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死神の棋譜 [book] [奥泉光]

sample1.jpg奥泉光/新潮社/お薦め度 ★★★★

将棋ミステリー

プロ棋士になれなかった、奨励会で四段になれなかった、年の離れた将棋ライターが二人、天谷と北沢、が新宿で呑みながら話し込む。発端は北沢の同期が持ち込んだ矢文、そこには図式、詰将棋、が書かれていた。

天谷があの図式を見るのは二度目、22年前に奨励会でしのぎを削っていた男が同様の矢文をもっていた、と。その図式は不詰めだった。裏には「詰まし得た者は棋道会へ馳せ参ぜよ」と書かれていた。

棋道会とは別名、魔道会、北海道に本拠を持つ団体で、金剛龍神教なる新興宗教の創設者と係わりがあるといわれていた。

北沢の同期も図式と一緒に姿を消した。天谷の話をなぞるように北海道へ向かう北沢。その話に同期の妹弟子、女流棋士、が加わり、更なる深堀りが・・・

北沢と女流棋士が金剛龍神会の神殿があったとされる廃坑道で迷い、北沢が見た?妄想的な世界と女流棋士が見つけた現実、同期の死体。

肝は決着のつけ方、妄想的な世界はカフカの虫になった男の話・・・殺人事件はミステリー・・・芥川賞作家らしい一冊。

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雪の段 [book] [奥泉光]

sample1.jpg奥泉光/中央公論新社/お薦め度 ★★★★

2019年版「このミス」国内編七位

昭和十年、岡田内閣は貴族院で美濃部達吉の天皇機関説が反国民的として排撃されると、これに同調して統治権の主体が天皇にあるという国体明微声明を出し、思想統制はいちだんときびしくなった(天皇機関説事件)。

そんな折り、天皇機関説を唱える帝大教授の息女と皇道派の士官が青木が原の樹海で遺体で発見される。「情死」に疑問を持つ女子学生の親友で伯爵令嬢の笹宮惟佐子は、幼いころの「おあいてさん」だった女性カメラマン、牧村千代子に協力を求める。

仙台の消印のハガキを頼りに、新聞記者、蔵原、と一緒に調査を開始する千代子。

惟佐子の前にあらわれる謎のドイツ人ピアニスト、革命を語る陸軍士官、謎の密偵、・・・ふたりの情死に続いて、ピアニストが亡くなり、真実の断片を垣間見た?団子屋が殺され、密偵は行方知れず・・・調査は混迷を極める。

途中までこの流れで進むのかと思いきや、話が行ったり来たりと蛇行、そのうち荒唐無稽な話に膨れ上がっていく。ドイツの組織が・・・「神人」が・・・血筋が・・・霊視が・・・

昭和十一年、「二・二六事件」に話は続くのだが、イマイチすっきりしない。重層的なプロットは理解出来るが、すべてお見通し的な惟佐子とパズルのピースを拾い集める千代子、1+1=2じゃなくて、いきなり3になったり、4になったりと話が飛躍、読み手を惑わす。

期待したものとちょっと違う一冊!?

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グランド・ミステリー [book] [奥泉光]

sample226.JPG奥泉光/角川書店/お薦め度 ★★★★★

1941年12月8日、「真珠湾攻撃」の最中、空母・蒼龍からこつ然と消えた川崎整備兵。真珠湾への出撃を終え、着艦直後、謎の服毒死を遂げる榊原大尉。

伊二十四号潜水艦で起きた「盗まれた手紙」事件。

この三つの事件と太平洋戦争がシンクロし物語は進行する。

伊二十四号潜水艦先任将校だった加多瀬は、真珠湾攻撃から帰国したあと、友人だった榊原の未亡人を見舞い、事件の真相を探りはじめる。

真珠湾攻撃、ミッドウェー、ソロモン、硫黄島。東京(1942年)、東京(1943年)、鎌倉。戦地と本土を交互に様々なジャンルの小説が顔をのぞかせる。大岡昇平の戦記小説だったり、中西輝政の太平洋戦争史実だったり、宮部みゆきの「蒲生邸殺人事件」だったり・・・サービス満点の小説に仕上がっています。

ミヤベの「蒲生邸・・・」といったSF的要素が本書をよりスパイシーにしています。それも並のスパイシーではなく、ホットスパーシーに。だからグランド・ミステリーになったのでしょうか!?

ハズレはありません。

2001/09



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シューマンの指 [book] [奥泉光]

sample1.jpg奥泉光/講談社/お薦め度 ★★★★

音楽ミステリー

JAZZプレーヤーである作者が、シューマンを批評しながら、シューマンの曲を解釈しながら殺人事件が起きるというプロット。

捻りのきいた?奇想な?結末はなかなかのものだが、シューマンの批評、音楽の解釈に耐えられるかが一番のポイント!?

シューマンの音楽に傾倒していく天才ピアニスト・永嶺修人。偶然に音楽室から聞こえる修人の演奏、それが終わると同時に悲鳴が聞こえ、女子高生が殺害される。未解決のまま30年が経ち、指を切断した修人の演奏を聴いたという手紙が舞い込む。

2010年、「このミス・・・」国内篇第5位の「幻想小説」。


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桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 [book] [奥泉光]

sample7.jpg奥泉光/文藝春秋/お薦め度 ★★★★

シリーズ第二弾

「モーダルな事象」に続く第二弾だが別物の本書・・・敷島学園麗華女子短期大学、レータン、の助教授から「たらちね国際大学」の准教授へ。自虐ネタは相も変わらずだが、長編から連作短編に。これが大きな成功要因。

文芸部顧問になったクワコーに降りかかる「ささいな事件」、それを解き明かす文芸部員のひとり、ホームレス女子学生、神野仁美ことジンジン。

ウダウダ状態は前作と同様だが、連作短編なのでささいな事件は一応の解決を見る。続きを読みたいかというと「?」


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モーダルな事象 [book] [奥泉光]

sample1.jpg奥泉光/文藝春秋/お薦め度 ★★★★

桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活

「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」の前にシリーズ第一弾?の本書を手にする。第二弾?の准教授の帯にはユーモア・ミステリーとあったので、東川篤哉/「謎解きはディナーのあとで」風なのかと思いきや、ホラー、オカルト、ミステリー、SF・・・盛りだくさんな作品!

ある童話作家の遺稿の解説を頼まれるクワコウ。しかも遺稿を発見したことにして・・・意に反してベストセラーとなるが、編集者が次々と殺される。

事件の解明に乗り出すのはクワコウではなく、ジャズシンガー兼ライターの北川アキと元夫の諸橋倫敦。なんか変だよね・・・

日本文学、アトランティスのコイン、ロンギヌス物質、新興宗教、製薬会社、古物商・・・いろいろ入り混じったストーリーにホラー的な妄想、幻想が加わり、どこがスタイリッシュな生活なのかと疑ってしまう展開。

冗談とも本気とも思える最後の頁。ホームレスとなったクワコウ、最新刊ではどうやって准教授に返り咲いたのだろうか?


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