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伊賀の残光 [book] [青山文平]

sample1.jpg青山文平/新潮社/お薦め度 ★★★★

「流水浮木ー最後の太刀ー」改題

「伊賀の残光」の方がはるかにいい表題!

主人公、山岡晋平は鉄砲百人組の老武士、門番のお役目はひと月に四、五回ほど、その他はサツキの栽培によって生計を補っている。

門番のお役目ではあるが時代の変遷とともに、その役割は形ばかりのものとなっていた。山岡も伊賀衆ではあるが伊賀を知らない世代であった。

事件は同心の友が殺されることから始まる。下手人はすぐに捕まるが移送の途中、誰も気づかない鮮やかに手口で刺殺される。

事件の謎を探るなか、伊賀衆の伊賀に対する思い、伊賀衆ならではの隠密御用を知ることになる。しかも山岡の友、ふたりはその隠密御用に加担していた・・・

また、友のひとりが隠密御用の最中殺されるに至り、その御用の始末をつけることを決意する山岡・・・

時間の経過、戦のない世界、財政ひっ迫、とともに武士の生きざまも変化せざるを得ない時代。そんな時代をひょうひょうと生き抜く山岡の生きざまが清々しい。


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約定 [book] [青山文平]

sample1.jpg青山文平/新潮社/お薦め度 ★★★★

六編収録の短編集

六編のなかに昨年、「このミス・・・」で国内編4位となった「半席」の一編が収録されている。

表題の「約定」、果たし合いの約定を指す。21年前、父親、望月三郎が武士の一分が立たないということで腹をめした。その息子、清心郎も果たし合いの装束で父と同じように腹をめす。

望月三郎の死は名族、望月氏の末裔であることを疑われたことで武士の気骨を示すためのものだった。息子、清志郎はなぜ果たし合いをすぐに申し込まなかったのか?清志郎が果たし合いを申し込んだのは父の死から十八年後・・・

果たし合いを申し込まれた野添信一郎と清志郎は竹馬の友、果たし合いの期日を三年前に約定した。しかし、清心郎の前に真一郎は現れなかった。なぜ?

お互いに「慮る」ことから起こった事件!?「かけおちる」と同様に慮るがキーワード。


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かけおちる [book] [青山文平]

sample1.jpg青山文平/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆

「欠け落ちる」

その一、二十二年前、かけおちた妻を追った阿部重秀、今は藩の執政、いわゆる「妻仇討ち」。

その二、当時、四歳の娘が母親と同じになってかけおちた。娘故、連れ戻される。

その三、娘に婿殿を迎える。その婿殿は江戸詰め。娘が再び阿部重秀の知恵袋、森田啓吾とかけおちる。

その四、阿部重秀と「妻仇討ち」にあったはずの妻がかけおちる。

妻と娘の女心の真実はいかに?重秀の変心の真実はいかに?

キーワードは「慮る」(おもんぱかる)。妻が夫、重秀の何を慮ったのか、娘が婿殿の何を慮ったのか、最後に夫、重秀が妻の何を慮ったのか・・・

読了感爽やかな青山ワールドでした。


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半席 [book] [青山文平]

sample1.jpg青山文平/新潮社/お薦め度 ★★★★☆

2016年「このミス・・・」国内編第4位

当人のみならず、その子も旗本と認められる永々御目見以上の家になるには、少なくとも二つの御役目に就く必要がある。これを果たせなければ、その家は一代御目見の半席となる。

片岡直人は無役の小普請組から這い上がり徒目付に抜擢されたが、もうひとつの御役目、勘定方の役を得なければ旗本になれない。まだ見ぬ子のためにも半席から抜け出るのが直人の目標である。

そんな直人に上司の組頭、内藤雅之から表向きの御用と全く違う「頼まれ御用」を仰せつかる。直人がそこで求められたのは、なぜその事件が起きねばならなかったのか解き明かすことだった。

釣りの最中、筏から突然飛び込んだ老人、真桑瓜を出された老人がいきなり切りつけた・・・「爺殺し」?の直人と言われるように老人にまつわる話が六編。

直人の心の変化が手にとるようにわかるような構成。巻末の「役替え」がひときわ心に響くのも構成の妙!

初めて手にする作家だが、さすが直木賞作家と唸ってしまった。どの短編も結末の切れ味が半端ない!何冊か読んでみたい作家!


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