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玉蘭 [book] [桐野夏生]

桐野夏生/朝日新聞社/お薦め度 ★★★★★

玉蘭の花が枯れる時、幻の船に乗って失踪した男が現れる。愛を知るには73年の月日が必要だった。

地方出身者の有子は東京戦争、医者・行生との恋愛戦争にも敗れ、会社を辞め、上海へ留学する。不眠症に悩まされ続けていた有子に、若き日の大叔父が亡霊となってあらわれた。それは母から留学を諌めるために届いた「トラブル」と題した日記のせいだった。

大叔父はN汽船の機関長として上海に住み、戦後日本に戻り、昭和二十九年、上海に帰ると言って家を出たまま二度と帰らなかった。

戦時下の上海で大叔父はひとりの女を愛した。女の名前は浪子。大叔父と浪子、有子とそれを取り巻く留学生の男たち。二つの物語はオーバーラップする。

病魔と闘いながら生きてゆく浪子。自由奔放に男たちと関係を持つ有子。浪子の過去をなぞるように有子は・・・

現在と過去、過去と現在が入り混じりながら桐野の筆は進む。大叔父の亡霊と始めて出合った時に買った玉蘭。浪子の死を悼み添えられた玉蘭。

大叔父は最後に夢をみる。若い自分が暗い部屋でベッドに横たわった若い女と話しているものだった。女は不眠症で何かを悩んでいた。帰ろうとすると、その女が自分の手を握った。夢はそこで終わる。まだ掌に女の手の温もりが残っている気がした。女は登美子か(失踪後大叔父が愛した女)。いや、浪子か。どちらでもいい。叔父は微笑んで両の掌を擦り合わせた。

桐野が書く恋愛小説とはこういう形!?


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