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ミン・スーが犯した幾千もの罪 [book] [~'23海外編]

sample1.jpgトム・リン/集英社/お薦め度 ★★★★

カーネギー賞受賞作

200人は殺した中国系アメリカ人の殺し屋、ミン・スー、復讐しなければならないリストにはあと五名、セントラル・パシフィック鉄道の東端から妻?の待つカリフォルニア州サクラメントまで、予知能力を持つ老人、予言者、に導かれ西を目指す。

その途中で奇術ショーの一座に巡り合い、リノまで用心棒兼道案内人を務めることになる。一座は特殊能力?を持つ、火をつけても燃えない炎女、人の記憶を消せるナヴァホ族、テレパシーを使える少年、刺青の異教徒と座長の六人・・・

鉄道を使えばいいものの、懸賞金がかけられているミン・スイー、鉄道沿いの安全な道を選びながら、馬と馬車で進む。その途中で寄り道をし、リストからひとり、ふたりと削除していく。

奇術ショーの一座の面々との交流、ギャング一味との攻防戦、予言者の導き、シエラ・ネバダ越え、心通わす?クーガーの出現・・・艱難辛苦の末、サクラメントにたどり着くミン・スー、そこで待っていたものはあまりにも悲しいものだった・・・

何て言う物語だ!



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軋み [book] [~'23海外編]

sample1.jpgエヴァ・ビョルク・アイイスドッティル/小学館/お薦め度 ★★★★

CWA賞新人賞受賞作

レイキャヴィーク警察を辞め故郷のアークラネスに戻ったエルマは地元警察に職を得たる。レイキャヴィークと違い人口7000人の魚港町、大した事件は起きないはずだった・・・

勤務早々、観光名所の灯台付近の海で不審死体が発見される。被害者はエリーサベトという女性パイロット、幼年期をアークラネスで過ごしていた・・・

現在進行形の捜査とエリーサベトの幼年期が交互に語られる。

一種の村社会、お父さんの名前は?お母さんの名前は?みんながみんなを知っている。エルマも然り、エリーサベトも然り・・・ただ、エリーサベトはアークラネスを嫌い、避けていた。それがなぜアークラネスで殺されたのか?

血のつながりが濃いがゆえに事件は混とんとする。アイスランドが色濃く反映されたミステリー!?わたし的には好きだな。


タグ:CWA賞
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真珠湾の冬 [book] [~'23海外編]

sample5.jpgジェイムズ・ケストレル/早川書房/お薦め度 ★★★★☆

エドガー賞最優秀長編賞受賞作

1941年、太平洋戦争前夜、ホノルル、白人男性と日本人女性が惨殺された怪奇な事件が起きる。ホノルル警察の刑事、マクレディが捜査にあたる。彼はハワイ人ではなく、大卒、陸軍あがり・・・

捜査に新たな進展が・・・ウェーク島で酷似の事件が発生する。犯人は香港方面に向かったと思われた。戦局が危うい中、出張を命じられ、ウェーク島、香港に赴くマクレディ。

香港で犯人の罠にかかり、警察に逮捕され、12月7日、開戦を迎える。日本軍の攻撃で陥落する香港、マクレディは捕虜となり日本へ・・・

日本に連れて行かれたことには外務省第一秘書管、高橋の思惑が働いていた。これ以上は書けませんが、戦後、事件の捜査を再開するマクレディが辿る数奇な運命は読み応えあり・・・スケールの大きなエドガー賞受賞作。



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われら闇より天を見る [book] [~'23海外編]

sample1.jpgクリス・ウィタカー/早川書房/お薦め度 ★★★★☆

CWA賞ゴールド・ダガー受賞作

30年前に起きた忌まわしい事件、仲良し四人組、当時15歳、スター、ウォーカー、ヴィンセント、マーサ、スターの妹リリーを誤って殺したヴィンセント、裁判で証言をしたウォーカー、ウォーカーの恋人マーサ。

ヴィンセントは本来であれば少年院送りが相当だと思われていたが、大人と一緒の刑務所に送られた。そこで殺人事件を起こし、10年+20年の刑を務めていた。

一方、警察署長となったウォーカー、裁判で証言したことを今でも悔いている。

妹を殺されたスターは13歳の娘ダッチェスと弟ロビンの三人暮らし、酒、薬に溺れる生活を続け、ダッチェスがロビンの母親代わりを務めていた。 

刑期を終えたヴィンセントが町へ帰ってくる。

ヴィンセント、スター一家を気遣うウォーク。そんな折り、スターが殺され、現場にいたヴィンセントが通報、ウォークが駆け付ける。ヴィンセントが殺人罪で起訴される。刑事弁護士でないウォークの元恋人マーサがヴィンセント指名され、ウォークが協力、本来であれば検察側につくべきなのに、一緒に裁判に臨む。

ダッチェスは事件当日、母親が暴行を受けていたことの仕返し?にバーに火を放ったことで、保険金が必要な不動産屋から追われる身となる。

ダッチェスとロビンはスターの父親の住むモンタナへカリフォルニアから移り住むが、不動産屋の恐怖がいつも付きまとう・・・

モンタナを追われるダッチェスとロビン、ヴィンセントを救うため奔走するウォークとマーサ、苛烈な運命に翻弄されながらたどり着いた真実とは!?

ミステリーの範疇を大きく超えた秀逸な作品です。


タグ:CWA賞
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嘘は校舎のいたるところに [book] [~'23海外編]

sample1.jpgハリエット・タイス/早川書房/お薦め度 ★★★★

サスペンスなのだが!?

一方的に夫に追い出される形でアメリカからイギリスに移住してきたセイディと娘のロビン。母の遺言でロビンをセイディの嫌っていた母校に編入させることで幾ばくかのお金がおりるようになっていた。

刑事専門の法廷弁護士だったセイディ。何とか生計を維持するため親友の事務弁護士の計らいで補助弁護士の職を得る・・・

学校では新入りのセイディに対してPTA会長をはじめ取り巻きがプレッシャー?をかける。ロビンはロビンで仲間はずれにされ孤立する。


一方、補助弁護士の仕事は、教師が性犯罪者として教え子から告発された裁判の証拠集め。


学校、家庭内で奮闘するセイディとロビン、裁判の補助で勘を取り戻すセイディ。少しづつ好転したかに見えた公私だったが・・・


閉鎖的な学校を舞台にしたありがちな?サスペンス。


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スクイズ・プレー [book] [~'23海外編]

sample1.jpgポール・ベンジャミン/新潮社/お薦め度 ★★★★☆

ハードボイルド

純文学作家ポール・オースターがポール・ベンジャミンの名前で発表した幻?のデビュー長編作にして正統派のハードボイルド。

私立探偵マックスのもとへ元大リーガーのチャップマン、昨年までニューヨーク・ヤンキースのクローザーと同姓、が事件の依頼に訪れる。チャップマンはその絶頂期交通事故で片脚を失い、今は次期上院議員候補と目されている。

そんな彼のもとへ脅迫状が・・・かつての同僚、検事、からの紹介でもあり依頼を受けることにする。

チャンドラーのにおいぷんぷんのハードボイルド、私立探偵もの、軽妙な軽口、運命の女?・・・どれをとっても王道。いい作品に出合いました。



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魔王の島 [book] [~'23海外編]

sample1.jpgジェローム・ルブリ/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆

サイコ・サスペンス

一度も会ったことのない祖母の遺品整理に孤島に向かうサンドリーヌ、戦後子供キャンプの職員として働き始めた人たちだけが住む不吉な島?・・・

祖母の同僚だった女性から話を聞くことが出来たが、心臓発作を起こし急死。彼女が残した言葉、「サンドリーヌ、あなたはこの島にいてはいけない」。

島から抜け出し?海岸で発見されるサンドリーヌ、彼女が警部と精神科医に話した真実の一部は少女時代に拉致され、地下室に監禁されたこと・・・

再び島へ。祖母の話、三匹の子ぶた、初めは、わらで避難所をつくったけれど、たちまち吹き飛ばされてしまった。あの島の話のなかにいても安全じゃなくて、すぐに逃げないといけなくなった。木でつくったふたつ目の避難所も、また壊されようとしている。今度も警部が疑っているから。

三つめの避難所のこの島まで、あなたを探しに来ることは誰にも出来ない。オオカミだって、煉瓦とコンクリートでできた家は壊せなかったものね・・・真実を祖母に語るサンドリーヌ。

この物語のキーワードは<避難所>、避難所で起こる様々なことが重層的にリンク?真実が見えないまま、誰が誰を欺こうとしているのか?驚愕の結末は反則技!?

ネタばれになるので思うように書けませんが、ピエール・ルメートルの「その女アレックス」を彷彿させる掘り出し物の一冊でした。



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ギャンブラーが多すぎる [book] [~'23海外編]

sample1.jpgドナルド・E・ウェストレイク/新潮社/お薦め度 ★★★★

幻の逸品!?

タクシー運転手のチェット、大のギャンブル好き、競馬、ナンバー賭博、ポーカー・・・、たまたま乗せた客から穴馬情報を得、それに乗ることに・・・

まんまと穴を当て930ドル、配当ー借り、を受け取りにノミ屋のトミーを訪ねるが、彼は撃ち殺されていた。

第一発見者のチェットは容疑者にされたうえ、敵対するギャング組織から追われるはめに。

そんな時、美女を乗せたチェット、銃を突きつけられ尋問?される。美女はノミ屋のトミーの妹アビー、チェットは930ドルを取り戻すため、アビーは兄を殺した犯人を捕まえるため、戦線協定を結ぶ。

敵対する両陣営の鉢合わせ、そこからの脱出劇、チェットとアビーのロマンス?、全員集合の犯人当て・・・果たして幻の逸品なのか!?


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フォーリングー墜落ー [book] [~'23海外編]

sample1.jpgT・J・ニューマン/早川書房/お薦め度 ★★★★

ハイジャック・スリラー

三人の主人公、コースター航空のパイロット、ビル・ホフマン、その妻キャリー、フライトアテンダントのジョー。

物語はインターネットの修理に訪れた男がキャリーに銃口を向ける。ロサンゼルス発ニューヨーク行きの機長ビルのもとに一通のメールが届く。添付の画像には自爆ベストを着せられたキャリーの姿が・・・

犯人の要求は飛行機を墜落させること。選択を迫られるビル、家族の命、息子と娘も拉致された、か乗客の命か・・・ビルの出した答えは飛行機を墜落させるつもりはないし、家族を殺させるつもりもない、と。

ビルは永年一緒に仕事をしてきたジョーに事件の経緯を知らせる。ジョーはいとこのFBI捜査官に連絡、ビルの家族の救出を頼む。

コックピットでのビルと犯人のやり取り、オンラインでのキャリーと家族と犯人のやりとり、コックピットから隔てられた客室でのジョーと乗客とのやり取り。

3つの場面を繋ぎながらハリウッド的?な展開が進む。色あせた題材、ハイジャック、ではあるが、一気読みさせるハイジャック・スリラー。


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ボンベイのシャーロック [book] [~'23海外編]

sample5.jpgネヴ・マーチ/早川書房/お薦め度 ★★★★

歴史ミステリー+冒険小説

主人公、ジェイムズ(ジム)・アグニホトリ大尉は病院で三十歳になった。負傷から回復という、時間のかかる、飽き飽きするような仕事?をこなすうち、ある記事が頭から離れなくなった。

それは二人の若い女性が昼日中に大学の時計塔から転落死した事件だった。

新聞の続報は「世紀の裁判、悪党どもは無罪釈放」、つまり、法廷の判断は自殺だった。それに対して被害者の夫であり兄であるアディ・フラムジーが編集部宛に書いた手紙に心を揺さぶられ、事件の真相を知りたいと願う。

退院後、新聞社に就職、記者として事件を調べようとする過程で取材でアンディと話すうち、探偵としてアンディに雇われることになる。

時代はイギリスがインドの統治に乗り出したころ、治安の悪い地方でシャーロック・ホームズばりの変装で目くらまし、情報を収集するジム、やがて思ってもみない大冒険に巻き込まれることになる。

歴史ミステリー+冒険小説+恋愛小説、わたし的には好きな一冊。




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