永遠に去りぬ [book] [ロバート・ゴダード]
ロバート・ゴダード/東京創元社/お薦め度★★★★★
昨年は「一瞬の光のなかで」、その前は「惜別の賦」、トマス・H・クック同様、ベスト10常連ゴダードの新刊。著作順に、本書、「惜別・・・」、「一瞬・・・」。
始まりは、三年前ほどに遡る。人生の岐路を迎えた主人公・ロビンは将来を決めるべく山歩きの旅に出た。その初日。夏のさかりの黄金色の日暮れ時に、ひとりの女性と出遭った。四十代なかば、やわらかな声の、美しい人だった。暫し言葉を交わした、見知らぬ旅人。それ以外の存在であるはずがなかった。だが、旅を終えたロビンは、思わぬ報に接する。あのひとが後刻、無惨な二重殺人の犠牲者になったというのだ・・・!
まもなく容疑者は逮捕される。彼女を殺した男は有罪判決を受けて刑務所に送られたいま、彼女は安らかにねむれるだろう。ところが、彼女と私の人生がつかのま交差したところといまの私との隔たりが大きくなるにつれて、あの出逢いの記憶は、淡くなるどころか、かえって鮮明になった。彼女の残した言葉、「あなたとわたし、ほんとうになにかを変えられると思う?」。この疑問の答えは未だ見つからない。
ほんの二言三言交わしただけの女性のために、ロビンが事件の真っ只中に入り込んでいく。
ゴダードのしかけた謎は、
空いっぱいに星が明々とちりばめられ、高く昇った弓張月が、そのなかでひときわ白かった。「はじめて此処へ来たりしときは望みあり」私は声をひそめて暗誦した。「なんの望みか知らず」そしていま、それが判ったかと思えたときに・・・「我は永遠に去りぬ。何地へと、永久の」
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