警官の血 [book] [佐々木譲]
佐々木譲/新潮社/お薦め度 ★★★★
親子三代にわたる「警官の血」
安城清二、安城民雄、安城和也。
安城清二、戦後まもなく警察官となる。上野警察署で幾多の事件に遭遇、念願の天王寺駐在所所長に。在職中のある夜、跨線橋から転落死する。
安城民雄、父の同僚たちの支援を受けながら、警察官の道を選ぶ。学力の優秀さをかわれ官費で大学へ。その見返りは北大過激派内への潜入操作。精神を病むことになるが、制服警官となり天王寺駐在所へ。父の遺品の手帳、ホイッスル。父の死の真実に近づこうとした矢先、銃弾に倒れる。
安城和也、新人として配属された捜査四課、マル暴。そこで待つ特命は先輩刑事のスパイ。警察官人生の中でたどり着いた祖父、父の死の真実とは・・・
帝銀事件、赤軍派、佐藤訪米、大菩薩事件・・・それぞれの時代背景を踏まえながら物語は進行する。上下巻の大作だが、一気に読ませる。佐々木譲の警察官小説の集大成!
佐々木譲の警察小説の集大成とも言うべき大作「警官の血」の紹介をされていますので、簡単にコメントしたいと思います。
親子三代続けて警官となる物語と言えば、スチュワート・ウッズの「警察署長」という作品を思い出しますね。
この作品は単なるミステリではなく、戦後から現代までの上野公園周辺の移り変わりの様子をたどる、裏日本史という位置づけの作品だと思います。
1代目は戦後の混乱期の中で、清二が派出所勤務を黙々と行います。
2代目の時期は、学生闘争の盛んな時期で、父を目指して警察官となった民雄が、その闘争に大きな役割を果たすことになります。
3代目の和也が働く頃は、完全に近代化した都市の中で、同じ警官の汚職事件を扱うことになります。
ミステリ的な内容としては、1代目が関わった事件を、2代目3代目が追っていくということになるのですが、その真犯人とか真相に重きが置かれるわけではないんですね。
この作品で重要なのは、そうした3代続けて警官を続けてきた者達の警察官という仕事に対する矜持が、最終的に強く描かれていることだと思います。
まさに、タイトルである「警官の血」というものに相応しい内容であったと思います。
従来の警察小説とは、また一味違った印象を残す大河小説でしたね。
by トモ (2023-05-23 09:01)