SSブログ
横山秀夫 ブログトップ
- | 次の10件

半落ち [book] [横山秀夫]

横山秀夫/講談社/お薦め度 ★★★★☆

梶聡一郎。四十九歳。教官。生真面目。息子の死。妻の病苦。扼殺。二日間の空白。自首・・・妻を殺害後、梶聡一郎はなぜ死を選ばなかったのか。

「奥さんを殺した後、あなたが自首するまでに丸二日間ありました。その間、あなたはどこで何をしていたのですか」
梶の唇は閉じられたままだった。梶聡一郎は「半落ち」---。

指導官、検事、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官。六人がそれぞれの立場から梶聡一郎の空白を埋めるべく物語りは進行する。

「人生五十年」と書かれた書。新宿歌舞伎町。ふたつのキイワードが行き着く先は?

最後の結末はしっかり泣かせてくれる。梶の生真面目な人生を映すように・・・警察小説に新風を吹く込む著者。これからも期待したいひとりだ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

動機 [book] [横山秀夫]

横山秀夫/文藝春秋/お薦め度★★★★★

ややもすると短篇の評価は低いようであるが、作家にとって短篇の方が難しいと聞く・・・本書には四篇の作品が収められている。その中のひとつ「動機」。

U署で三十冊の警察手帳が盗まれた。この一括保管を起案したのは県警本部警務課企画調査官、警視、貝瀬正幸。手帳の紛失を根絶するための方策が、かってない大量盗難事件を招き寄せてしまった。

内部犯行説に刑事部及び警備課が内偵を開始。貝瀬に与えられて時間は二日間。巡査時代、貝瀬もこのU署で二年間世話になっていた。

手帳の保管責任者は、U署警務課主任、大和田徹。巡査部長。五十九歳。「軍曹」、「曹長」とあだ名されるJ県警きっての堅物だ。

退官が秒読みとなった警察官の内面の「揺らぎ」を貝瀬は嫌というほど見てきた。疑ったわけではないが、「軍曹」の退官はやはり気になる。

妻とのなにげない会話。子供が床にこぼした絵の具をごまかすために、バケツの水をぶちまけた。その構図だった。一冊の手帳紛失を隠蔽するために、二十九冊の手帳を盗んだ・・・

午後十一時、貝瀬は大和田家を訪ねた。「手帳を盗んだ犯人がわかりました」、「犯人は名乗りませんでした。しかし、動機は言いました。主任が憎かったのだそうです。手帳を盗めば保管責任者の主任が困る。だからやったのだと言っていました」
「しかし、怖くなった。手帳を返したい。ただし、主任の手帳は破り捨てた。返せるのは二十九冊だと言いました」
見送りに出た大和田は、一つ息をつき、感慨深そうに言った、「父上も立派な方でしたが、あなたも負けずに立派な警察官になられましたな」

翌日、警察手帳は発見された。二十九冊ではなく二十八冊・・・ないのは大和田主任と若い巡査のだった。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

臨場 [book] [横山秀夫]

横山秀夫/幻冬舎/お薦め度 ★★★★☆

臨場:その場に出ること。その場に臨むこと。

倉石義男。五十二歳。『終身検視官』の異名をもつ捜査一課調査官である。体の線は槍のように細い。巡査を拝命以来、鑑識畑一筋。その眼力の鋭さは伝説化しているし、鑑識の総決算とでも言うべき死体の目利きにかけても歴代検視官の中で図抜けている。

しこりのように凝り固まった職人気質とやくざな物言いがたたり、組織の大外を歩いた時期もあったが、それも長い人生から見ればいっときのことで、警視に昇任して丸七年、初動捜査の要である検視官ポストを他に譲らない。

妥協を許さない検視官の目、組織を組織とも思わない物言い、検視官の職務と垣間見る個人の情・・・それらが縦横に絡み合う警察小説。

「検視」とは、検察官が、変死体または変死の疑いのある死体の状況を調べて行う処分。犯罪によるものかどうかを調べるのが主目的。一方「検屍(死)」は、<検察官が行う「検視」とは別>監察医などが、変死の疑いも考えられる死体に対して行う外表検査。その結果により、行政解剖・司法解剖が行われる。 倉石は検察官、ケイ・スカーペッタは監察医。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
- | 次の10件 横山秀夫 ブログトップ