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大川わたり [book] [山本一力]

山本一力/祥伝社/お薦め度 ★★★★

大工の仲間内でも銀次の名は通っている。棟梁をもたない流しの大工になっても仕事がきれることがなかった。月に二十日働けば二両が稼げた。

銀次はこれまでにふたりのおんなと恋仲になったが、立て続けにしくじった。それから人を好きになるという気を捨てた。

育ててくれた棟梁を失ったこころに大きな穴があいた銀次は、博打にはまった。稼ぎのほとんどを賭場に沈めた揚句、わずか半年で二十両もの借りを作った。

達磨の猪之介から「二十両をけえし終わるまでは、大川は渡るんじゃねえ・・・おまえが大川のこっちに来てもいいのは、ゼニをけえしに来るときだ。そうじゃなしに一歩でも渡ったら、その場で始末する」と言い放たれる。

昨年初秋、銀次が段取りを仕切った、堀正之介道場に足が向いていた。子細を聞いた正之介は銀次を道場に住まわせる。ただし、三つの取り決めをもって・・・ひとつは、言葉遣いを改めること。お店者の話し方に変える。ふたつめは道場の修繕。最後は夕げ前に木刀の素振りを五百回いたすこと。

こうして八両の貯えが残るまでになったころ、正之介から呉服屋の手代になることを勧められ、迷ったあげく銀次は手代になることにかける。

めきめき頭角をあらわす銀次の前に大きな罠が仕掛けられる。嫉みを持つもの、想いを寄せるものが絡みながら・・・

銀次を取り巻く人間関係の中で、悪役とおぼしき博徒、猪之介のかかわりが嬉しい。前作「あかね空」の傳蔵同様に・・・表紙といい内容といい一力(いちりき)時代劇、二部作の出来上がりです。


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