魔王 [book] [伊坂幸太郎]
伊坂幸太郎/講談社/お薦め度★★★★
講談社のホームページに、「自分の読んだことのない小説が読みたい。そんな気持ちで書きました」、と。
何なんだろうか? 超能力と政治、こんな題材を一緒にして本にするなんて、何て才能! 結構おちゃらけかと思いきや、憲法九条なんかが出てきて、改憲だ、護憲だ、国民投票だと。カリスマ首相の名前が犬養!しっかり犬養毅を最後に登場させたりして・・・結構風刺も効いていて、何だか分からないけど、結局、伊坂ワールドにはまってしまった。そんな感じかな。
最後のページに記された、「・・・未来は晴朗なものなのか、荒廃なのか・・・でも俺は勝つよと誰に弁解するつもりなのかそう言った。そういえば、お兄さん、元気ですか?私は声に出さず、訊ねている。マンションの外で、いるはずのない鳥が鳴くのが聞こえた」
このフレーズがすべてをあらわしているのかな!? 宇宙人・伊坂幸太郎、面目躍如!
私もbookmanさんと同じく、伊坂ワールドにはまってしまった人間の一人です。
伊坂さんの「魔王」の紹介をされていますので、簡単なコメントをしたいと思います。
伊坂さんが書きたかったのは、恐らく、「考えろ考えろ」ということなのでしょうね。
「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば」「世界が変わる」という安藤の言葉。
そして、「私を信用するな。よく、考えろ。そして、選択しろ。」という犬養の言葉。
この2つの言葉は同質のものだと思いますね。
本当は、犬養が求めていたのは、安藤のような人間ではないかと思いますし、安藤にとっても、一番の大きな問題は、犬養そのものの存在ではなく、犬養の言葉に踊らされてしまう人々の方だと思います。
もちろん、人々をそのように簡単に躍らせてしまう犬養のパワーが問題でもあるのですが-------。
そして、犬養もまた、本人の能力は高いのでしょうが、背後のブレーンに操られているという薄気味悪さがあるんですね。
そこにシューベルトの「魔王」の歌詞が醸し出す雰囲気が、実によく効いていますね。
by お名前(必須) (2023-05-23 12:25)