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繋がれた明日 [book] [お気に入り作家(国内)]

sample19.jpg真保裕一/朝日新聞社/お薦め度 ★★★★☆ 

「主文。―被告人を短期五年以上長期七年以下の懲役に処する」

中西隆太の裁判は終わった。人一人が死んだ。ナイフを握った男を見る目は冷ややかだった。それから六年と一ヶ月、「中西隆太二十六歳、仮出獄を許可します。ご苦労様です」。保護司が礼を返した。「さあ、行こうか。お母さんも乗って」

保護司に連れられ就職先の黛工務店へ挨拶、その足で不動産やへ向かった。家賃を五万円以内に納められれば、何とか一人暮らしはできそうだった。

「十一ヶ月なんて、あっというまだ。でも、この十一ヶ月が、君の将来の大きな分かれ目になると言っていい。脅すとつもりじゃないが、最初の一歩が肝心だ。足を踏み出す方向を間違えたら、坂を転がるのは簡単だ」

翌朝は六時半に起き出した。七時に起きれば、仕事へ出るには間に合った。だが、刑務所と同じスケジュールをなぞりたくないため、少し早めに布団を出た。

事件はある朝起きる。この男は六年前に殺人を犯しています。懲役七年の判決を受け、この八月末に仮釈放で刑務所から出てきたものの、まだ受刑者の身です。皆さん、充分ご注意を・・・ワープロで書かれた文字の下には、新聞を複写したらしい記事が出ていた。

いったい誰が何の目的で?

ひとりで犯人探しに奔走する隆太。そこには自ずと仮釈放という限界が存在する。中傷ビラでさらに追い討ちをかけられる家族。かつての悪友・・・

ミステリーというかたちはとっているが、文学的な匂いのする作品。なんとなく朝日新聞社的!?


2003/05

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