囁く谺(こだま) [book] [ミネット・ウォルターズ]
ミネット・ウォルターズ/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆
粛々とした筆の運び
ウォルターズの作品は1992年の「氷の家」以来、ほぼ一年に一冊のペースで刊行されている。本書は1997年刊行の長編第五作にあたる。
高級住宅街にある民家のガレージで、ホームレスの男が死んでいるのが発見される。死因は餓死。
その出来事は、マスコミの関心を少なからずかきたてた。
警察に指紋がビリー・ブレイクの名で記録されていたのも、窃盗で何度か捕まったことがあったからだ。当時の警察は年齢を65歳と記録しているが、病理学者の鑑定では45歳。
この風変わりな事件にミセス・パウエルは、ビリーが死んだのが彼女の家のガレージだったという点で関わっているだけだった。ビリーのことは、マスコミの騒ぎがおさまり自宅に戻ってからずっと心にひっかかっていたので火葬の費用負担を申し出た。
物語は唐突に「二十一世紀の未解決事件」なる書物から二つの失踪事件をとりあげ、読者の戸惑いを誘う。
それから六ヵ月後、ミセス・パウエルのところに、雑誌ストリートの記者だという男から電話がかかってきた。ビリー・ブレイクのことでインタヴューさせてもらえないかと。男はマイケル・ディーコンと名を名乗った。
なぜ彼女はこれほどビリーの餓死に興味を示すのか?マイケルはホームレスの素性を調べ始まる。
落ち着いた語り口。しっかりした構成力。”ミステリーの新女王”は健在なり!
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