアパルトマンに泊まった朝、面倒をみている息子がベッドの中でソフィーの靴ひもで絞殺されていた。雇い主夫婦は既に外出、状況証拠はソフィーが犯人であることを示している。ソフィーの逃亡生活が始まる。
第2部は「フランツ」。謎の男フランツの2年にも及ぶストーカー行為。以前は夫婦で幸せな生活を送っていたソフィーの正面の建物に移り住み、「裏窓」的な覗き、侵入・・・それによりソフィーは記憶障害を引き起こし、流転の人生を送るはめになる。
第1部と第2部は完璧な「いやミス」!
ネタばれになるので多くは語れませんが、第3部は「フランツとソフィー」。フランツの戦略。第4部は「ソフィーとフランツ」。ソフィーの大逆転の戦略。
「その女アレックス」同様、秀逸なミステリー!
年内に第4作も用意されているようなので期待して待っています
その女アレックス [book] [ピエール・ルメートル]
ピエール・ルメートル/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆
CWA賞インターナショナル・ダガー受賞作
パリの路上でアレックスが誘拐され、ネズミと一緒に全裸で檻に閉じ込められた。犯人は「おまえがくたばるのを見たいからだ」と繰り返すだけ・・・
自分の妻も誘拐され殺された過去を持つパリ警視庁のカミーユ警部が指揮をとる。誘拐犯の割り出しに成功するが、犯人は飛び降り自殺。アレックスの行方は依然不明のまま。
一方アレックスは救出される前に自力で脱出し、自分の足跡を消す奇妙な行動に出る。
ここから事件は急展開、ネタばれになるのでこれ以上は言えませんが、入り口と出口の景色がまったく違うものなることは受け合います。
カミーユ警部、同僚の人物設定もいいし、シリーズ化してほしい作品。ミステリーとしてもよく練られた、本年度ベスト10入り間違いなしの一冊!?