パラダイス・ガーデンの喪失 [book] [若竹七海]
不穏な眠り [book] [若竹七海]
葉村晶シリーズ
四編収録の短編集
国籍・日本、性別・女。吉祥寺にあるミステリ専門書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>の店員にして、この書店が半ば冗談で公安委員会に届出をした<白熊探偵社>に所属する。ただひとりの調査員でもある。
いつもながら書店のアルバイトで糊口を凌いでいる葉村に入る数少ない依頼、はじめはラクな依頼のはずだったが、どんどん深みにはまり、身体をはった悲惨な?調査になっていく。そんな葉村に拍手を送るたくさんの読者、わたしもそのひとり。今月からはじまるドラマ10(NHK1月24日スタート)「ハムラアキラ~世界で最も不運な短~」主演:シシド・カフカ、こちらも期待したい・・・
殺人鬼がもう一人 [book] [若竹七海]
連作短編集
主人公は都心まで一時間半のさびれたベッドタウン?の辛夷ヶ丘署、場末の暇な所轄、の生活安全課捜査員、砂井三琴、三白眼の178センチの大女。
基本のどかな町で事件は少ない。週のうち四日は定時に帰れる。二十年前に発生した「辛夷ヶ丘連続殺人事件」について短い記述があるだけ。そんな町でなにかの祟りか、嫌がらせか、放火殺人、空き巣被害・・・てんてこ舞いの辛夷ヶ丘署。
キーワードは「素敵な不労所得」、証拠の当たり馬券を換金したり、5%の手数料を頂戴したり・・・悪徳警官?ぶりが愉しい!?
短編の名手だけあって、最後に書きおろしの20年前の「辛夷ヶ丘連続殺人事件」、表題の「殺人鬼がもう一人」、を持ってきて締める構成もいいし、ブラックな捻りもいい!
それよりなにより三琴がかすんでしまう?一癖も二癖もありそうなアクの強い住人たちがいい!
脂の乗っている若竹七海の最新刊、充分に愉しめました。
錆びた滑車 [book] [若竹七海]
葉村晶シリーズ第六弾
今回の下請け仕事は老女、石和梅子、の行確、訪れたアパートでふたりの老女、もうひとりは青沼ミツエ、の喧嘩に巻き込まれ、例によって病院に担ぎ込まれる。
住みなれたシェアハウスの建て替えのため、部屋を探していた葉村、青沼ミツエの面倒をみる代わりにアパートに仮住まいさせてもらうことに・・・下請け仕事の続きと一石二鳥の申し出に乗る。
アパートにはミツエの孫ヒロトも住んでいた。数カ月前、父親と一緒に交通事故に会い、父親は死亡、ヒロトは重傷を負った。そのヒロトがなぜ父親と一緒に事故現場にいたのか調査してほしいと葉村に頼む。
数日後、アパートが火事になり、ヒロトとミツエが死んでしまう。
探偵料をもらったわけではないがヒロミとの約束を果たすため調査に乗り出す葉村。盛りだくさんの伏線をドタバタ調査?で拾っていく姿に熱い拍手!
御子柴くんの甘味と捜査 [book] [若竹七海]
シリーズ第一弾
御子柴将は長野県警松本警察署所属の警察官、目下、連絡調整役として警視庁捜査共助課に出向中の身の上。そもそも実家は調布、大学では山岳部、その経験を生かし山岳遭難救助隊に入りたいばかりに長野県警に奉職という経歴をもつ・・・
著者のシリーズらしく次々に事件に巻き込まれる御子柴くん。葉村晶シリーズ第一作「プレゼント」に登場した長野県警の小林警部補、御子柴くんの上司、から変なこと思いついちゃったと、ご教示を賜り?事件が解決するという連作短編集。
小林警部補が「アームチェア・ディテクティブ」の役割を果たしています。
若竹ファンとしては一応手にしておく一冊かな!?
御子柴くんと遠距離バディ [book] [若竹七海]
シリーズ第二弾
お得意の連作短編集。暮れも押し詰まってから次々に事件の応援に独身だからと言って駆り出される御子柴くんと竹花刑事、そんなか御子柴くんが凶刃に襲われる。
療養後、意に反して長野県警に連れ戻され、閑職に追いやられてしまう御子柴くん。御子柴くんにも落ち度?があったということで・・・
東京と長野で別々の事件を追うふたりだが、いつしかコンビ?を組む・・・遠距離バディとは警視庁でコンビを組んでいた竹花刑事のこと。
形式美?を意識した構成、竹花刑事の追う事件とどういうわけか御子柴くんの追うことがシンクロする。すべての作品がそういう構成で描かれている摩訶不思議な一冊。それに加えて芋づる式?な展開、次から次に事件を釣り上げてしまう、にもびっくり!
最初は少々戸惑いましたが慣れてしまえばそれもなんのその。若竹ワールドを愉しめました!
暗い越流 [book] [若竹七海]
若竹七海/光文社/お薦め度 ★★★★
名手による短編集
五編収録。その内二編が葉村晶もの、ファンとしてはうれしい限りです。
表題作、「暗い越流」、五人を殺した死刑囚宛てに弁護士に届いたファンレター?
弁護士は知り合いの編集長に相談、編集長は「私」なら調べてくれるはず、と推薦され、記事にしてもいいということなので調査にあたることに・・・
差出人の女性は5年前に失踪していることがわかる。
ファンレターは誰が書いたものなのか?その意図することろは?
流石「短編の名手」という一冊!
静かな炎天 [book] [若竹七海]
若竹七海/文藝春秋/お薦め度 ★★★★
女探偵・葉村晶シリーズ第五弾
いつもいつもけがで入院するはめになる葉村、今回は四十肩!
古本屋の2階に事務所?を構え、古本屋でアルバイトをしながらの探偵稼業。何とも素人探偵みたいだが、熱心な調査ぶりというか葉村の心情がついつい依頼事項の範ちゅうを超えてしまうことがしばしば・・・
古本屋のイベント開催が題材のなかに度々登場、今回は巻末にご丁寧に著者、著作の頁まで用意したサービスぶり。ミステリーファンの心もくすぐろうという趣向!?
ユーモアと適度な毒気がブレンドされた秀作シリーズ。読まなきゃ損々!!!
プレゼント [book] [若竹七海]
若竹七海/中央公論社/お薦め度 ★★★★
葉村晶シリーズ第一弾
葉村晶と小林警部補の連作短編集。
長谷川探偵調査所の所長曰く「葉村は仕事を変えるのが趣味のような娘」、掃除屋だったり、電話相談受けだったり、興信所だったり・・・
「トラブルメーカー」のなかで以後のシリーズの骨格が明らかになる。トラブルのほうが葉村を慕ってやってくる。
長谷川所長はこうも言う「この仕事を始めて10年、一度も殺されかかったことなどないし、殺人事件に関わったことなんかまったなかった。ところが葉村ときたら、そんなこと、しょっちゅう」。
物語の完成度としてはもうひとつですが、本シリーズの原点はよーくわかりました。これからも期待しています。
ぼくのミステリな日常 [book] [若竹七海]
若竹七海/東京創元社/お薦め度 ★★★★
1991年刊行のデビュー作
社内報の編集者となった若竹七海、先輩、佐竹に短編作家になってほしい旨を伝えるが断られる。そこは先輩後輩の仲、匿名作家?を紹介され、連載が始まる。
タイトルは「匿名作家による連作短編小説」、4月から翌年3月までの12回。
読み進むにつれ、なかなかの短篇の名手ということがわかる。しかも「ちょっと長めの編集後記」では12の話をお題目に1編、更に「配達された最後の手紙」で最後のスナップをきかせるサービス精神。とても新人とは思えぬ構成力。大器の片りんをうかがわせるデビュー作です。
次は葉村晶シリーズの第一弾「プレゼント」を手にする予定・・・