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ドリームバスター [book] [宮部みゆき]

宮部みゆき/徳間書店/お薦め度 ★★★★☆

誰しも夢の中で、何かに追いかけられ、逃げようとして体が動かなかったことがあるはず。悪夢を退治し、救い出してくれるのは、16歳のシェンと師匠のマエストロ。彼らはD・B(ドリームバスター)と呼ばれる”賞金稼ぎ”

D・Bの世界では、”プロジェクト・ナイトメア”なる、人間の意識を肉体から切り離し、自在に保管したり移動したりする装置の実験が行われ、科学者グループは、これに成功した。科学者グループの最初の目的は、戦争や災害、犯罪などの体験によって、恐ろしく辛い記憶を抱え込むことになった人びとを救うことだった。

12年前のある日、この大がかりな実験装置”ビッグ・オールド・ワン”が暴走事故を起こす。研究所の敷地どころか、研究員たちが住み着いていた小さな町がまるまるひとつ、消失してしまった。そして、”穴”が形成された。時間軸までまっすぐ突き抜けた、文字通りの”抜け穴”が。

大災害の後、とんでもない事実が判明した。この実験には被験者が必要だった。それも生身の人間が。その被験者のために囚人を六十人選んだ。検証の結果、六十人のうち十人は死亡したことがわかったが、残りの五十人は意識だけの存在になって、”抜け穴”を通り、地球の世界に脱走したのだった。

十二年の間に半数は連れ戻されたが、残りの脱走犯は地球の人びとの、夢から夢を渡り歩き、肉体を乗っ取るため、か弱い固体を未だ探し回っている。

イラストといい、帯のアクションファンタジーの文字といい、宮部みゆきの新しい魅力!?そうかなとわたしは思う。プロットは面白いが、舞台装置が気にいらない。ミヤベには時代考証が必要な舞台が似合うと思う。最後のページに「to be continued」とある。あなたはどうしますか!?


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天狗風 [book] [宮部みゆき]

宮部みゆき/講談社/お薦め度 ★★★★★

お初の持つ超能力。怨霊といったオカルト的な要素。スタンダードな捕物帖。これらをミックスした異色長編作の第二弾。

主人公のお初。その相棒として算学の道場に通う右京之介。岡っ引き・兄の六蔵。一膳飯屋姉妹屋を切り盛りする義姉・およし。お初の特殊な才能を見抜いた奉行・根岸肥前守鎮衛・・・多彩な人物を配しながら物語は進む。

嫁入り前の娘が続けざまに神隠しに遭う。天狗さまの言い伝えのなかに、里の民をかどわかしてゆくという話がたくさんある。疾風が若い娘をさらってゆく様子が「天狗」のやり方とそっくりだったから。だからその疾風を「天狗風」が娘をさらっていくという。これが本書の表題でもある。

お初は神隠しの犯人がこの世のものではないことを透視する。観音様の姿を借りたもののけだと。

もののけと敵対する鉄、和尚の猫がお初に加勢する。右京之介、六蔵+鉄、和尚、二組の力を借り、お初は娘たちの行方を捜す。

それにしてもミヤベって巧い!長編を書こうというのではなく、丁寧に描写をした結果が長編になったというのが凄い。時代劇版ジェットコースター・ノベル!


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R.P.G. [book] [宮部みゆき]

宮部みゆき/集英社/お薦め度 ★★★★☆

ロール・プレーイング(Role-playing)
実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じさせて、問題の解決法を会得させる学習法。役割実演法。今回の題名はロール・プレーイング・ゲームの頭文字をとって、「R.P.G.」。

二つの異なる殺人事件から関連性を匂わせる証拠が、それもひとつではなく、複数発見される。調べが進むに連れ、二人の被害者、所田良介と今井直子がつながった、当時高校生だった直子がサプリメント食品のモニターとして所田と接触していた。

更に所田のパソコンは、彼がその機械を介して何をしていたのか、雄弁な履歴を残していた。所田は、ネット上に”家族”をもっていた。妻と娘を息子。彼を含めて四人家族。彼らは「お父さん」「お母さん」「カズミ」「ミノル」と呼び合い、頻繁にメールをやりとりし、チャットで会話している。また、彼らのつながりはネット上だけのものではなく、実際に、少なくとも一度は顔を合わせていた。

もうひとりの参加者を加えた取調室で行われるロール・プレーイング・ゲームとは?ここに事件解決の仮説が潜む。結末や如何に!?


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摸倣犯 [book] [宮部みゆき]

宮部みゆき/小学館/お薦め度 ★★★★★

原稿用紙3551枚。二段組、上下巻・1424ページにおよぶ超長編。週刊ポストの連載に三年。加筆改稿に二年。五年がかりの力作。

公園のゴミ箱から発見された女性の右腕。それは犯人からの戦線布告だった。「あの公園からは、もう何も見つからないはずだ、あそこには右腕しか捨てていない、古川鞠子のショルダーバッグは捨てたが、あの右腕は彼女のものではない。彼女たちは別の場所に埋めてある。それを警察に教えてやってくれ」

犯人の第一ターゲットは古川鞠子の祖父・義雄だった。ボイスチェンジャーを使った電話で散々翻弄された挙句、義雄のもとに送られてきたのは孫娘の腕時計だった。

更にエスカレートする犯人のターゲットは、容疑者としてリストアップされた「T」に向けられた。初めてテレビに生出演する「T」に対し、犯人は大胆にも番組中に電話をかけてきた。「僕はTさんとやらを、その衝立の陰から引っぱり出したいんだ」と。ハプニングは番組中に起きた。犯人とのやり取り中、「ここまでの放送は・・・」というスポンサー紹介が始まった。犯人からの電話はそこで切られしまった。

「さっきみたいな邪魔が入らないと約束してくれたら、話を続けてもいいよ」と電話はかかってきた。

そのやり取りを聞いていた刑事の武上には、コマーシャルに邪魔されたことで怒って電話を切った人物と、今ここでやり取りをしている人物が同一人物だとは思えなかった。犯人はふたり組か?

群馬県で起きた交通事故の第一報が連続女性殺人事件合同捜査本部に入ってきたのは、事故発生から二時間後のことだった。事故により死亡したふたりの若い男の身元は、事故後まもなく判明した。高井和明、栗橋浩美。この事故で発見されたのはふたり以外にトランク内の変死体という途方もない「異物」だった。

連続殺人犯はこのふたりなのか?

せき止められた事態が一度に動き始めた。「骨が出た」、「右手の部分だけがない。紙袋に入れらていたそうだ。栗橋浩美の部屋だよ」犯人はふたり組だった。彼らは死んだ。死んで捕らえられた。ここで第一部は終わる。

第一部は被害者の立場から、第二部は犯人の立場から克明に事件の経過を突合せる。第三部は事件解決の鍵を握る本タイトル「摸倣犯」の意味が明らかになる。

本年度、No.1間違いなし!


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あやし~怪~ [book] [宮部みゆき]

宮部みゆき/角川書店/お薦め度★★★★★

九つの怖い怖い噺が収められています。ミヤベ一流の怪奇短篇小説。その中の一篇「安達家の鬼」を紹介します。

わたしが笹屋に嫁いできたのは、三年前の春のことでした。そのころにはすでに、お義母さまはだいぶ身体が弱っておられて、一年のうちの半分ほどは、寝たり起きたりの暮らしをなすっていました。

お義母さまのお世話をし始めてひと月も経つと、愉快な話には大いに笑い、怖い目に遭ったり、のるかそるかの商いをしたりという話にはハラハラするわたしが、どうやらお追従ではなく、本気で楽しんでお付き合いしているのだとお義母さまはお察しになったのでしょう、ちょっと座敷の中を見回すような仕草をなさいました。それから、ご自分のすぐ隣に目をやって、誰もいないその畳の上にちょっと微笑み、「だっておまえには、何も見えないようだし、何もかんじられないようだもの」

ちょうどそのころ旦那様の富太郎のところに、一人の新しい商い仲間が出入りするようになっていました。名は佐次郎といいます。佐次郎は、自分たちで独自の工夫をこらした新しい墨は、古梅園の看板商品に負けず劣らずよく薫る。それを安く卸すから、笹屋で売り出してはくれないかという話を持ち込んできたのだ。

富太郎がわたしに、今日は佐次郎さんをおふくろに引き合わせるから、そのつもりでいてくれと言ってきました。

わたしは頃合いを見て障子を開けました。お義母さまはお客人のいる座敷の方を熱心に見つめられておられました。

何かの拍子に、わたしはお義母さまが身を乗り出すのに気づいて目を上げました。中庭越しに、佐次郎の顔が、見る見るうちに雪にも負けないほど真っ白になってゆくのが見て取れました。佐次郎の、あわてふためいた声が聞こえました。「おかしいなあ、目の迷いだろうか。確かに見たと思ったんだが・・・」

お義母さまに声をかけられて、わたしは振り返りました。「ああ、どうやら、あの男にはえらいものが見えたようだね。今度の商いの話はとりやめだよ」

お義母さまが打ち明け話しを始めるその前に、おまえはこの座敷のなかに何も匂わないか、何も聞こえないか、何も見えないか、きついお顔でお尋ねになりました。「そうかい、この離れの、この座敷のわたしのそばにはね、”鬼”が棲んでいるんだよ」

これから先は読んでいただくしかありませんね・・・


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ぼんくら [book] [宮部みゆき]

宮部みゆき/講談社/お薦め度★★★★★

直木賞受賞第一作!満を持しての・・一年半ぶりの新刊です。お得意の時代劇、連作短編集。七作品が収められていますが、「長い影」は350ページあまりの長編

深川北町、鉄瓶長屋が今回の舞台。
事件は八百富の太助が殺されたことから始まる。妹のお露があやしいとにらむ、今シリーズの主人公、同心・井筒平四郎。

お露をかばう煮売屋・お徳、差配人を務める久兵衛。疑いをはらしたのは久兵衛の出奔。

鉄瓶長屋から久兵衛、太助、お露、富平(お露の父親)がいなくなった。

差配人・久兵衛の後を受け継いだのは湊屋総衛門の遠縁にあたる、差配人にしては若すぎる、二十七歳の佐吉。

父親の博打がもとで、次に長屋を後にしたのは、お律。

そんな中、幸兵衛長屋から素性怪しき・おくめが宿替えをしてきた。

またまた、長屋を後にしたのは、壺信心の三家族。

新差配人の佐吉の一言、「俺、よくわからなくなってきた。湊屋の旦那は、俺なんか、最初っからあてになさってないんじゃないかな。だったら俺、ここでいったい何をやってるんだろう?なんで俺、ここにいるんだろう?」で、事件はクライマックスへ向かう。

ここから、井筒平四郎、養子候補の弓之助、隠密同心・黒豆、回向院の茂七の手下・政五郎、人間テレコ・おでこ、伝書烏・官九郎が入れ乱れ事件を解決していく。

江戸の人情話をこうも巧く描ける作家、宮部みゆきの真骨頂が如何なく発揮されている。きっと長いプレッシャーから開放されたのだろう。次回作はもっともっとブレイクすること請合い。


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