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クライム [book] [お気に入り作家(国内)]

樋口明雄/角川春樹事務所/お薦め度★★★★

十八番の山岳シリーズ。
「狼は瞑らない」、「光の山脈」と私好みの作品だったので手にしました。

ハリウッド的なストーリー、主演はもちろんシルベスター・スタローン以外に考えられない!?

三国人マフィアの抗争で殉職した後輩刑事のため、執拗にホシを追い続けるはみだし刑事・尾方。一方、追われる側、三国人マフィアからもそうだが、刑事からも、の功刀(くぬぎ)。新宿を舞台にした逃走劇が繰り返される。

そんな折、功刀のもとへ新宿を離れる大きな仕事がはいる。南アルプスで消息を絶ったヘリ、20億円を積んでいた、の現場確認。今度は南アルプスを舞台に三者三様の追っ掛けごっこが始まる。山の経験を武器に一歩リードする功刀、精神力だけの素人、尾方、ヘリを使い一挙に差を詰める三国人マフィア。なんともハリウッド的、20億円を手中に収めるのはいったい誰なのか?

十八番のシリーズだけあって、安心してお薦めできる一冊!?


女信長 [book] [お気に入り作家(国内)]

佐藤賢一/毎日新聞社/お薦め度★★★★

「男だから、男だから、男だから・・・」
そうやって退路を立たれて、心を圧迫され続ければ、積極果敢に生きられるわけがない。止めが必ず幸せにしてほしいと、妻子にまで求められてしまうのだから、これでは失敗できるわけがない。

「女は違う」
自由だ、御長(女信長)は思う。誰かを守らなければならないという、心の枷がないからだ。逆に自分が守られたいと、横着に居直ることさえできるのだ。
(本文152ページより)

女だからこそできる。信長が女だったらこそできる。そんな発想の転換で書かれた一冊。著者一流の史実の辻褄合わせもバッチリと・・・

女を武器にする件はなかなかのもの。一歩間違えばポルノチックになってしまうところだが、しっかり計算されている。昨今、注目の「信長本」の中でも出色の出来ばえ!?


Op.ローズダスト [book] [お気に入り作家(国内)]

福井晴敏/文藝春秋/お薦め度★★★★

けっこう評価がわかれたみたい!? 前作「6ステイン」をもっともっとふくらました超大作。

「・・・いまの日本には古い言葉しかない。右翼とか左翼とか、タカ派とかハト派とか・・・。もうそういう分け方じゃ割り切れない時代になっているのに、結局どちらかに色分けされてしまう。お互いの古い言葉を使って主張しあうばかりで、問題は問題のまま、解決しないって。単に生まれそうになっても、根っ子の生えた古い言葉にからめとられてしまうから・・・」(本書324ページより)

主人公丹原と並河警部補の娘・恵理の会話に象徴される本書。福井流の骨太の会話。

どこかの雑誌に、映画に出来ないものを書いてやろうと思った、と載っていた。後半の大部分を占める戦闘シーン、なんともすごい!

「亡国のイージス」の映画化といい、本書の刊行といい、プロモーションルールを踏まえたマーケティング、文藝春秋の勝利でしょうか!?


終戦のローレライ[book] [お気に入り作家(国内)]

福井晴敏/講談社/お薦め度★★★★★

福井晴敏の太平洋戦争総括。

日本に対するふたつの憂い。ひとつは朝倉良橘、軍令部第一部第一課長、大佐、45歳。もうひとつは折笠征人、戦利潜水艦(伊507)乗務員、上等工作兵、17歳。

「分限をわきまえない企業活動、その下僕となって消費に踊らされる大衆・・・・。最低限の道徳も失った混沌が日本を支配する。唯一、それを律せられるのは、道徳観念を基本に置いた国民性だ。国家という総体が示し得る正義だ。その点、多民族国家の米国はぎりぎりの線を保っている。個々の自由と権利を謳いながら、開拓者精神、自治の美徳で相対の正義を語り、それを維持するための個の犠牲は英雄視される。日本人がこの強かさを手に入れ、個と全のよりよい協調関係を築くには、今ある幻を打ち砕かねばならん。拠って立つものを自らの手で壊し、自分の足で立つことから始める必要がある。新しい国民性を確立するための代償がいるんだよ。・・・つまり、国家としての切腹を断行せねばならんということだ。この国が迎えるべき終戦の方だよ」

「あんたたち大人が始めたくだらない戦争で、これ以上人が死ぬのはまっぴらだ・・・!あなた(朝倉大佐)の言っていることが正しいのかどうかはわからない。でもこれだけは言える。東京がなくなろうが、大本営が焼かれようが、その程度で人の心が変わるなんてことはあり得ない。あなたのやろうとしていることは、パウラ(ローレライ)を薬で白人にしようとしたナチスのバカな科学者と同じだ。頭でっかちで、自分の都合のいいようにしか物事を見ようとしない。自分が魂を売ったからって、他人もそうするって勝手に決め込んでいる偏屈な臆病者だ・・・清永だって、艇長だって、逃げなかった。最後まで恥ずかしくなく生きようとして、それで死んでいったんだぞ!辛いことや悲しいことを我慢して、これでいいのかなんてろくに考える暇もなくて、やれることをやって死ぬしかなかったんだぞ!それを無知だって見下げるのか!?そんなふうにしか生きられない大勢の人を殺して、国の将来のためだって言うのか!?冗談じゃない。そんな理由で清永を殺したのなら、おれはあんたを許さない。絶対に、許されないぞ・・・!」

映画の原作として依頼された作品。そのため視覚的にSFチックなローレライ(読んでのお楽しみ・・・)を登場させ物語を進行。道具立ては別にして、実に骨太な作品。怒涛の上下巻!


6ステイン [book] [お気に入り作家(国内)]

福井晴敏/講談社/お薦め度 ★★★★★

6つの染み(stain)

本来なら事件となることがらでも、市ヶ谷・防衛庁情報局が扱えば、それは単なる染み、ステインでしかない。その存在を大っぴらに出来ない闇の組織。そこで活動する工作員。彼らに送る鎮魂歌。

連作短篇ではないが、6編が微妙に絡み合う。巧い、旨い・・・のひと言。

「亡国のイージス」、「終戦のローレライ」・・・の根底に流れる著者の強い意志とは、ちょっと大げさかもしれないが「憂国」!?日本国を我々日本人の手で守る。日本人としてのアイデンティティーを確立する。わたしにはそういうように聞こえてしょうがない-佐伯啓思「市民とは誰か」/PHP研究所/第5章「祖国のために死ぬ」ということ、が脳裏をよぎる-

骨太作家が放つ巧みな短篇集。


光の山脈 [book] [お気に入り作家(国内)]

樋口明雄/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★☆

古い話で申し訳ありませんが、高倉健主演の「昭和残侠伝」シリーズ、健さんの「唐獅子牡丹」もよかったのですが、仁侠道を貫こうとする健さん、あくどいやり方で横槍を入れるあこぎな一派、不条理に耐えに耐える健さん、最後の最後で健さんの怒りが爆発、池部良と共に殴りこみに向かう。

何十回となくこのシリーズを見ているので、ついつい本書と「不条理」という言葉でオーバーラップしてしまった。

山の神に愛された男、「ロッタ」こと八田賢司。妻の亜季、猟犬のシオたちと共に、慎ましくひっそりと山の中で暮らしていた。そんな折、仕事で産廃の不法投棄現場に出くわす。新聞記者である兄にそのことを打ち明けたことからロッタの運命はあらぬ方向へと流されていく。

スクープ記事がもとでヤクザたちから狙われることになってしまう。兄、亜季、猟犬たちが不条理な暴力の標的となっていき、ロッタは武器を手に、ひとりで復讐に向かう。

不条理に耐えた主人公の復讐劇に涙してしまうのはわたしだけだろうか・・・


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