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陰陽師 付喪神ノ巻 [book] [お気に入り作家(国内)]

sample119.JPG夢枕獏/文藝春秋/お薦め度 ★★★★

魅惑の伝奇ロマン・シリーズ第三弾

ここであらためて書評を書くこともないと思います。心地よい連作短編集、著者の筆力に敬服。

本書には七篇収められています。その内の二篇で「呪」についての件があります。清明と博雅の問答がおもしろいのでここに紹介します。

「おまえが、あの桜の花びらが落つるのを見て、美しいと想ったり、心を動かされたりしたら、それはおまえの心の中に、美という呪が生じたということなのだ」
「むむう」
「だから、博雅、仏の教えに言う空というのは、まさにこのことなのだ」
「なんだって?」
「仏の教えによればだな、この世に在るものすべては、その本然に空なるものを持っているらしい」
「色即是空とういうあれか」
「あるものがそこに在るということは、そのものと、それを眺める人の心があって初めて生ずることなのだよ」
「―――――」
「桜がそこに咲いているだけでは、だめなのだよ。それを源博雅が見て、はじめて美というものが生ずるのさ。しかし、源博雅がそこにいるだけではだめなのだ。桜があり、源博雅という人間はいて、その博雅が桜を見て心を動かされた時、はじめてそこに美というものがうまれてくるのだ」
「―――――」

まだまだ続きます。

2000/11

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