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ザ・フォックス [book] [~'23海外編]

sample1.jpgフレデリック・フォーサイス/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★

国際謀略小説

アメリカの国家安全保障局の鉄壁のコンピューターがハッキングされた。頭がよくて人をだますのが得意な狐を思わせることから”フォックス”と呼ばれた。フォックスの正体は18歳のひきこもりの少年だった。

アメリカは犯人引き渡しをイギリス政府に要求するが、フォックスはアスペルがー症候群を患っており、アメリカに引き渡されたら生きてはいけない。そこでイギリス首相の私的顧問サー・エイドリアン・ウェストンが一計を案じる。

こうして一大プロジェクト<トロイ作戦>、ハッキングによるサイバー戦、が始動する。そこで得られた成果をアメリカにも共有するかわりにフォックスの身柄引き渡しを免除してもらうことに・・・

トロイ作戦は、対ロシア、対イラン、対北朝鮮、対<頭領>、プーチンとは言えない?、対ハメネイ師、対金正恩、へサイバー攻撃を仕掛けて行く。そのプロセスはさすがフレデリック・フォーサイスと言わざるを得ない。

ロシアのウクライナ侵略に間接的にかかわるトルコのパイプラインの件は四年前の刊行とはとても思えないし、金正恩の末路をチャウシェスクになぞらえるとは大胆不敵!?

久々のフレデリック・フォーサイスに大満足。



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塩の湿地に消えゆく前に [book] [~'23海外編]

sample5.jpgケイトリン・マレン/早川書房/お薦め度 ★★★★

MWA賞最優秀新人賞受賞作

謎解きのない?サスペンス

ふたりの女の死体が<サンセット・モーテル>のすぐ裏の湿地に、二本の棒線のように並んでいる・・・八週間後には、さらに女が五人増えることになる・・・七人の女、七つの警告。

こんな書き出しで始まる・・・

ボードウォーク沿いで占いの店を出している少女クララ、ある日、行方不明の少女の叔父が来店、少女の話を始める。サイキック、霊能者、じゃなくても少女の身に何か悪いことが起こったことは明白だった。

それ以来クララは不気味なビジョンに襲われるようになる。それらは占いに来た女性客や、失踪中の女性に関係があると思われ、さらにビジョンは強くなる。

ニューヨークからアトランティックシティに逃げ帰ってきたリリー、少しお金を貯めようと閑散としたカジノのスパで働き始める。カジノに出禁のクララと初対面でブレスレットを盗られてしまうが、クララは初対面にもかかわらず、リリーが自分を信じていると確信、助けを求める。

リリーが抱える大きな傷が、クララが一緒に暮らす叔母に促されるまま一線を越えることが結果としてふたりを犯人に接近させる。ふたりともジェーン・ドゥになってしまうのか?

「塩の湿地に消えゆく前に」何が、誰に起こったのか?死者からの声を書き記した心理サスペンス。




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匿名作家は二人もいらない [book] [~'23海外編]

sample1.jpgアレキサンドリア・アンドリューズ/早川書房/お薦め度 ★★★★

サスペンス・ミステリー

作家志望の編集アシスタント、フローレンス・ダウロ、フロリダとニューヨークのギャップに圧倒され?何も書けなくなったいた。しかも上司との良からぬ関係を持つに至り、危うい行動に出てしまったことで出版社を首に・・・

そんな窮地を救ってくれたのはベストセラーの匿名作家、モード・ディクソン、何とフローレンスをアシスタントに採用してくれたのだ。都会を離れ隠遁生活を送っているモードの家に住み込むことになった。

フローレンスの仕事は手書き原稿のタイプ、調べ物、雑用、メールの返信代行・・・特にモードの手書き原稿は乱筆のため判読不能の部分が多く、フローレンスの作家志望の拡大解釈がどんどんエスカレートしていく。

そんな折り、モードの急な思い立ち?の取材旅行、モロッコ、に同行、フローレンスが起こした自動車事故、モードを乗せた車もろとも海にダイブ、がもとで彼女の作家志望の野望が頭を持ち上げる。

フローレンスとモードの駆け引きが本書の肝、なんとも恐ろしい?心理戦、有利になったり不利になったり目まぐるしく変わるサイコロの目。一気読みのサスペンス・ミステリーに仕上がっている。



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平凡すぎて殺される [book] [~'23海外編]

sample1.jpgクイーム・マクドネル/東京創元社/お薦め度 ★★★★

ダブリン・トリロジー(三部作)第一弾

顔のパーツは各カテゴリーでもっともよくあるタイプ、まったくもって平凡な青年ポール。訳あって入院中の老人を慰問?する”おばあちゃんのなだめ屋”を務めている。

ある日、慰問した老人に誰かと間違われて刺されてしまう。老人はガンを患っていてポールを刺したのち亡くなる。老人は元ギャング、三十年前に人質が誘拐犯と駆け落ちした事件?に関わっていた。

老人の最後に立ち会ったことで組織からあの手この手で狙われる羽目になるポール。

そんな彼に手を差し伸べる?看護師ブリジッドと天敵刑事バニー、三人で組織の秘密を暴きだす・・・

前半部分がスローな展開なのでかみ合わない会話が面白く響かない。しかし、怒涛の結末は圧巻。第二弾に期待したい。



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クライ・マッチョ [book] [~'23海外編]

sample1.jpgN.リチャード・ナッシュ/扶桑社/お薦め度 ★★★★☆

1975年の作品

クリント・イーストウッド監督&主演映画の原作

主人公はロデオスターのマイク・マイロ、38歳、落馬事故のあと雇い主、ハワード、から首を宣告される。その穴埋め?として、ハワードからメキシコで離婚した妻と住む息子、ラフォ、を誘拐してテキサスに連れて来たら5万ドルを払うという提案を受ける。

メキシコに向かうマイク、母親の口をついて出た言葉は「わたしの息子ラフォはとんでもない怪物なの!」。8,9歳の頃から、現在11歳、母親のもとを離れ、路地や賭博場で生きている、と。

闇の闘鶏場でラフォを見つけるマイク、警察のガサ入れに乗じラフォと対峙、ラフォは北行きを選択した。通じ合わないふたりの道中が始まる。

警察に追われる?ふたり、主要道路を避け、乾燥地帯や砂嵐のなかを進んだり、荒涼とした山々や田舎町をめぐる逃避行・・・田舎町で出逢う家族、老人がふたりの距離を近づける。

運命的な結末、どれをとってもクリント・イーストウッド的と言っていい。読了感爽やかな掘り出し物の一冊!


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ブルックリンの死 [book] [~'23海外編]

sample1.jpgアリッサ・コール/早川書房/お薦め度 ★★★★

エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞

離婚して実家のあるブルックリンに戻ったシドニー、黒人女性、は変貌する地元、都市再開発、富裕層、のブロック・パーティの催しで<褐色砂岩>の邸宅めぐりを企画する・・・

調査の手伝いに名乗りを上げたのは向かいの家に越して来たセオ、白人の男性、恋人?のキムと同居。

図書館で、近所の住民に、地元の<褐色砂岩>の邸宅について調べ、聞くうちに、親しい、古くからの住人が突然姿を消し、連絡が取れないことに気づく。何かおかしいことが起きているのだろうか!?

言葉にするとこういうことなのだが、文章を読み進むのが少々辛い前半。そこを我慢すれば、最優秀ペーパーバック賞の恩恵に預かれるはず。

都市再開発の陰謀を描いたスリラーなのだが、結末は「荒野の七人」、シドニーとセオ、的な西部劇?が待っている。前半と後半のギャップがエドガー賞なのか!?



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ハンマー・オブ・エデン [book] [~'23海外編]

sample134.JPGケン・フォレット/小学館/お薦め度 ★★★★☆

「これが私の最高傑作」エドガー賞受賞作家ケン・フォレット

事件の発端はダム建設によるヒッピーコミューンの明渡しだった。

何とかカリフォルニア州知事にダム建設を中止させるため、コミューンのリーダー・プリーストらはあることを思いつく。インターネットの掲示板に、四週間後に地震を起こすと知事に宣言する。平和を愛するグループが、やむにやまれず過激な手段に訴えるんだということで、「ハンマー・オブ・エデン(エデンの鉄槌)」と名乗った。

そのための準備は整っていた。プリーストらは地震波を起こすために必要なサイスミック・バイブレーター(地震波を起こすには三つの方法がある。地価爆発、重量物落下による衝撃、サイスミック・バイブレーター)をすでに手に入れていたし、地震学者の妻・メラニー、プリーストの愛人のひとり息子と一緒にコミューンで暮らしている、は地震学の修士号をもっていた。

一方、この事件を担当することになったのはFBI捜査官・ジュディ。上司と衝突したあげくにあてがわれた仕事だった。

この荒唐無稽なプロット。600ページ強にも及ぶボリューム。それをいとも簡単に読み進めさせる筆力。どれをとっても一級品のサスペンス・アクションである。

近頃のエンターテインメントに見られる銃器やマシーン、車、ハイテクなどはいっさい登場しない。そこには登場人物の人間性、追われる者、追う者との双方の知恵比べがストーリーを盛り上げる展開となっている。

2001/01


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女たちが死んだ街で [book] [~'23海外編]

sample5.jpgアイヴィ・ポコーダ/早川書房/お薦め度 ★★★★☆

MWA賞最優秀長編賞候補作

15年前、13人の女が喉を掻き切られた連続殺人、未解決のまま捜査は終了・・・かつての事件に酷似した殺人が起こる。被害者は前回同様セックスワーカーの女たち。

犯人は同一人物か?なぜ15年もたって?中断されていたのか?

連作短編集?のようなプロット、しかも6人の女たちの視点で・・・フィッシュフライ店を営むドリア、被害者のひとりが娘。ストリップクラブのダンサー、ジュリアナ。チビの刑事エシー。パフォーマンス・アーティストのマレラ。その母で教会の活動家のアケネ。15年前の事件の生き残りのフィーリア。

6人の繋がりは15年前の事件から直接、間接に影響を受けながらその後を過ごしている。しかもいろんな差別を受けながら・・・

差別を色濃く浮き彫りにする都市LA、LA物語と言ってもいいのかもしれない!?

一種独特雰囲気を持つミステリー、わたしは好きだな!




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ゲストリスト [book] [~'23海外編]

sample5.jpgルーシー・フォーリー/早川書房/お薦め度 ★★★★

孤島ミステリー!?

孤島で催される豪華な結婚式、花嫁はウェブ雑誌の創始者、花婿はサバイバル番組の主演スター、花嫁介添人、妹、花婿介添人代表、パブリックスクール同級生、花嫁の親友夫妻、結婚式を仕切るウェディング・プランナー、それぞれの視点で物語は進む。

祝福の嵐?の裏で蠢く思惑。花嫁宛の手紙ー花婿は自分を偽っている。詐欺師で嘘つきだ。あの男と結婚するなー、過去の遺恨、過去の秘密、姉妹の秘密・・・

婚礼の夜、事件が起こる。

暴風雨の孤島で起こる群像劇を現在、過去を交差させて描くサスペンス。前半の緩いテンポを切り抜ければ、後半は一気読み。ちょっと残念なのはすべての謎がクリア―になっていないこと。



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文学少女対数学少女 [book] [~'23海外編]

sample1.jpg陸秋槎/早川書房/お薦め度 ★★★★

本格ミステリ2022、第三位

表題通り、文学少女、陸秋槎、と孤高の天才、数学少女、韓采蘆が織りなす連作短編集。

犯人当て小説の欠点、あやまりを誰かに見てもらう必要に迫られる秋槎、普段誰も近づかない采蘆に自ら接近、ふたりの問答が始まる。

途中の面倒くさい?数学的考察は置いといて、どんどん読み進むべし。そうすれば華文青春ミステリ、百合小説、が見えてくる。

読了感爽やかな一冊でした。



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