魂萌え! [book] [桐野夏生]
桐野夏生/毎日新聞社/お薦め度 ★★★
まったく桐野らしくない本書!?帯には「若い人には、まだ想像できない世界」、と。たしかにそうだが、そんなことを桐野が言いたかったのだろうか・・・?
突然の夫の死。アメリカから帰国する長男夫婦・孫たち。コンビニで働く娘と同棲中の若者・・・あわただしさの中、葬儀はとりおこなわれる。定年後の葬儀の何とさびしいこと。
長男の帰国の目的は、アメリカでの生活をたたみ、日本で事業を起こすことだった。そのための事業資金確保は、母親・敏子との同居あるいは遺産の法定相続だった。そんな最中、夫の携帯が鳴る。発信もとは「伊藤」とある。女の声だった。夫の死を知らされていなかった・・・お線香をあげさせてほしい、と。敏子はそれを承諾する。
夫の秘密、息子と娘をめぐる遺産相続、敏子をとりまく女友達、夫の蕎麦うち仲間・・・専業主婦として暮らしてきた敏子の荒波への船出がはじまる。
巻末の台詞が本書を物語る。「・・・確かにあなたの経験って、小説みたいだもの」「そんなことはありません。どこにでもある話じゃないですか」
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