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赤い指 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/講談社/お薦め度★★★★★

直木賞受賞後第一作

いままで東野圭吾の作品を読んで、”巧い”と思ったことはなかった。本書は”巧い”、”巧すぎる”。

ふたつの家族の物語。ひとつの家族は、少女を殺したバカ息子、中学生、を庇おうとするバカ親。もうひとつの家族は、癌を宣告された父を見舞わない、父の後を継いで刑事になった、息子。

そんな刑事が、そんな親子を説き伏せることができるだろうか。

バカ親子によってくりひろげられる二日間の悪夢、孤独な愛情を示す病んだ父親。ふたつの家族の行くつく先は何処か?

表題の「赤い指」とは、事件の鍵を握る、痴呆症の母がお化粧ごっこでつけた口紅。母親が息子に送った最後のシグナル・・・

読了後、ふと思ったのですが、東野圭吾じゃなく、短編の名手、横山秀夫と言われてもわからない、東野圭吾らしくない”巧い”一冊。


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容疑者Xの献身 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/文藝春秋/お薦め度★★★★★

帝都大学理工学部、ガリレオこと湯川教授の事件簿なのだが、いつもと趣を異にするシリアスな内容。

高校の数学教師・石神の隣に住む親子、靖子と美里、復縁を迫る元夫をふたりで殺害してしまう。死体の処理をかってでる石神。なぜ?靖子は弁当屋の女将から聞いていた、石神が靖子のことを好きらしい、と。

「わたしを信用してください。私の論理的思考に任せてください」の言葉に従うことにするふたり。

同じ大学の同期、物理学と数学を専攻し将来を嘱望されたふたり、湯川と石神、20年間以上の歳月がいまここによみがえる。湯川と石神の頭脳合戦のはじまり。

石神と靖子の感情が織り成す綾と事件の顛末は、期待していただいていい。本年度ベスト10に入る傑作!?


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さまよう刃 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/朝日新聞社/お薦め度 ★★★★☆

少年法の下で、さまよう被害者家族、さまよう怒り、さまよう刃・・・

花火の夜、ゆかた姿で出て行ったひとり娘。数日後、強姦された上、荒川に捨てられ、無残な姿で発見される。

留守番電話に残された何者かのメッセージ、ふたりの少年の名前と住所、警察には知らせないでください、と。一軒のアパートへ向かう被害者の父親、無造作に置かれたビデオの中に凝視することの出来ない娘の痴態を発見する。しかもベッドの下にはゆかたも・・・

突然郵便受けが音をたてた。父親は台所にあった包丁を握り、少年のわき腹に深々と突き刺した。もうひとりの少年を探す、父親の逃亡劇が始まる。

マスコミは「遺族による復讐殺人」としてセンセーショナルにとりあげる。世論も警察内部も賛否が大きく分かれる・・・

今日的な問題を取上げた東野圭吾。巻末でひとりの警察官にこう言わせる、「・・・警察が守ろうとしているのは法律のほうだ。法律が傷つけられるのを防ぐために、必死になってかけずりまわっている。ではその法律が絶対に正しいのか。絶対に正しいものなら、なぜ頻繁に改正が行われる?法律は完璧じゃない。その完璧でないものを守るためなら、警察は何をしてもいいのか。人間の心を踏みにじってもいいのか・・・」。

東野圭吾らしくない問題の一冊!?


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幻夜 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/集英社/お薦め度 ★★★★☆

「白夜行」と本書。イエローとグリーンの違いはあるものの同じようなイメージの装丁。出版社の、それとも著者の意図なのだろうか。

それぞれの帯には、こう書かれている。
「白夜行」―1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。

本書―1995年、西宮。未曾有の大地震の朝、男と女は出会った。美しく冷徹なヒロインと、彼女の意のままに動く男。女の過去に疑念を持つ刑事。彼女は一体誰なのだ…。『週刊プレイボーイ』連載に加筆して単行本化。

「クライム・ノベル」。どうしようもなく、どんどん深みに嵌って行く、どんどん奈落の底へ落ちて行く、・・・そんな表現があてはまる両作品。読み比べてください。


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殺人の門 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/角川書店/お薦め度 ★★★★☆

残念ながら直木賞を獲得することはできなかったが、「秘密」、「白夜行」は、東野圭吾の存在を知らしめた作品だった。

その後、新しい方向性を模索していたようだが、なかなか前作を上回ることはできなかった。ここに来て、「手紙」といい、本書といい、何となく新・東野圭吾が見えてきたようだ。

世間から見れば歯科医の息子-お金持ち、ボンボン、大きな家-しかしその実像は家を出る母親、女にのめり込み財産を食いつぶす父親・・・

いつも大事なときに主人公の前にあらわれる、学友・倉持。デート、就職先、依願退職、仕事、結婚、離婚・・・あたかも倉持が仕組んだシナリオのように翻弄される私。

どうしても殺したい男がいる。

その男によって、私の人生はいつも狂わされてきた。あいつを殺したい。でも、私には人を殺すことがどうしてもできない。殺人者になるために、私に欠けているものはいったい何だろう?


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手紙 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/毎日新聞社/お薦め度 ★★★★☆

近い将来、直木賞を獲得するであろう、東野圭吾と真保裕一。その二人が時を同じく、毎日新聞社、朝日新聞社に連載していた作品が相次いで単行本化。

本書、「手紙」の主人公は犯罪人の弟。真保裕一、「繋がれた明日」の主人公は犯罪人。ここまで類似した作品になったのは、果たして偶然なのだろうか?読者のひとりとして、両者を比較してしまうのは私だけだろうか・・・

強盗殺人の罪で服役中の兄。兄の存在を消しながら生きてゆく弟。兄、剛志からの手紙を軸に、犯罪者の弟として生きて行くすべを模索し続ける弟、直貴。

昨今の風潮として、被害者の知る権利が叫ばれている。このことが東野圭吾、真保裕一をして、このような作品を書かせるきっかけになったのだろうか?真保裕一の場合はそうかもしれないが、東野圭吾の場合は否?「秘密」、「白夜行」の発展形かもしれない・・・あなたはどう思いますか?


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レイクサイド [book] [東野圭吾]

東野圭吾/実業之日本社/お薦め度 ★★★★☆

ベッドの横で愛人が倒れていた。ノースリーブのワンピースに見覚えがあった。「どうしてこんなことに・・・」。妻の美菜子がわたしの横に立った。わたしと同じように愛人を見下ろし、そして呟いた。「あたしが殺したのよ」

子供の進学合宿に集まった四組の家族。

「美菜子さんを殺人犯にしない方法は一つしかない。事件そのものをなかったことにするんです。具体的にいえば、あの死体を処分するんです。我々の手で」。「どうされますか。我々の気持ちは固まっているんですが」

夫は愛人の死体を湖の底へ沈めることに加わる。重りと一緒にビニールシートに包み、ロープを何周にも巻き付けボートに乗せた・・・

一方、美菜子はアリバイ工作のため愛人になりすまし、旅行バッグを提げ無事にチェックアウトを済ませた。旅行バッグは夫の手で愛人宅へ向う。旅行カバンをしまうため、クローゼットを開ける。夫がそこで見つけた何枚かの写真。そこに写っていたのは美菜子を含めたほとんど四家族の姿だった。

事件の真相は何処に?最後に待ち受けるドンデン返しとは・・・本格的推理小説の要素をすべて兼ね備えた一冊!

追伸:これが東野圭吾のテンポ?以前、どこかで感じたテンポでは?そんなことを考えながら読み進んでしまった。ひょっとすると、山口雅也のテンポだったのでは!?個人的な勘違いかな・・・


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超・殺人事件 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/新潮社/お薦め度 ★★★★☆

推理作家の苦悩する姿とそれを取り巻く業界をネタに、笑いと皮肉を盛り込んだ超ニヒリスティックな一冊。

東野圭吾といえば「秘密」に代表されるソフトタッチな作風を支持しているファンが多いはず。しかし、作家としてはその路線を維持することにフラストレーションを感じるのかもしれない。その反動でこのような短編を書き溜めてきたのではないだろうか。それは作家ばかりではなく、俳優にも言えることのようだ。古くはショーン・コネリーが「007」を、キアヌ・リーブスが「スピード2」を降りたことを思い出す。ひとつの形、色に染まることを容認しない、常に新しいカラーを出そうとする人間の本質が見えてくる。

その逆に決まりきった段取りを好む人たちもいる。その典型的な例が「水戸黄門」ではないだろうか。パターン化されたコマワリが気持ちよく感じる。その間を外すことなく数十年続いている。

最近のベストセラー「チーズはどこへ消えた」をついつい思い出してしまう。チーズを探しに行くネズミと消えたチーズがまたあらわれることを待つネズミ。ビジネスの世界では前者のネズミをよしとするが、日常生活では必ずしもそうではいはず。最近の例を挙げれば、小泉首相のいう痛みを伴う構造改革を大多数の人たちが支持しているのだろうか。わたしはそう思えない。総論賛成各論反対・・・横道にそれてしまったが、「秘密」も本書も東野圭吾。「秘密」ラインはハードカバーで、本書のようなラインは新書・文庫で出すか、あるいは出版社で分けていただけると幸いです。


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片想い [book] [東野圭吾]

東野圭吾/文藝春秋/お薦め度 ★★★☆☆

帝都大アメフト部のQBだった西脇は、年一回開催される例会の後、十年ぶりにかっての女子マネージャー・日浦に再会した。十年間の空白を埋める会話の中で、ある「秘密」が告白される。「オレは男だったんだ。ずっと前から、おたくらと会うより、もっと昔から」

日浦はずっと性同一性障害の悩みを抱えていたのだった。(性同一障害とは、身体的には男性だが「男性であること」に強い違和感を感じたり、逆に身体的に女性だが「女性」に違和感を感じる」こと)。もうひとつのある「秘密」も告白される。人を殺し、たぶん追われることになるだろうと・・・

日浦をかくまうことを主張したのはかっての同僚マネージャー、今は西脇の妻である、理沙子だった。事件解決に奔走する西脇、理沙子。それにかってのアメフト部同僚、性同一障害者がからみ、事件はおもわぬ方向へ展開する。本書のタイトル「片想い」が事件の本質を握る。

「秘密」、「白夜行」に続く長編ミステリー(何部作になるか分からないが・・・)。個人的には前作、前々作の方が気に入っているが・・・


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予知夢 [book] [東野圭吾]

東野圭吾/文藝春秋/お薦め度★★★★☆

帝都大学理工学部、ガリレオこと湯川教授の事件簿。五編で綴られている「予知夢」。各章とも題名が象徴的。

第一章 「夢想る―ゆめみる」、第二章 「霊視る―みえる」、第三章 「騒霊ぐ―さわぐ」、第四章 「絞殺る―しめる」、第五章 「予知る―しる」

第一章の「夢想る」では、深夜、十六歳の少女の部屋に男が侵入。母親に猟銃で撃たれれたが、辛うじて逃走。逃走中、事故を起こし捕まる。男は十七年前に少女と結ばれる夢見たという。「君が生まれる前から、僕たちが結ばれることは決まっていた」

ここでガリレオこと天才科学者湯川教授の登場とあいなる。どの章も湯川教授の推理に敬服!


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