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K・Nの悲劇 [book] [高野和明]

sample170.jpg高野和明/講談社/お薦め度 ★★★★ 

ホラー!?

出版社から送られてくる重版の通知、振り込まれる多額の印税、各メディアからの取材依頼、高層マンションへの引越し・・・夏樹果波は幸せの絶頂にいた。

そんな矢先、ちょっとした油断から妊娠してしまった。

重版の打ち切り、マンションの支払い、フリーライターの稼ぎ、出産・育児・教育費用・・・夫、修平のとるべき道は、夏樹家の経済状態を秤にかければ、一つしかなかった。中絶という苦渋の選択をした瞬間から、果波の精神に異常が起こりはじめる。

精神病なのか、それとも死霊の憑依か?そのはざまで揺れる修平。それを支える精神科医・・・

ジェットコースター的に読ませるテンポとホラー的な要素がミスマッチ!?

ホラー的なものをジェットコースターで読ませる。ホラー的なものをホラー的スピードで読ませる。本書は前者のスタイルをとっているが、わたし的には後者のスタイルで読んでみたかった・・・

追伸:「K・N」とはある人物とある人物の頭文字。

2003/03



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グレイヴディッガー [book] [高野和明]

sample95.JPG高野和明/講談社/お薦め度 ★★★★ 

江戸川乱歩賞受賞第一作

「グレイヴディッガー」とは英語で「墓堀人」の意味。魔女迫害の機運がイングランドに及んだ頃、異端審問官たちが何者かによって虐殺されるという事件が起こる。魔女裁判と同じ拷問の方法を使って。

それに恐れをなした異端審問官たちが、魔女狩りを自粛したのではないかという。今となっては事件の真相は分からない。しかし、当時の人々は、拷問によって殺された男が墓の中から甦り、自分を殺した者たちに復讐をしたのではないかと噂した。そして、この甦った死者を、「グレイヴディッガー」と呼んだ。

まず、「グレイヴディッガー」ありき。このアイデアをとことん膨らませ、プロットを組み立てたというのが真相ではないか!?

わたし的には、「グレイヴディッガー」にとらわれすぎだと思う。江戸川乱歩賞受賞作「13階段」は圧巻なプロットの勝利だった。その構成力はいかんなく本書でも発揮されているが、奇をてらう必要はなかった。

小悪党が自ら罪滅ぼしのため、骨髄ドナーとなり白血病患者の命を救おうとしていた。戸籍を交換した相棒の死体を発見したことから、悪党の逃亡劇が始まる。

骨髄ドナーが最後になにを意味するのだろうか!?この辺で止めておきますが、第三弾も期待したいものです。

2002/08

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13階段 [book] [高野和明]

sample222.JPG高野和明/講談社/お薦め度 ★★★★☆

江戸川乱歩賞受賞作

受賞の言葉の中に、「職人で結構」とは、映画監督岡本喜八の言葉です。自分も、一流の娯楽職人を目指して頑張るつもりです、と語る著者。

導入のプロットからしてエンターテインメント的。
喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、それを見守ってきた刑務官。彼らに持ちかけられた仕事は記憶喪失の死刑囚の冤罪を晴らすこと。期限は三ヶ月、成功報酬は一千万円。

死刑囚の微かな記憶とは、「階段」。
あの時、自分は、階段を上っていた。今と同じように、死の恐怖に駆られながら、階段を上っていた。

冤罪を晴らすには、凶器、通帳、印鑑を見つけ出さなければならない。その隠し場所と階段が関係するのか?死刑執行は四日後に迫る。

最後のどんでん返しもしっかり用意され、第一級のエンターテインメントに仕上がっています。

死刑囚の心情、刑務官の仕事ぶり、刑務所の様子などよく書けています。押さえるところは押さえ、エンターテインメント的に跳ねるところは跳ね、メリハリの利いた構成になっているのも著者の筆力の賜物。お薦めの一冊です。

2001/08



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ジェノサイド [book] [高野和明]

sample1.jpg高野和明/角川書店/お薦め度 ★★★★☆

第一級のエンターテインメント

ジェノサイドとは大量虐殺

急死した父親から研人への不可解なメール、行き着いたメモには、ノートパソコンの保管、残嵩500万円のキャッシュカード、アパートの鍵の在りか、通信手段は盗聴されている、と。アパートで見つけた封筒には、父親からの指示が、オーファンの受容体のアルゴリズムをデザインし、合成せよ。その期限は2月28日。

4名の傭兵に課せられたミッションは、コンゴ、イトゥイの森で生活するピグミー・ムブティ人の集団のせん滅。もっと重要なことは見たことがない生き物に遭遇したら、真っ先に殺すこと。

「ハイズマン・レポート」#5、生物は、長い時間をかけて微細な変化を蓄積させていく一方で、ある時突然、大きく変質を変え得る。現世人類と次世代人類、この二つの生物種は生態的地位が完全に一致するため、我々を排除しない限り、彼らの生息場所は確保されない。

アメリカ政府、傭兵、人類学者と次世代人類? 研人の創薬・・・アメリカ、アフリカ、日本を舞台にワールドワイドな一気読みの冒険小説。今年度ベスト3間違いなしの一冊。


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