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愚者の階梯 [book] [松井今朝子]

sample1.jpg松井今朝子/集英社/お薦め度 ★★★☆

時代ミステリー

昭和十年、翌年ニ・ニ六事件勃発、木挽座に満州国溥儀皇帝陛下をお迎え、勧進帳を演目に据えた。そのセリフが<不敬>にあたると亀鶴興行を糾弾する国士があらわれ、対応は専務の川端が窓口となった。

その後も同様の糾弾が続き、木挽座で川端が縊死?する事件が起こる。事件はすんなり片がついたように見えたが・・・川端から相談を受けた手前、桜木治郎、大学講師、は責任の一端を感じつつ、捜査に協力することに・・・

警察はなかなか自殺で事件を処理することなく継続捜査を続ける。そうこうするうち、木挽座の大道具方を束ねる棟梁が殺され、事件の混迷度を増すばかり。二つの事件は関連があるのか?

作者十八番の歌舞伎と時代に指示されつつあるキネマを対比させながら物語をは進む。

急速に右傾化する日本を作者は、「いつの間にかこの国には深い闇が垂れ込めてきているようだ。やがて真の闇が訪れ、だれも身動きできなくなるような気配が漠然と感じられる。まだ仄明かりが少しでもあるうちに、動いたほうがいいのはだれしもわかっているのだ。にもかかわらず、ひたひたを迫り来る闇の恐怖が人を竦ませ、速やかな動きを奪ってしまう」と綴る。

「愚者の階梯」とは思い切った、大胆な表題だ!?「壺中の回廊」、「芙蓉の干城」に続くシリーズ完結編。


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