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内なる殺人者 [book] [ジム・トンプスン]

sample155.JPGジム・トンプスン/河出書房新社/お薦め度 ★★★★☆ 

最高傑作!?

「このミステリーがすごい!2001年度版」宝島社、海外編第一位作品、「ポップ1280」に続く復刊。1952年の作品。

「ポップ1280」の時にも書いたが癖になりそうな作品。セロニアス・モンク(ジャズ・ピアニスト)のタッチに酷似している。
独特の間の取り方、この間が心地よい・・・

主人公のルー・フォードは銃も棍棒も武器はいっさい携帯していない保安官補。町の実力者で建設業者のコンウェイ。

フォードは義兄がコンウェイに殺されたと確信し、その死がもとで父親はショック死したと恨みに思い、コンウェルに復讐心を抱く。そのチャンスは町から出て行くように勧告した売春婦を利用して復讐を果たすが、そのために嘘に嘘を重ね、殺人に殺人をかさねていくようになる。

フォードの中に巣食う悪の魂、つじつま合わせの嘘・行動・・・現代ならサイコサスペンスなのだろうが、50年代という時代、ゆっくりと流れた時代、が独特の新鮮な間を生みだし、それが再度、現代人に受けている要素ではないだろうか。

ノワール小説はもともとフランスのハードボイルドを指す言葉だったが、いつしか暗黒小説という風に訳されるようになった。その旗頭の一人がジム・トンプソンである。

1950代、60年代に著者の作品は集中している。アメリカ出身(オクラホマ州)の作家でありながら、自国ではなくフランスで高く評価された(その取り上げ方でノワール小説と言われようになる)。フランス人は次々に殺人を繰り返す悪の権化、アメリカの暴力、呪われた魂を描いたものが好みらしい・・・

わたしも好みなので、次なる復刊を期待したい。

2001/01

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わが母なるロージー [book] [ピエール・ルメートル]

sample1.jpgピエール・ルメートル/文藝春秋/お薦め度 ★★★★

カミーユ警部・シリーズ第3.5弾

パリで爆破事件が起きる。幸いにも死者はいなかった。事件直後、警察に出頭した青年は砲弾は7つ仕掛けました。まだ6つあります。毎日ひとつ爆発します、と・・・

要求は拘留されている母親と、警察留置になることが確実な自分の保釈。加えて、オーストラリアに行って暮らせるように新しいIDと500万ユーロ。国境を越えたら残りの砲弾の場所を教えます。

青年の真意を計りかねるカミーユ警部、青年の尋問がテロ対策本部とカミーユの所属する犯罪捜査部を行った来たり。母親は息子の恋人を殺し、息子は母親を救い出そうと爆弾テロを計画、この2点だけでも辻褄が合わない。

タイムリミット・サスペンス?カミーユ警部の下した策略とはいかなるものか?

結末ありき?そこに向かって逆算で物語が進められて来たような印象をもってしまう!?

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取るに足りない殺人 [book] [ジム・トンプスン]

sample90.jpgジム・トンプスン/扶桑社/お薦め度 ★★★★☆ 

pulp noir

なんと!本書は1949年の作品・・・

ジム・トンプスンとは、「ポップ1280」で2001年度版「このミス・・・」海外篇、ナンバー1に輝いた時からのお付き合い。「死ぬほどいい女」、「深夜のベルボーイ」、「アフター・ダーク」、「内なる殺人者」と扶桑社のお陰で・・・

「ゲッタウェイ」は、サム・ペキンパー監督、スティーブ・マックィーン、アリ・マグロー主演、ジム・トンプスンの原作、知ってましたか?

銀行強盗をしたマッコイは、ギャングに渡すはずの金を持って逃走。彼を追うギャングをかわしながら、マッコイは妻と共にメキシコをめざす。スリリングなチェイスが全編に渡って展開されるサム・ペキンパー監督の代表作。

清楚なアリ・マグローとカーチェイスが記憶に残っています。本書の書評と全然関係なかったですね!でも★★★★☆ですぞ!

これからも末永いお付き合いをお願いします。ジム・トンプスンさん!

2003/10

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レパード 闇にひそむ獣 [book] [ジョー・ネスボ]

sample1.jpgジョー・ネスボ/集英社/お薦め度 ★★★★

刑事ハリー・ホーレ・シリーズ第七弾

前作「スノーマン」、邦訳第一弾、で最愛のふたりを失くしたハリーは警察を休職し、香港で怠惰な生活を送っていた。そんなハリーを探しにオスロ警察から刑事カイアが使わされる。猟奇的な連続殺人事件にハリーの力が必要だと・・・

しかたなくオスロに戻るハリーの前に更なる犠牲者が現れる。

殺人が行われたという事実があるだけで、理由は明らかでない。そして主導権を握りたい中央捜査局の横やりで捜査は中止された。ハリーらの刑事捜査班は蚊帳の外に・・・

そんなことに怯むハリーではない。極秘に捜査を続け有力な容疑者を見つけ出すが、逮捕寸前でトンビに油揚げ、中央捜査局に、をさらわれてしまう。内通者が!?

香港、コンゴ、ルワンダとワールドワイドに、これで決まりと思いきやその先の先がある展開に感嘆・・・

ちょっと抒情的すぎるきらいがあるシリーズ第七弾、ハリー・ホーレから目が離せない。

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火の粉 [book] [雫井脩介]

sample158.jpg雫井脩介/幻冬舎/お薦め度 ★★★★☆ 

サイコ・ミステリーの時代は、とっくに終わっている。

誰しもがそう思っていたはず。しかし、「このミス・・・」をはじめ、何誌もが「飛蝗の農場/」ジェレミー・ドローンフィールドをベスト10に選んだことは記憶に新しい。

裁判で無実を勝ち取った被告人・武内真伍。偶然にも?元裁判官で現在は大学教授の梶間勲の隣りにが引っ越してきた。老人介護に疲れた元裁判官の妻。気の利いた贈り物。老人介護の手伝い・・・・どんどん梶間家の輪の中に入っていくたびに家族に火の粉が降りかかる。

元被告人の自白は?元裁判官の無罪判決は?武内真伍は殺人鬼だったのか?

プロットは完全にサイコ・ミステリーの様相を呈している。最後までこのプロットを引っ張りきれたのか?

引っ張りきれたならサイコ・ミステリーの逆襲だ!

2003/01

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死ぬほどいい女 [book] [ジム・トンプスン]

sample48.JPGジム・トンプスン/扶桑社/お薦め度 ★★★★☆ 

はまってしまいます!

このテンポ、この語り口、この展開・・・なんともいえない心地よさ?さすがジム・トンプスン・・・

どうしよもない訪問販売員、フランク・ディロン。月賦の取り立てでなんとか食いつないでいる始末。とある訪問先で、女に出会う。彼女の名前はモナ。伯母に売春まがいのことをやらされている女。その体は焼けた鉄棒でつけられたようなみみず腫れがあった。

モナはなんてかわいい子なのだろうと思い、自分は古女房・ジョイスのような性悪女ではなく、なぜモナと結婚しなかったのか!?

家に帰り、上着と帽子を脱いだ。何ひとつまともじゃない。どっちを見ても、散らかり放題でごみがたまっている。これまでにないみごとな左フックでジョイスはバスタブにはまりこんだ。スーツケースを車に積み、町を出た。二、三時間つぶし、家に戻った。女房はいなくなっていた。寝室の窓はいっぱいに開けられ、雨がベッドを水びたしにしていた。おれの服は?おれにはもう服はなかった。

モナはばあさんがどこに金を隠しているか知っていた。そこでおれを留置場から出すのに必要な額と、今ここに持ってきた分の金をくすねた。さっきまで重窃盗容疑で勾留されていた、このおれとふたりで逃げて、末永く幸せに暮らせるというわけだ。

きみはなにもしなくていい。ただ、おれが持っていけるように金の用意をしておいて、おれが出て行ったあとで警察を呼ぶだけでいい。

物語はトンプスン的に、粗暴、無計画、行き当たりばったりに進められ、急降下するように破滅の道を落ちてゆく。

この安定を失って行く過程のテンポ、語り口、物語にはまってしまうひとりの自分が存在する。いらいらすような心地よさ・・・

原題は”a hell of a woman"直訳すると”すげえ女”、”ものすごい女”、だれが死ぬほどいい女なのか!?

2002/05

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白銀を踏む荒らせ [book] [雫井脩介]

sample43.JPG雫井脩介/幻冬舎/お薦め度 ★★★☆ 

スポーツミステリーはむずかしい!?

日本のアルペン界にすい星のごとくあらわれた天才、石野ケビン、石野マーク。父は黒人で、アメリカの軍人。母は日本人のハーフの兄弟。

ワールドカップの表彰台を狙えるところまできていた矢先、兄・ケビンがダウンヒル(滑降)の競技中、転倒、帰らぬ人となる。そのショックから立ち直ることの出来ない弟・マークのメンタルトレーニングを依頼される、元柔道チャンピオン・望月篠子。

全日本の遠征に同行しながらメンタルトレーニングを続ける篠子が何者かに襲われることから事件は始まる。

世界スキー連盟の会長人事、白人至上主義組織<パル>、サポートチーム・・・アルペンスキー界の底知れぬ闇に挑む篠子とその友人・深紅。

劇画的といったのは、アルペン競技そのものが劇画素材であり、主人公は柔道の元チャンピオン、友人の深紅は剣道の有段者・・・「芸は身を助く」じゅないが、柔道、剣道の技で間一髪の危機を逃れたり活劇要素満載!?

たしかにスポーツミステリーという新境地なのだろうがあまりにも陳腐で劇画的過ぎ(ちょっと言い過ぎかな!?でも期待が大きかっただけに・・・)、「虚貌」の雫井脩介とは思えない。「少年××」が版権を買えばいいのかも。

2002/04

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憂いなき街 [book] [佐々木譲]

sample1.jpg佐々木譲/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★

道警シリーズ第七弾

機動捜査隊の津久井巡査部長は宝石店強盗犯が故買屋と接触するという情報をもとに、ホテルのラウンジで待機していた。ラウンジではジャズっぽいアレンジでピアノが奏でられていた・・・

ラウンジの案内ボードには、ピアノ、安西奈津子、と。ジャズ好きの津久井はその名を知っていた。ジャズ・ピアニスト、何年か前にCDも出していたはず。

被疑者確保の前に演奏の邪魔にならないように安西に一礼して現場を動いた津久井。

このシリーズは佐伯警部補、小島百合巡査部長、本書の津久井巡査部長がメインキャスト。今回はいつもと違った、津久井の恋愛物語!?

そんなふたりが「ブラックバード」で再会、意気投合する。奈津子の宿泊するホテルで一夜を共にするのだが、奈津子の腕に張られた救急絆創膏、情事の余韻が霧散する。奈津子はもう使っていない、四年前に止めた、捕まって執行猶予がついた、と・・・

津久井は顔をそむけて部屋のドアへと向かった。

中島公園にある池で女性の死体が発見される。持ち物から被害者は判明、覚せい剤所持、執行猶予判決を受けていた。しかも奈津子が参加するジャズ・フェスティバルのコンボ・リーダーの追っかけ!?

一夜にしてひび割れた関係になった津久井と奈津子だったが、捜査線上に奈津子の名前があがるに至り、津久井はどういう行動をとるのか?

大人の恋愛事情を絡めた異色の本書、佐伯と小島の関係も半歩前進!?


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