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心の砕ける音 [book] [トマス・H・クック]

トマス・H・クック/文藝春秋/お薦め度★★★★

父親似の兄・キャル。母親似の弟・ビリー。兄は検察官に、弟は新聞社を継ぐ。現実主義者の兄、ロマンチストの弟。そんな二人の前に美しいが、寡黙で、陰のあるドーラがあらわれる。

やがて、ドーラはビリーの新聞社で働くようになる。たちまちビリーはドーラにこころ奪われて行く。一方、兄のキャルはそんな弟を心配し、ドーラの周辺を探りはじめる。

ドーラの呪われた過去、ある殺人事件の生き証人、ドーラと生き証人の背中にある無数の傷あと、ビリーの交通事故、新聞社の帳簿操作、ビリーとドーラ、キャルとドーラ・・・複雑に絡み合う何本もの糸。

突然、ドーラが街を去る。その後に残されたビリーの死体。ドーラの跡を追うキャル。ついにドーラの生まれ故郷までたどりつく。そこで待つクライマックスとは・・・

クックの小説は文庫本で400ページ前後。読者にとってはちょうどいいページ数。淡々とした語り口が我々を魅了する。この淡々としたというところがわたし的にはキーワードです。確かな語り口に信頼感が生まれます。クックの作品にハズレがないのはこういうことに起因するのではないでしょうか。

最近のページ数を競うがさつな小説とは一線を画す、クックの魅力たっぷりの一冊。手にとって損はありません。


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