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赤い霧 [book] [ポール・アルテ]

sample002.jpgポール・アルテ/早川書房/お薦め度 ★★★★☆

『「2005 本格ミステリ・ベスト10」(原書房)、三年連続No.1』

舞台は1887年の英国。日本は明治20年。<デイリー・テレグラフ>の記者・シドニーは10年前に起きた密室殺人事件を題材にした小説を書くという口実で故郷を訪れる。

10年前に起きた事件、「リチャード・モンスター殺し」、とは、娘・ローズの誕生日に手品を披露しようとカーテンで仕切った部屋の中でリチャードが刺殺された事件。部屋には子ども達もいたのだが・・・

古いジグソーパズルのワンピースづつをつなぎ合わせて行くなか、新たな殺人事件が起こる。新旧の殺人事件の行方やいかに!?

「第四の扉」同様、大仕掛けでない、現代的過ぎない、科学的でない・・・わたし好みのミステリー!

2005/01

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暴虎の牙 [book] [柚月裕子]

sample1.jpg柚月裕子/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★

「孤狼の血」シリーズ完結編

「孤狼の血」は昭和63年を舞台に、ガミさんこと大上章吾の呉原東署に日岡秀一が赴任するところから始まる。本書はそれを遡ること6年、昭和57年。ガミさんは広島北署捜査二課、暴力団係。

呉原でヤクザも恐れぬ愚連隊「呉寅会」を率いる沖虎彦、地元最大の暴力団、五十子会の賭場襲撃、覚せい剤強奪と圧倒的な暴力で勢力を拡大しつつあった。

ふたつの抗争、五十子会と呉寅会、の匂いを嗅ぎつけたガミさんは「暴虎」の沖を食い止めようと奔走する。

舞台は一転、平成16年、懲役18年をくらった沖が出所する。自分を大上に売った奴を探し出すことと広島でふたたび天下をとるため動き出す。

暴力団対策法の下、シノギもままならない「呉寅会」、焦燥感にかられ暴走を始める沖の前にガミさん、既に亡くなっていた、の一番弟子、日岡秀一、呉東署の刑事、があらわれる。

警察小説としては、ハードボイルドとしては、時代の変遷が小学校からつるんできた幼馴染ふたりと袂を分かつ、結末が寂しすぎるが、小説としての完成度は高い。


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ザ・ボーダー [book] [ドン・ウィンズロウ]

sample1.jpgドン・ウィンズロウ/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★☆

三部作完結編

メキシコの麻薬王アダン・バレーラの死は、戦国時代の様相を呈することになる。群雄割拠、血で血を洗う抗争が勃発する。

一方、ヘロイン流入の止まらないアメリカ、麻薬取締局局長のアート・ケラーがニューヨーク市警麻薬捜査課と連携、潜入捜査に着手していた。

メキシコから巨額のドラッグ・マネーがアメリカに流入、マネーロンダリングのためアメリカ買いに当てられることが判明、しかも次期大統領と義理の息子がそれに絡んでいると・・・

上巻は自作の相関図と首っ引きで読み進む、関係性がなかなか頭に入らないので苦戦。下巻は潜入捜査、組織の淘汰、最後の最後にケラーの陳述に、三部作、「犬の力」、「ザ・カルテル」、本書、のすべてが凝縮されている。ウィンズロウが語りたかったアメリカがここにある。ドナルド・トランプへの大いなる皮肉もこめて・・・

読了に七ヶ月?も要した超大作、改めて凄い作家だ!


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邪魔 [book] [奥田英朗]

sample174.JPG奥田英朗/講談社/お薦め度 ★★★★☆  

「最悪」に続くクライムノベル(犯罪小説)。

九野薫、刑事。妻と子供を交通事故で亡くす。不眠症、常に薬を携帯。同僚刑事の風紀違反を立件するため尾行中。

及川恭子、主婦。郊外に住宅を購入。ローン返済のため近くのスーパーでパートとして働く。子供二人。夫は住宅がある郊外の支店勤務、経理課長。

渡辺祐輔、高校生。ダチ二人は退学。四流大学に滑り込む予定。おやじ狩り、カツ上げは当たり前。

恭子の夫、茂則が第一発見者となった放火事件を中心に三者三様、茂則を含めれば四者四様の「一体全体何なんだ!」の犯罪が始める。

日常生活の犯罪とは言えない!?ささいなことが事件の発端となる。そのささいなことが増殖を続け、最後にはどうしようもないアリ地獄に陥っている自分に気づく。

前作「最悪」同様、小市民がどつぼにはまっていくのを見ると、小説とはいえ読むのがつらくなる、後味サイアクの「イヤミス」!?

言い換えると、奥田英朗の罠に見事にはまったということ!

2001/4


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死が招く [book] [ポール・アルテ]

sample57.jpgポール・アルテ/早川書房/お薦め度 ★★★★☆

ツイスト博士シリーズ

密使殺人。ミステリー作家が煮えたぎる鍋に顔を突っ込み死んでいた。おまけに銃を握り締めて・・・並べられた料理は温かったのに、遺体は死後二十四時間を経過していた。

それもわざと死体を発見させるため、娘のフィアンセでありロンドン警視庁刑事と記者が呼ばれ、作家が構想中の小説と同じ設定で殺されるいう手の込んだ趣向がこらされていた。

本格的推理小説、古き良き時代の推理小説・・・とにかく最後まで犯人が誰なのかヤキモキさせてくれる小説だ!

大仕掛けでない、現代的過ぎない、科学的でない・・・そんなところがわたし的には気に入っている。まさにポケット・ミステリー。

2003/8


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修道女の薔薇 [book] [キャロル・オコンネル]

sample1.jpgキャロル・オコンネル/東京創元社/お薦め度 ★★★★

マロリー・シリーズ第12弾

マロリーのもとへひとりの修道女を捜してほしいとの訴えが・・・修道女は数日後、市長官邸の正面階段下に置かれた四死体の中から見つかる。

時を同じく、修道女の甥と思われる盲目の少年が誘拐され、ある男のもとに囚われていた。

囚われの身の少年ジョーナは最愛の叔母アンジーの声を聴き、時にはアドバイスをもらい、監禁生活を行きのびようとする。不思議な鈴の音、漂う薔薇の香り・・・アンジーを彷彿させるそれらのものがジョーナを勇気づけ、犯人を恐れさせる。

マロリーらはアンジーとジョーナの連続誘拐殺人事件の捜査過程で、アンジーの様々な貌が明らかになり、その存在感は益々大きくなる。

死者が大きな力を持ち、生者を支える。オコンネルらしいプロット。それに強欲なエゴが作り出す冷徹な犯罪が合わさったマロリー・シリーズ最新刊。

いつにも増してなかなか頁が進まない一冊!


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甦る男 [book] [イアン・ランキン]

sample4.jpgイアン・ランキン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ 

MWA賞受賞作

ジョン・リーバス警部シリーズ

桐野夏生「OUT」がノミネートされ話題を呼んだMWA賞、結果は本書が受賞。

勤務態度が悪く再教育をうけるためタリアラン(採用されたばかりの警官が送り込まれる場所)へ送り込まれたジョン・リーバス警部。五人のお仲間と一緒にお勉強に励むことになる。そこでの教材は六年前の未解決事件、リーバスがかつて関わっていた・・・

一方、リーバースの追っていた事件、美術商殺し、を引き継いだのは部長刑事に昇進したシボーン・クラーク。いつしか新旧の事件が交錯することになる。その裏にはリーバスがタリアランへ送り込まれた本来の理由が絡んでいた。

いかにもスコットランド的な匂いを発散する、まさに「甦る男」、ジョン・リーバス警部。たまらないシリーズ!

2004/11

タグ:MWA賞
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オペラ座の怪人 [book] [~'23海外編]

sample10.JPGガストン・ルルー/角川書店/お薦め度 ★★★★

十九世紀、パリ。オペラ座の地下に潜み、心を閉ざしたまま闇の世界を支配する怪人。男はその醜い容姿ゆえに、それまで愛というものを知らなかった。オペラ座の歌姫に生涯ただ一度だけの恋をするまでは。だが、ある晩、あの運命の事件は起こり、男は傷ついた心を抱え、忽然と闇へ消えた。その行方は杳として知れなかった。

ガストン・ルルーは、わが国では「黄色い部屋の謎」の作者として知られている。「黄色い部屋の謎」は;密室殺人;をあつかった古典ミステリーであり、フランス推理小説の傑作でもある。「黄色い部屋の謎」の三年後、1910年に「オペラ座の怪人」は刊行された。

結論から言えば、「ホラー小説」にあらず、「恋愛小説」である。1910年という時代が「ホラー」の冠を与え、2000年という時代は「恋愛小説」の冠を与えた。いったん断筆宣言をしたフレデリック・フォーサイスが完結編を書こうとしたのは、「オペラ座の怪人」が恋愛小説であったからに他ならない。

ルルーの「オペラ座の怪人」に続く
フォーサイスの「マンハッタンの怪人」、ぜひ、読み継いでほしい。

2000/03


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