野蛮なやつら [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/角川書店/お薦め度 ★★★★
最新刊
題材はこのところ著者が取り上げている麻薬の話、「犬の力」など、なのだが、文体が挑戦的というか、斬新というか、自由奔放というか、とにかく読んでいただきた。
物語は文体に反して?至ってシンプル。極上のマリファナの栽培と密売を手掛けるベンとチョン、平和主義者のベン、優秀な元兵士のチョン。ふたりと友好的な三角関係にあるオフィーリアこと「O」。メキシコのバハ・カルテルから傘下入りの申し出を断ったことから、Oが拉致される。彼女を助け出すためふたりは危険な賭けに出る。
映像的な文章。290の章で構成され、それらが次々に変わっていく。時には脚本のト書きのように、時には詩のように・・・
ドン・ウィンズロウ的な「ボニー&クライド」かな!?一気読み間違いなしの一冊。
サトリ [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/早川書房/お薦め度 ★★★★
最新刊
日本→中国→ヴェトナムを巡る冒険活劇。それも発刊、即、翻訳。
ドン・ウィンズロウと言えばニール・ケアリー・シリーズ。最近では「犬の力」、「フランキー・マシーンの冬」など前者とは趣を異にする作品が好評を博している。本書は久々にニール・ケアリー・シリーズを彷彿させる活劇仕立ての一冊。
「シブミ」/トレヴェニアン(早川書房)の前日譚とは恐れ入谷の鬼子母神。よほど著者がほれ込んだ原作なのだろう。近々手にしてみたい。
とにかくノンストップで愉しめる物語だが、上下巻にする必要はなかったはず。出版社の都合を読者に押し付けてはいけない。
夜明けのパトロール [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/角川書店/お薦め度 ★★★★
ウィンズロウの新シリーズ第一弾
職業・サーファー、副業・探偵、その名はブーン・ダニエルズ。
20年ぶりの大波の到来に世界中のサーファーが興奮するなか、ブーンに仕事の依頼、証人として出廷するはずの女、行方知らず、を探す依頼が舞い込む。簡単に解決するはずだった捜索が困難を極めることに。
ブーンを取り囲む「ドーン・パトロール」の面々、美人弁護士補、不動産王・ブーンの会計士・・・これらのメンバーをつなぐブーンの人間性、これがカッコいいんだな!
主演はケビン・コスナーで決まり!?
新シリーズ第一弾だけあってサーフィンにまつわる記述が多い、サーファーにとってはたまらない一冊。さすがウィンズロウ・・・
犬の力 [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/角川書店/お薦め度 ★★★★★
30年にわたる麻薬戦争
ドン・ウィンズロウと言えば、東京創元社から発行されているニール・ケアリー・シリーズ。ノン・シリーズは角川書店から発行と、うまく区分けされているようだ。本書は言うまでもなくノン・シリーズ。
麻薬カルテルのバレーラ兄弟、アイルランドの殺し屋カラン、DEA南西国境特務室長・ケラー、バレーラ兄の愛人・ヘイデン、CIAの工作員・スカーチ・・・多種多彩な顔ぶれを揃え、30年にも及ぶ麻薬戦争を描く。
ある時はカルテルの縄張り争い、ある時はメキシコ、コロンビア政府の腐敗、ある時はカルテル潰し・・・1000頁に及ぶ大作にもかかわらず、一気読みさせてくれる。これが、あのドン・ウィンズロウかと思わせながら。
本年度、一、二位を争う一冊になりそうだ!?
ウォータースライドをのぼれ [book] [ドン・ウィンズロウ]
ドン・ウィンズロウ/東京創元社/お薦め度★★★★
「ストリート・キッズ」、「仏陀の鏡への道」、「高く孤独な道を行け」に続くシリーズ第四弾!
ストリート・キッズから成長を続けるニール・ケアリー、今回も養父にして朋友会の雇われ探偵グレアムからの依頼は「じつに、簡単な仕事でな」で始まった。スキャンダラスなポーリーゲート事件―人気TV番組ホストのレイプ疑惑事件―被害女性ポリーを裁判できちんと喋れるように英会話の特訓をすることだった。
「マイ・フェア・レディ」の言語学者ヘンリー・ヒギンズ役をニールが演じるはめになるのだが、早々簡単にいくはずもない!恋人カレンをも巻き込んだてん末や如何に!?
シリーズの中ではいちばんコミカルな一冊、なんで「ウォータースライドをのぼれ」だったのかというとラストシーンの活劇場面が「A Long Walk Up the Water Slide」だけだったのだが・・・
相変わらず愉しめるコミカル・ミステリー、ぜひ手にしてほしいシリーズ!